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とある主婦のGood job days!~Vol.4~最後の宴

タイトルが“最後の宴”と聞いてもう最終回かと思わせて興味を引く作戦に出た。そう、その宴はあくまで世の中がウイルスに怯える前の年、2019年の暮れの話だ。世の中ほとんど全ての人々がお祭り騒ぎがずーっと続くであろうと思っていた、すなわち宴が普通に行われていた最後の年の暮れだ。

私はナチュマに入ってしばらくたち、その時臨時要員のベテランメンバーになっていた。臨時要員にも色々あって1回きりしか来ない日雇い臨時もいれば、私の様につねにナチュマの為だけに臨時要員としてスタンバイしているナチュマ独占臨時要員のメンバーもいる。
私はナチュマにしか呼ばれない身だったので必然的に独占臨時要員となった。そのおかげかとっきーに段々と顔を覚えてもらったのが丁度2019年の“クリスマスはちょっと贅沢に”セットの箱詰め作業が終わったあたり。

とっきー側近でナチュマスーパールーキー22歳の熊谷さんから手招きされて
「田山さん、年末のナチュマの感謝会に来てください、ときこさんが言っといてって」
「え?私ですか?はい、喜んで」 予想外のお誘いに居酒屋の掛け声の様な返事をうっかりしてしまった。
そう、とっきー側近からじきじきに感謝会に呼ばれたのだ。私はいきなり高値の花であるクラスNo.1イケメンに舞踏会で一緒に踊ってあげると言われたような、ちょっと自分が誇らしい気持ちになったのを覚えている。特別だと思われていると勝手に浮かれていた。

そしてその感謝会とは別にスタッフへの感謝会ではない。主にいつも美味しい野菜や食材の作り手さんを呼んで皆で“いつも美味しいものを作ってくれてありがとう”という感謝の宴である。ただそれにはおもてなしする側のスタッフがいる。それにただ呼ばれただけなのだ。
それでもナチュマの本当の仲間に入れた気がした。そして確かにその宴は私がとっきーとちょっとだけ近づいたきっかけになったのは事実だ。
宴には千葉県の県南にある無農薬で米を育てている俵さん、栗のジャムをおろしてくれている茨城県県南にある有名栗農園の天谷さん、そのほかオーガニックのドライフルーツの商社をしている飯山さんなど、いつも美味しい食材を届けてくれる人々が一堂に集まった。

ナチュマの内装は昔で言う所のおしゃれ丸太小屋で何とも気分はハイジなのだが、その場所が宴に変わると異国情緒があふれていてとても素敵だ。
店の中の陳列棚を壁に寄せて30人程の人が楽しくお酒を飲んだり美味しい食事を囲んで日々の感謝を伝え合う。
とっきーは日ごろは厳しい時もあるがこういった時は海外育ちの顔が出る。とっきーはパーティや宴が似合う。そして色んな人に人懐こくワインをふるまいだれそれかまわず話しかけてくれ、スタッフ一人一人にもねぎらいの言葉をかけてくれた。私はとっきーの意外な一面を見たようでうれしかった。そして私の名前を「あなた」から「ハナコさん」と呼んでくれたのだ、名前を呼ばれたそれだけなのに何故か臨時要員から一気にとっきーの側近になったような気分になった。

このまま私はナチュマでの宴にフル参加できると浮かれていたコロナ渦に入る前の最後の宴であった。

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