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新鉄道路線、しっかり議論し、決まったらきちんと作る 静岡県知事に読ませたい

 北陸新幹線の大阪延伸に伴う路線決定について民主主義的手続きを求める社説。この社説を一番読んでほしい人は静岡県知事の川勝氏だ。既に決定済みのリニア新幹線建設に一人で立ちはだかっている。ドン・キホーテみたいで「格好いい」と評価する人が若干いるようだが、そうした人を含めて、民主主義の基本を壊そうとしている。知事は中世の騎士ではない。民主主義の仕組みで選ばれたのであり、合法的に授権されたことのみに決定権を持つ。越権行為は許されない。専制体制におけるプーチンや習近平とは違うのだ。
 
 さて京都新聞の社説内容にも納得。京都盆地の地下には大量の水が蓄えられている。これはよく聞く話。京都の料理がおいしいのはこの地下水をくみ上げて使用するからと言われている。
 これを壊していいのかとの問題提起にどう答えるか。
 40メートルそこらの地下掘削では影響はないとの考えもある。専門家の声を聞くべきだろうが、専門家が正しいかどうかは掘って見なけれが分からない。分からないけれどやってみるか、それともわかるまで手をつけないか。
 決定打はない、だから関係国民の多数合意で方針を決定するのが民主主義。直接投票で決めあるか、選出した代議員に決定権を委ねるか。それも含めて合意を追及する。
 そして決まったら以後は文句を言わない。「俺一人でも反対してつぶしてやる」ことは許されない。後世から見たらその反対意見が正しかったということはあるかもしれないが、それは後知恵というものだ。
 川勝知事は天竜川の水量がどうとか言っているが、路線決定前に議論すべきことであって、今頃何を言っているのだろうか。ボクは彼の主張に聞くべき点があると思うけれど、民主的手続きを経て決定された以上、仕方がないのではないか。百歩譲って彼が全知全能であったとしても多数合意決定には従う。これが民主主義である。

京都新聞社説:北陸新幹線の延伸 再考すべき京都の地下縦断 2024.3.16

 きょう、北陸新幹線の金沢―敦賀(福井県)間が開業した。
 次の延伸計画は、大半が京都府の地下を貫いて大阪に至るルートに決められている。だが前提条件は破綻しているに等しく、強行すれば京都の将来に重大な禍根を残しかねない。
 今こそ、再考すべき時である。

 日本海側を通り東京と大阪を結ぶ北陸新幹線は1973年に計画を決定。敦賀開業で延長約700キロの8割がつながった。
 大阪までの延伸は滋賀県米原や舞鶴などの路線案もあったが、与党が2017年、福井県小浜―京都駅―京田辺市松井山手―新大阪駅を決めた。22年後の46年開業を想定し、詳細ルートに向けた地質調査中である。
 関西や北陸の経済・観光を振興し、災害時の代替交通になるとの役割を掲げる。しかし、京都への負荷はあまりに大きい。
 福井から南丹市、京都市などを縦断するにあたり、路線の大半を占める約60キロは用地買収が不要な「大深度地下」(地表から40メートル以下)を貫くという。

 京都盆地の地下は、琵琶湖の8割近くの水量が眠る「水盆」ともいわれる。地下水を利用した食、観光、伝統産業など京の経済や暮らしを潤している。
 周辺河川を含め、大深度工事は影響予測が難しい。他府県では水枯れや陥没事故が相次ぐほか、長期工事で出る大量の残土の処分も深刻な問題になり、住民生活を脅かしている。
 費用対効果も甚だ疑問だ。国土交通省が17年に示した大阪延伸費用は2.1兆円。資材費や人件費の高騰で4兆円を超えるとも見られる。現に各地の整備新幹線コストは膨張が続く。
 費用の3分の1は沿線自治体の負担となり、苦しい財政を直撃する。京都の住民サービス低下に跳ね返る恐れがある。

 当初試算では、便益の見込みを建設費などで割った費用対効果は1.1と辛うじて効果超としたが、もはや絵に描いた餅ではないか。急激に進む人口減少を含め、計画の前提が崩れている以上、見直しは欠かせない。
 石川県小松市議会は工事区間が短い米原ルート採用を求めて決議した。在来線を利用した「ミニ新幹線」を推す声もある。
 反発が一部の地域や政党にとどまるとみるのは過小評価だ。
 一昨年の京都府知事選の際、本紙の府民世論調査では計画推進は3割弱にとどまり、「再検討すべき」「不要なので中止すべき」で計6割に達した。
 昨年4月の京都府・京都市議選の全候補181人で、現ルートを明確に是としたのは26人だけだった。今年2月の京都市長選では自民党元府議の候補が「計画反対」を第一の主張とし、当選した松井孝治市長でさえ賛同を明言しなかった。
 このまま突き進み、自治体事業ではない問題が選挙の度に争点化するなど、京都の分断と混乱を招く事態を危ぶむ。

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