同じミスに気づくようになる

ASDは「木を見て森を見ず」つまり全体より細部の処理を優先する認知の仕方をする。
犬には、犬たらしめる何か（＝クオリア）がある。狐とみて犬とは言わない。お袋の味は、お袋以外の誰が作ってもその人のお袋の味にはならないように、物や人には「この物・人」たらしめるクオリアが存在する。

ASDにとって、例えば人間の顔はパーツごとの確定記述の束でしかない。だからニキビが治った人の顔を見ても同じ人とわからないし、髪を切ったら誰かわからない。（極端な例）

でも実は、「森も見て」と言われたらちゃんと見れる。というところがポイント。

細部の処理を優先して全体が把握できないということは、中枢性統合という、物事を把握する際に全体を見る機能が働かない。全体像が見えなくなると、一つ一つをまとめてパターン化することができない。応用が効かない。だから本人は同じミスだと思っていないのに周囲から見ると「また同じようなパターンのミス」をしていることになる。

でも、不可逆ではなく「森も見て」と言われたらちゃんと森も見ることができる。

ということは、サイケデリクスを利用すると全体の繋がりを考えながら物事を把握できるようになるので、ASDもそれを利用すれば全体を把握できるような認知の仕方が出来るようになる。しかもASDは規則性、幾何学といったものが好きなので、一度ハマれば全体をみてパターン化する力が身につくと考える。物事を大きく捉えていろんなものに応用することを考えるようになる。

感覚過敏が和らぐ可能性がある

例えば音。
聴覚過敏というのは、ただ聴覚の神経が過敏なのではなく、そこに本人の
・情動（ある特定の音に対する感情）
・認知（ある特定の音に対する考え方、捉え方）も入っている。
井手正和先生の『科学から理解する　自閉スペクトラム症の感覚世界 』に書いてある。
https://www.amazon.co.jp/科学から理解する-自閉スペクトラム症の感覚世界-井手正和/dp/4760826858

つまり、「この音は嫌い」という本人の価値観が聴覚過敏を増強する。

サイケデリクスをとると、赤ちゃんのように何も価値観を持っていない状態になる。
生まれたばかりの赤ちゃんは「空は青い」とか何も教え込まれてないので、まだ空が何色かも知らないし空が綺麗とかそういう価値観も持っていない。変幻自在の価値観０の状態である。
その状態で普段嫌いと思っている音をサイケデリクス摂取しながらジャッジをせず聴く練習をすると、聴覚過敏が和らぐ。
実際私も幼い頃、遠くのバイクの喧しい音が聞こえたら「56す56す56す・・・」と物騒な言葉を念じながら祈ったり「うるさああい！！」と道端で怒鳴り散らし癇癪を起こすくらいバイクの音が大嫌いだった。赤ちゃんの声も昔は一人だけ車両を変えるくらい嫌いだった。

しかし、マインドフルネス瞑想でジャッジをしないことを学び、バイクの音や赤ちゃんの音をとにかくジャッジを入れず聞いてみるとただの音になった。
サイケデリクスで感覚過敏を改善する練習すれば、それと同じことが起こるのではないだろうかと考える。

多面的に考えられるようになる

ASDはとにかく頑固で、融通が効かず、こだわりが強い。人の言うことを聞かず意思を曲げない。一つの方法しか考えることが難しいのでミスからの臨機応変な対応が苦手。怒られると「怒られたこと」で頭がいっぱいになる。物を失くすとそれを探し当てるまで探すしか選択肢がない。

私も今は少しだけましになったが、人から言われても自分が納得しないと絶対折れないし失敗しないと学べない性質だ。だから有難いことに沢山失敗出来ている。

患者さんを見ていても、ASDの人は自分が「こうだ」と思っている時に、人に「こういう考えもあるよ」と言われても、それを具体的に実体験として納得するまで自分の考えを曲げない。というふうに生きているなと思う。（まあ私の力量不足もあるだろうが。てかあなたがそう強く思うならそうなんでしょうねというスタンスもある程度必要だなと感じているのであまり変えようとはしていない）

サイケデリクスは上でも示した通り、
・物事の全体を認識できる
・全ては一つで、物事には繋がりがある

と考えることができるようになるため、視座を上げ、物事を多面的に考えることが出来るようになり、融通がきく、臨機応変に考えられるようになるのではないか。と考える。

サイケで本来の自分が失われるか

これを使うと、本来の自分が失われてしまうのではないかという疑問が出てくるかと思ったのでそこを考えてみた。
もともとASDは、天才的な頭脳、感性を持っている。細かい絵とか描けるの本当に凄い。自分も細かい絵や色の感性が自分と似ている人の絵大好き。

「木をみて森を見ない」がベースだが、意識すれば「森を見る」ことも出来ると言ったように、認知スタイルは可逆的である。なのでサイケデリクスでさらに柔軟になるうえ、本来の自分にも戻ることが出来るのではないか、と考える。

サイケで上記のようにならないなら、それが良い悪いおいといて完全に娯楽目的での使用経験しかないのであろう。

※違法行為は一切推奨していません。