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舞台『12人の怒れる男』7/20マチネ観劇

劇場内は原作と同じようにクーラーがついておらず、気温はムシムシとしていて高かったのでとても暑く、また役者さんたちの熱気がすごくて、暑いし熱いしでとにかくあつい舞台でした…楽しかったです!
めちゃくちゃ長いです!お時間のある際にでもどうぞ!💧


演出について

意見が有罪から無罪に変わるところと、上着を脱ぐタイミングが同じだったところが本当にすごい演出だなと思いました。8号さんは最初から白で、途中で意見を無罪に変えるも、もう一度有罪に変え再び無罪に変わる12号さんは上着を一番最初の無罪では脱がなくて、すぐに意見を変えず「絶対に有罪」からもう一度冷静に考えて、「有罪ではない」という意見へ変えた4号さんとが3段階でスーツを脱いでいて、こだわった演出なんだな…と感動しました…。

あと、誰かが本気で怒る時に無音になるのが怒りを際立たせていて素敵だなと思いました…。


脚本について

5号さんが飛び出しナイフの使い方を思い出す場面に、原作にはなかった9号さんの「今のあなたにそれは似合わない」というセリフが追加されていたのが、5号さんの人間性や9号さんの人間性をより明確にしてくれていて、原作に忠実なのもいいけれど、こういった追加も本当に素敵でとても良かったです。

11号さんの、「こんな結果情けないと思いませんか~~個人的な感情は捨てるべきです!」というセリフが追加されていたのもとてもよかったと思いました。個人的にはこのあとの9号さんの「私らはそういうことを忘れますんでね。よく思い出させてくれました。」というセリフが、11号さんの異国から来た方ならではの視野の広さというか、いつもまわりに脅えて生きていたのかなと思わせるような客観的な視点と、他の陪審員さんの緊張感のなさをきっぱり比較して際立たせてくれていて、本当に素敵な台詞で好きでした。また移民という立場で発言しにくそうだった11号さんが、この場では立場に上も下もないのだと思い出し、強い口調で発言していたのが、戯曲の良さを際立たせていて素晴らしかったです。

あと、この作品で出てくる8号さんの主張は、英語ではnot guiltyなんですよ。
日本語だと有罪無罪で、正しくはないけれどguiltyとinnocenceみたいな感じだけど、英語だとguiltyとnot guilty。私は、日本語吹き替え版だったり、今回みたいな日本人版の舞台でそこの表現に引っかかってたんです。
無罪と、有罪ではないかって全然違くて、8号さんが主張してるのは無罪、じゃなくて100%有罪とは言えないってことなんです、って言うことを思ってました。
最後の辺りで、評決はどっちだと思うか全員に1人ずつ聞く時に
「有罪ではない」「有罪とは思えない」
って答えてくれたの本当に良かったと思います。日本語じゃ表現出来ない英語圈の映画の難しいところをちゃんと表現してくれたんだなって感じがしました。

嫌だったとかダメだった、という訳ではありませんが、原作では「その子はあなたの息子じゃありませんよ」というセリフは1番最後の3号さんが無罪を認めるシーンで出てくるのですが、それが結構中盤に出てきてて少し埋もれてしまっていたのがなんだか、うーん?という感じでしたが、恐らく1回しか見れてない私には分からない何かがあるのだと思います…私も知りたかった…。


演技 お芝居について

まず1号さん。この役は、何度映画をみかえしても未だに思考の道筋やどこで意見が変わったのかが分からなかったのですが、今回も例外なく分かりませんでした。それが1号さんの感情を表に出さない穏やかさ、といういい所なのだと思うので、1号さん役の登野城さんは本当にリアルな1号さんでした。
1号さんのそういった感情を見せない良いところって、ずるさのように思えるんですけど、でもそのずるい所もあるのに誠実そうな振りをする1号さんっていうのが、とっても人間らしいし、登場人物のココロの弱さもちゃんとあるっていうのが本当に素晴らしい作品だなと思わせてくれます。
変わりますが、他の陪審員さんに文句を言われて、陪審員長を下りると言っていたところは、怒っている、というよりも拗ねている感じが強くて、可愛い方だなと思ってしまいました…笑。2号さんや12号さんがいらないことを言って他の方を怒らせそうになる時に、静かに止めていたり「(ダメだよそれ言っちゃ)」とジェスチャーで伝えていたところは、本当にお兄ちゃんぽくてすごくツボでした…笑。

2号さん。原作では特に目立たず、意見は他に合わせる、みたいな役でしたが今回の舞台ではなんだかくせ者のおぼっちゃま?みたいな感じで少し面白く見させていただけました笑。役者さんの話になりますが、2号さん役の山口さん、ずっと背もたれ使わず背筋伸ばして座っていらっしゃって…2時間もすごい…素敵な背骨…ってなりました笑。

3号さん。凄かった…。本当に凄かったです…。さひがしさん…覚えました…さひがしさん素敵でした…。3号さんの怒りは、この物語の誰より私情から来ている怒りで、そしてそれは怒り、というより悲しみが育った怒りという感じで、さひがしさんの3号さんは本当にその悲しみからの怒りが、忠実に表現されていて、3号さんや…3号さんが生きてはる…ってなりました…。ただ3号さん怒り方が怖い。本当に割と真面目に3回ぐらい「ひっ」って小さい声で言っちゃいました(迷惑)。でも最後の息子さんの写真を破きながら泣いて、「無罪だよ」というシーンは本当に感動して、この人は、私情から少年を死刑にしたいけど、でもそれがいけないこと間違ってることだって知ってて、それが苦しくて息子が戻ってこないのが悲しくて怒り散らしてるんだな…って本当に抱き締めたくなりました(役者さんに迷惑)。
3号さんの怒りは怒りじゃなかった、悲しみでした。本当に素敵な3号さん。大阪も楽しみ。

4号さん。ちょっとまずビジュアルから言わせて欲しいんですけど、眼鏡!スリーピース!大きなお靴!は~~かっこいい!終わりです。 
4号さんは、ちょっと後で詳しく書かせて頂きたいんですけど、この物語に出てくる役の中でいちばん誠実な方だと思っていて、4号さんは自分の意見は絶対正しいと思っていたり、プライドが高かったりしつつ、正しい意見には賞賛を送っていました。この、誠実さと自信家から来る態度の悪さを両立させた4号さんを演じきった拓海さんは本当に凄いと思いました。
あと、有罪だと確信して早く話し合いが終わることを願っていた時は椅子にもたれ掛かるように態度悪く座っていたのに、途中から話し合いが進むうちにだんだんと姿勢が良くなっていって、最後には背もたれを使わずに座っていた所が、4号さんの誠実さや元の人柄の良さ育ちの良さを表現していてとても深いお芝居だな…と震えました。
眼鏡の話をしている時に、有罪ではないことに気づいた場面で、表情が忙しなく変化してり頭を抱えたり足を震わせたり、などの動きが4号さんの焦りなど、心情や感情を繊細に表していて本当に素敵でした。とにかく、「4号さん役の東拓海さん」ではなく、「4号さん」があの舞台にはいました。凄かった。圧倒されました。

5号さん。原作ではもっとぶっきらぼうな青年でしたが、今回の舞台では誠実で真面目な気の弱い青年という感じがしました。多分それが、5号さん本来の人柄なのだと思うので、5号さん役の吉本さん本当に凄い。9号さんが「今のあなたにそれは似合わない」と言ったあと、腰からしっかりとお辞儀をしていたのが本当に5号さんの素敵なところをしっかり表現してすごかったです。

6号さん。ひとつだけビジュアルについて言われて頂きたい。腕凄いですね?!筋肉!タンクトップめっちゃ似合います!らばさんみたい!終わりです。
6号さんは、本当にこの人だけは怒らせちゃいけないみたいな人でした。6号さん役が滝川さんなの本当にベストキャスティングだと思います。あなたに腕見せられたら反論なんて出来へん…締められる…。
力でねじ伏せられるだけの腕があるのに、しっかりと相手の立場を敬ってちゃんと意見を聞き、そして反論するという感じがすごく6号さんで、本当にもう、なんというか凄かったです。お年寄りを敬え、っていう場面では本当に怒っていたのに、そこからどうぞ話してくださいっていう瞬間に表情がしゅって穏やかになったの本当に凄いと思いました。振れ幅がすごかったです。一瞬で2役見た気分でした(?)

7号さん。なんだか原作よりいい人になりましたね(?)適当な感じはそのままですが、煽りや嫌味がソフトになった気がしました。元々7号さんが1番イラァっとくる役だったのですが、今回の舞台ではそんなことありませんでした。扇子持ちながらふらふらへらへらして、関西弁で適当に茶化してるのが本当に7号さんで素敵でした。
ただ、話し合いが後半になるにつれて真剣に考えるようになって、最終的には弱々しく無罪と思った理由をいうところが本当に人間らしくて、本当に共感しました。
あなたはあなたなりに考えて答えを出したんですよね…でもきっと自信がないんですよね…頭が悪いって自分でも言っていたし…。井上さん。覚えました。井上さん。骨格が綺麗。

8号さん。全部書いたらここだけで1万文字超えるんでめっちゃ削って書くんですけど(長い)。とにかくあの静かに話す感じが本当に8号さんそのものですごい圧倒されました。
本当かは分からないんですけど、私の中で8号さんは1番最初から怒っている人物なんですね、なんでかって言うと、まず陪審員室に入った時から他の陪審員さんたちが考えるのをやめ、証拠が真実なのか検証もしようとせず信じ込んで少年を有罪だと言い切ってしまうことに、1番最初からずっと静かに怒っていたと思うんです。でも、その怒りを彼は表情や動きに決して出しません。
なんですけど、その怒りが伝わらないお芝居じゃただの静かで心の広いおじ様になってしまうので、表情や動きには出さないのに、声に少し感情を混ぜるような遠回しな、オーラで気持ちを伝えてくるような演技をしていた濱仲太さんは本当に凄かった。1番圧倒されました。素敵でした。

9号さん。話し方が9号さんそのものでした。お年寄りならではの諭すような話し方ではなく、高い声で驚くような感情をぶちまけるような話し方をする9号さんがもうそこにいました。
9号さんは多分この陪審員さんの中で1番人に同情しやすい人だと思っていて、だからこそ老人の証言が偽証かもしれないということも言えました。その同情しやすい9号さんや、少し怒りっぽい9号さんを繊細に表現していた松田さんは本当に凄かったです。おじいちゃんでした。

10号さん。3号さんの次に私情にまみれた方。いやもしかしたら1番なのかもしれません。
この10号さんの過去についての解釈はないです。多分解釈しちゃいけないところだと思ってます。登場人物の名前も出ない(原作の8号さんと9号さんは最後にちょっと出ますが)、過去も出ない(1号さんはちょっと出ますが)、っていうのがこの戯曲のいいところだなと思っていて、名前も過去も知らない男の人たちが、ただ1人の少年の事件について話すだけって言うのが、多分陪審員制度そのものを表現していると思います。少年の話をするのに名前も過去も必要ないんです。だからこの作品の登場人物の過去は、解釈しちゃいけないところだと思いました。
10号さんは、とにかくスラムの人を毛嫌いしていて偏見と差別意識の人でした。でもだからといって、偏見と差別意識しかない人であってはいけなくて、10号さんは10号さんなりに考えがあって、思うことがあって、少年を有罪だと言っているのだから、10号さんがただ怒りっぽい非常識な男になってたら嫌だなと思ってこの舞台を観ました。そんな心配はいりませんでした。10号さんは人間でした。過去の何かがあって、悲しみと痛みと劣等感に苦しんで怒り狂う深い人間でした。
本当に素敵なお芝居だった。大阪で神田さんの10号さんが見られないのが悲しいですが、室さんも楽しみです。また人間だといいな。

11号さん。原作ではもっと目立たない方でしたが、この舞台ではとても物語の山場を担う感じで、より素敵な人になっていました。脚本についてで書かせていただきましたが、あの時の長台詞の詰まりながらも必死で思いを伝えようとする姿が、誠実で真っ直ぐな11号さんの良さを本当にはっきり繊細に表していて、本当に素敵な役者さんだなと思いました。
11号さんの怒りは、怒りというよりも苛立ちが大きいように思えていて、自分も差別される立場であるからこその他の陪審員さんから少年への差別意識への苛立ちや、自分の意思を思ったように真っ直ぐ伝えられないもどかしさから来る怒りを繊細に表していて、本当に素敵な方でした。11号さんの良さを改めて知れたような気がしました。竹下さん。覚えました。竹下さん。ぱっち。

12号さん。物語の中で、1番多くの人の思考に近い人だと思いました。
強く意見を主張する人がいたら、無意識のうちにその人の意見が正しいのだと思い込んでしまう弱さ、人の顔を伺う様子、場を和ませようと必死に笑う姿。大事にしたくない、でも間違ったことはしたくない、けれど何があっていて何が間違っているのか分からない。というもどかしさが強い人物だと思います。12号さんの怒りは基本的に自分へ向けた怒りで、自分へ向けた怒りや劣等感って本当に演技で表すのは難しいと思うので、12号さんそのままに、表現してくださった佐藤さんは本当に素晴らしい方だと圧倒されました。
意思は強くない、発言力もない。頭も良くない。でも間違ったことはしたくない。正義感と周りに溶け込んでおきたいという気持ちの入り交じった感じ、12号さんそのままでした。
日替わり面白かったです。笑っちゃいました。佐藤さん。覚えました。佐藤さん。


原作、戯曲について

さっき後回しにした4号さんの誠実さについて。
4号さんは最初はプライドが高くて態度が悪いって感じだったけど、それは「有罪」っていう自分の意見が正しいって自信を持っていたからであって、それは私情や偏見からの決め付けではなく、根拠に基づいた意見だったはずなんです。もちろんスラムの人っていう多少の色眼鏡はあったんだろうけれど、それは理論的な意見で、感情によるものではなかったと思うんです。
それに、自分の思っていることと違っていたとしても正しいと思った意見には賞賛を送るし、逆もするんです。それに、意見をすぐにころっと変えるんじゃなく、もしかして自分の意見は間違っているかもしれないと思ったら、1度そこから離れて冷静に考えて答えを出していました。それがあの3段階でスーツを脱ぐ演出で表現されていたと思うので、すごく感動しました。

それと、この物語の中で4号さんが意見を変えた瞬間が、私はいちばん共感が出来て、、なんでかって言うと、自分の立場だとどうなるかとか、身近なものに例えられるとわかりやすくなるように、眼鏡をかけていた4号さんだから眼鏡の話で納得して意見を変えたんだと思うんです。
電車の話や、老人の歩くスピードの話は、もちろん理論的で素晴らしい根拠だったけれど、有罪だと信じ込んでいた人にはあまり意味の無い根拠のように思えてしまうのだと思います。だからそこで納得しなかった陪審員さんたちは悪くないし、むしろ自分がなってみないと分からないところが人間らしくて、良かったです。

12人の怒れる男、という題名で12人それぞれの怒りがあって、なのに本当に怒りから来た怒りを持っているのは8号さんだけ。というのが、なんというか、如何なる時も私情を捨てきれない人間の悪い所でもあり良いところでもあるのを深く、観ている側に伝えてくるのが本当に凄いと思いました。

それぞれが自分の過去や思いを持って怒り、それぞれが自分の正しいと思ったことを貫くことの難しさを知るという、本当に深い素晴らしい作品でした。映画ももちろん素敵でしたが、やっぱり舞台特有の生の演技は別格でした。色んなことを見つけられました。新たな発見をありがとうございました。
本当にこの舞台を見ることが出来て良かった。大阪も楽しみです。



最後に

今回の舞台で初めて12人の怒れる男を知った方へ、原作も見てみてください!
本当に素晴らしい作品ですし、原作を見ることによって舞台の素晴らしさもより一層わかります。

心からおすすめする作品です!




すごい長くなりました!本当に申し訳ない!でも悔いはありません!思ったこと全部書きました。
日本語力語彙力不足ですみません!ありがとうございました。


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