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貨幣の力

無から有を生む

政府にはお金をつくることで「無から有を生む力」がある。シニョレッジという。そんなうまい話があるわけはない、という人もいるだろう。

ならば、世界各国がお金を発行するシステムを作るのはなぜだろう。みんな基軸通貨のドルで生活してもよいはずだ。しかし、どの国も中央銀行を持ち、独自の通貨を発行している。ユーロ圏の国もかっては皆んな独自通貨を持っていた。そし。て豊かな地域になった。

自分の国を豊かにするためには、自分で貨幣を産み出すシステムを持つことが大切なのだ。

お金の流れを図示すると上記のような仕組みになる。

政府が支払いをするとき 政府が国会議員・公務員に給料を支払った時や企業から何かを買うとき、日本国なら「円」で支払う。これが、政府から民間にお金が渡される瞬間である。(T1)

政府はさまざまなものを民間から購入する。労働を購入した場合は給料を支払うし、建設費の支払いは公共建築物となる。政府がこれらを購入することで政府は需要を生み出している。

同様に日銀が何かを買うとき、例えば、銀行から国債を買うときや、証券会社を通じてETFを購入するときも、「円」が市場(民間)にお金が手渡されることになる。

この流れには「税金」は関係しない。政府の通帳にある現金は➊国債を発行して民間銀行に買ってもらう➋日銀から振り込まれる、のどちらかである。

現在の法律では➋は禁止されている。しかし、現在のように民間銀行が持っている国債を大量に日銀が購入している状態は、➊を経由して➋となっている状態ともいえる。

有が消える時 それは税金をうけとった時だ

日本政府は日銀を経由して常に通貨発行益(シニョレッジ)を手に入れている状態にある。このシニョレッジが消えるときがある。それは政府が発行した貨幣が自分のところへ戻ってきたときである。

それを「徴税」といういう。税金を取ることだ。(T2)

図のT1からT2の期間×発行量が、政府のうけとる通貨発行益である。

発行から納税までの期間が長ければ長いほど、また、その量が多ければ多いほど、政府は莫大なシニョレッジを手にすることが出来る。

政府の豊かさ、福祉や医療システムの良好さ、国土の強靭さなどはある意味このシニョレッジを利用することによって生み出されるのだ。現代の中央銀行による「管理通貨制度」とはこのような仕組みでできている

国内通貨量を正貨準備(金)の量によって決定する金本位制に対し、通貨当局が政策目標に従って通貨量を人為的に調節する制度。通貨の発行が比較的容易なため、増発からインフレーションを招きやすい。(三省堂・大辞林)

辞書も問題を指摘するように、シニョレッジを利用し過ぎると貨幣の発行量が多すぎでインフレになってしまう。ほどほどのインフレに収まる範囲で、シニョレッジを利用しつつ社会の福利厚生を高める、これが政治家の腕の見せ所である。

税金とは何だろうか

では、税金とは何だろうか。税金のことを借金を返す財源であると財務省や財政学者は説明している。しかし、管理通貨制度でみればシニョレッジを失うことでもある。なぜシニョレッジという魅力的なものを政府は手放すのだろう?

税とは、政府が紙幣を最後に受け取ることを通じて、印刷された紙切れに過ぎない存在に信用を与える仕組みだ。つまり、アンカー⚓️なのだ。

また、税のもう一つの機能はシニョレッジを回収することを通じて、インフレを防ぐ役割ももつ。米国政府は景気刺激によく「減税」という手法を使う。これは政府の紙幣を回収することをやめて、シニョレッジを利用し続ける方式を取ることだ。

インフレが加速して収まりさそうもないなら別だが、そうでないのであれば民間が豊かで、みんなが穏やかに過ごせるようなら、大判振る舞いも良いじゃないか。選挙に勝つにはこれが一番だ。

何より、国民の幸福に貢献することが本来の政府の役割だ。だから減税は当然の仕組みなのである。ちなみに、このインフレ目標もだいたい2~3%と米国政府は定めており、自分の人気取りのために減税や財政出動を連発しないようにしているのである。

税にはもう一つ大事な役割がある。持っている人間から取り上げて、持っていない人間にばらまくことである。これをきちんとしないと、持つ人間にばかり、どんどんお金が貯まることになって、社会的不満が高まって不安定になる。結果的に金持ちも安心して暮らせなくなるから、大事な役割である。

反対に徴税を強めて、民間からお金を回収し過ぎると市場に流通するお金が足りなくなって「デフレ」になってしまう。その結果、国民の中でお金が少なくなり、生活の苦しい人や企業の経営が行き詰って、破産・倒産が続く。日本の失われた20年がこれである。

この貨幣の力がわかると「税は財源ではない」というMMT・現代金融論の人たちの言い方が理解できる。

国民の幸せを考えて、高すぎない程度のインフレが続くよう民間にお金を配ってばらまくことが、政治の本当の仕事なのだ。

まずは、国民がこれを知ることがいちばん大切だろう。





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