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【2023年】1〜4月に読んだ漫画まとめ

『言葉の獣』(1−2巻) 鯨庭

もしも言葉が何かの形として見えたら、その「真意」をより理解できるのかもしれない。言葉を“獣”の姿で見ることができる共感覚の持ち主の少女と詩に強い関心を持つクラスメイトの少女が、「この世で一番美しい言葉の獣」を求め〈言葉の生息地〉の森を探索する物語。同じ言葉でも辞書に載っている総意と個人がもつ解釈(真意)が違うときは獣のかたちも異なる。言葉について思索する2人の対話と言葉の獣の姿かたちや動作が良い。形ないものを絵で表現しているすごい漫画。

『センチメンタル無反応 真造圭伍短編集』 真造 圭伍

ひらやすみ』の著者が2022年に出した短編集。高校卒業して同棲の許可をもらうために初めて挨拶しに行った彼女の家がゴミ屋敷だった「清水家のすべて」が良かった。第三次世界大戦を舞台にした「居酒屋内戦争」も好き。
『ひらやすみ』も含め全体的に日常の大小ある不幸に関して達観(諦観?)して許容する姿勢を感じていたが、それが最後の著者の闘病エピソードに出てくる「不幸をくれてありがとう」という言葉でしっくりきた。

『あと一歩、そばに来て』 武田 登竜門

ネット公開で話題になった「大好きな妻だった」を含め計7篇の作品を収録された短編集。いろんなタイプの作品が入っていて、絵も美麗。膨大な黄金を隠し持っているという村に辿り着いた男性2人が村の奇妙な風習に出くわす「楽園」が教訓的で好みだった。(あとがきを読んだら『まんが日本昔ばなし』みたいな話が書きたかったとのこと。なるほど)

『あかねさす柘榴の都』(1−2巻)福浪 優子

家族を失くした少年が母親の祖国スペインのグラナダに行き、母の妹であるスペイン人の叔母と暮らす話。異国の文化、料理、人々が出てくる日常系漫画が大好きなので買って良かった。陽光溢れるアンダルシア・グラナダの旧市街やアルハンブラ宮殿…素敵だ。ピソというスペイン流シェアハウスもいいな。ガスパチョやトルティージャも美味しそう。
※「グラナダ」はスペイン語で「柘榴(ざくろ)」の意で、街のあちこちに柘榴のモチーフがあしらわれているらしい。

『女の子がいる場所は』やまじえびね

「手塚治虫文化賞」短編賞受賞作品。モロッコ、インド、サウジアラビア、アフガニスタン、日本。国も宗教も文化も違う5つの国の少女たちに降りかかる「女の子だから」の制約や生き辛さを描いた短編集。主人公の少女たちは全員10歳。制約や生き辛さを少女たちにそれが当然だと強いているのが過去の「少女」でだった祖母(ときには母)であるのが印象的だった。

『うみべのストーブ 大白小蟹短編集』大白 小蟹

作者による短歌とともに綴られる7篇の作品集。最愛の彼女と別れた男を、2人が暮らしていた部屋でずっと見守り続けていたストーブが海に連れ出すという表題作の「うみべのストーブ」を試し読みで気に入って購入。
山から降りてきた雪女と夏を過ごす話や交通事故にあった夫が透明人間になる話から大雪で交通網がストップした日に見知らぬ人と銭湯で過ごした夜明けまでの時間の話など設定はさまざま。どれも無性に寂しくて柔らかい感じがすごく良かった。

『取るに足らない僕らの正義』川野 倫

“彼女を知らない人にとっては取るに足らないことだけど、僕らにとって彼女は「かみさま」だったんだ”
ある日、SNS上から突然姿を消してしまったシンガーソングライターの多野小夜子。以前からファンの高校生や小夜子に嫉妬していた元同級生、恋人など、彼女がSNSから消えてしまったことで直接的・間接的に関わった周囲の人々の生活が少しずつ変わる様子をオムニバス形式で描いた漫画。
私自身はそこまで何かに執着することはないタイプだけど、たとえばどうしても気になってSNSで追っていたアカウントが突然消えたことによる心の喪失感は少し想像できる気がする。読んだ感想を誰かと話してみたくなる漫画だった。

『グッバイ・ハロー・ワールド』北村 みなみ

世界的なテクノロジーカルチャー誌「WIRED」で連載された「もしかしたら起こりうる未来」から想起された7作のSF漫画。
環境汚染、遺伝子操作、尊厳死など結構重いテーマを各話扱っていてディストピア設定なのになぜか暗くならないのは、絵のタッチと「起こりうる未来」の中でそれを日常として受け入れて普通に楽しいこと見つけて過ごしている彼らの様子からなのだろう。それが当たり前の世界なら差分に気持ちが向かないからそりゃそうよな。と思いながら読んだ。すごい内容が詰まっているのに爽やかさもある不思議な読後感。

以上、1月から4月に読んだ漫画でした。

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