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【2023年】5月6月に読んだ本


『旅の断片』若菜 晃子

登山の専門出版社の編集者を経て文筆家として活躍している著者による
随筆集。旅の夜、メキシコ断簡、海の旅、英国、裏庭の冒険、地中海の島キプロス、土産ばなし、インドのおじさん、サハリン点描、インドネシア・スマトラの雨、花のスリランカ…と魅力的な章立てで64篇。旅の中でふいに出会う小さな光景や美しい瞬間が切り取られて書かれていて、自分もふたたびこんな風に小さな出会いにときめく旅をしたいと思う。時折挿まれるスケッチも素敵。

『わたしの全てのわたしたち』サラ・クロッサン

2016年にカーネギー賞を受賞した海外のYA小説。
腰から下がつながった結合双生児のグレースとティッピ。寄付金が尽きたことで高校生になって初めてホームスクールから実際の学校に通うことになった二人の日々をグレース目線で散文詩の形で綴っていく。
詩人の最果タヒ氏と海外のYA文学翻訳の第一人者である金原瑞人氏の共訳。原書の筆調をできるだけそのまま活かすためにまず金原氏が日本語に翻訳し、それをタヒ氏が詩にしていくという珍しい形。詩の形式であることで、グレースとティッピの他の人にはわかり得ない “一体感”をより強く感じる 。原題は『ONE』。

『本を読むひと』アリス・フェルネ

パリ郊外で荒れ地に勝手に住んでいるジプシーの大家族と、彼らに本を読むよろこびを伝えようとした図書館員の女性の物語。
タイトルから想像した「本を介したつながりを描く心暖まる物語」という内容ではなかった。周囲から蔑まれても、母であり息子(血族)がいることを矜持とするジプシーの家長のアンジェリーヌばあさんと5人の息子と4人の嫁、たくさんの孫たち。本は知ることのできない世界へ連れていってくれるもので「良いもの」という理解はあるが、変わるものは変わるし、変えられないことは変えられない。新しい世界を知ることでときめきと同時に自分たちという存在への疑問や息苦しさを覚えていく、その姿が印象的だった。原題は『Grace Et Denuement(恩寵と貧困)』。

『上林暁傑作小説集  星を撒いた街』上林 暁

読みたかった本を図書館で発見。(返却してしまったので写真無)
昭和期を代表する私小説作家、上林暁の小説集。冒頭の作品「花の精」は、庭で植木屋さんが著者が愛でていた自宅の庭の月見草を雑草と思ってねじ切る場面から始まる。それを言い出せずに沸々と怒り、できるだけ表に出さないようにしながらも怒りに共感してくれる人を探し…といつのまにか主人公の「私」の心の機微の波にのせていくうまさ。ラストも美しく、とにかく読み心地がよい本だった。


その他 

研修づくりのため読了。
『仕事選びのアートとサイエンス』山口 周
『シャイン博士が語るキャリア・カウンセリングの進め方』E.H.シャイン
『マネジャーのための人事評価で最高のチームをつくる方法』川内 正直
(再読)『他者と働く』宇多川元一 

以上、5月6月に読んだ本たちでした。


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