見出し画像

【2023年】 1月に読んだ本


『ティファニーで朝食を』トルーマン・カポーティ

原作を読んだのは初めて。読む前はラブコメだと思っていたが、自由な魂への憧れと切なさを感じられるお話だった。他に短編「花盛りの家」「ダイヤモンドのギター」「クリスマスの思い出」も収録。表題作も含めすべてにイノセンスなものが持つ危うい魅力がある。

『すばらしい新世界 [新訳版]』オルダス・ハクスリー

才能も感情も徹底管理されたディストピア社会を描いた名作SF。ユートピアの実現を追求したら結局こうなりました的な皮肉満載で楽しい。コントのようなディストピア社会の様子を読みながら「自由って本当に幸せなのか?」とも思った。約90年前の作品だが、訳者(大森望さん)あとがきで「めっぽう面白い新作SFを訳すつもりで日本語化することを心がけた」とある通り、とても読みやすかった。

『生きるぼくら』原田 マハ

いじめから引きこもりになった青年が、母の家出を機に人生をリスタートさせる。自然、米作り、祖母、新しい出会い、隣人の優しさ…など、わかりやすく“温かいもの”が溢れたお話。社会問題が物語の背景に敷かれている中で「そんなうまくいくわけないだろう」と思う安心展開だが、生きていくことがそんな風にみんな「なんとかなるように」と祈って書いたのかもなと考えた。

『傷を愛せるか 増補新版』宮地 尚子

トラウマやジェンダーの研究者である精神科医・宮地尚子さんのエッセイ。臨床の現場や留学先、映画、旅などの体験から感じたことを元に「傷を抱えながら生きること」について話している。学術的な難しい感じはなく、しなやかな美しさが感じられて読み心地が良かった。

『台湾旅行記 声はどこから』文・写真:檀上 遼 / 篠原幸宏

台湾を北から東へ辿った10日間の旅行記。同じ旅程を二人それぞれが記録しているので視点や記憶の違いが面白い。ひとりは相手が不機嫌だったことを記録しているが、その当人は何も書いていない。ひとりは困った状況をおかしく捉えているが、もう片方は恐怖として描いている。事実はひとつだが真実は人それぞれ。下北沢のBONUS TRACKにある日記専門店「日記屋 月日」で購入。

『つながり過ぎないでいい—非定型発達の生存戦略』尹 雄大

「そもそも他者と難なく意思疎通できることは本当に良いこと、正しいことなのか」。感情表現やコミュニケーションがうまくできないという著者がインタビュアーという職につき、言葉や表現することについてを考えた本。当たり障りなく他者とやり取りできるということは実は奇妙なことなのかもしれない、と自身を立ち返り観察する当事者研究の過程が興味深かった。

『ポエトリー・ドックス』斉藤 倫

主人公がはしご酒で辿り着いたのは、犬のマスターが出す「詩」とお酒を楽しむバー。同著者の過去作『ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集』の大人版といった感じ。難しい詩が多くて途中から正直うーむ、わからないな。。と感じた。本の中の「わからない、というこのかんじが、詩がぼくらをどっかにつれ出そうとするフラグ」という言葉を受け入れて、そのまま最後まで読了。いつか味わいが変わる日が来るか。

『つむじ風、ここにあります』木下 龍也

短歌。この31字どうやってつくるのだろうか。削るのかな、くっつけるのか。知っている言葉なのに、絶対自分ではつくり出せない文字列なのが素敵だ。文字で見たくてときどき開く。

『研修設計マニュアル: 人材育成のためのインストラクショナルデザイン』鈴木 克明

頭から「研修は万能ではないしコストもかかりすぎるから、まず研修しないでいける方法はないかを考える」を薦めていて、いいなと思った。
研修の目的は「教える」ではなく「自ら学ぶ」ことの手助けをし、学習者行動を変化させること。単純に1回の満足度をあげる作り方ではなく、どう改善していくのか、そして「自ら学ぶ」をどう個人や組織に定着させていくのかについても述べている。大事な一冊になった。


『学習設計マニュアル: 「おとな」になるためのインストラクショナルデザイン』鈴木 克明他

こちらは大学生向けに自身(学習する側)の学び方を考えるための本。心理学的なアプローチだけでなく教育メソッドの観点からも「どう学ぶか」の気づきを促している。伝え方に固くなく偉そうじゃなく“よい助言者”というスタンスが感じられる。上記の研修設計と併せ、学習を教える側と学ぶ側の双方から考えられる本に出会えて嬉しい。

『CREATURES 山村れぇ作品集』

「現実と異世界が重なっている世界(重世界)で異世界の生物がこちらの様々な現象に影響を与えているとしたら」という設定をもとに書かれたクリーチャーたちの画集。設定や生態について作り込みが楽しく見応えがある。

図書館で読んだ本

社内研修プログラム作成のための参考本

・『リフレクション 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』熊平 美香
・『コーチングの基本』鈴木 義幸
・『心理的安全性の築き方見るだけノート』山浦 一保
・『傾聴の基礎から実践―コミュニケーションをうまくとるために』武藤 圭子
・『対話のことば オープンダイアローグに学ぶ問題解消のための対話の心得』井庭 崇/長井 雅史

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?