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入院したときに家族はどうしたら良いか 後編

入院した時に家族はどうしたら良いか 前編、中編 の続き。

7.待っているということを伝える

病気を治療するために入院をするものの、いざ入院すると様々な苦しみを感じる。

病気の症状で苦しみ、
家族から離れている寂しさで苦しみ、
自分は病気ではないと苦しみ、
周りのちょっと変わった人の言動で苦しむ。

面会したときや、電話をかけてきたときに色々な苦しみを話し、「退院したい」「連れて帰って」「先生に退院させるように言って」「このままじゃ逆に頭がおかしくなっちゃう」など、様々な希望、要求、ときに脅してくる。

そういったときには、「受容し聞き流す」のが良いと、入院したときに家族はどうしたら良いか 中編 では書いた。

聞き流すといっても聞いていないのではなく、本人の思いから逃げないで、「必ず良くなるので、良くなるまでずっと家族は待っている」ということを、言葉で、態度で伝えていくことが重要である。

つい「近いうちにね」「できるだけ早く」「いつかね」「先生がいいって言ったらね」などと、なんとなくごまかすように言ってしまう。

もちろんある程度ごまかすことは必要ではあるものの、本人に向き合わず逃げようとする態度は、確実に本人に伝わり、確実に本人を悪化させる。

「つらいよね」
「必ず良くなるからね」
「待っているから、もう少し頑張ろう」

そういう言葉を、心から伝えるようにして欲しい。

かわいそうと早めに退院させることも、答えるのがつらいからとごまかし続けることも、結果的に本人の状態を悪化させてしまう。

病気になったことには家族は何ら責任はないが、病気からの回復に家族は非常に大きな影響を与えるということは忘れてはならない。

8.外泊・外出時の記録は正直にする

ある程度安定したら定期的に外出や外泊をしていく。

この外出・外泊は、息抜きであると同時に、病棟生活では把握できない本人の状態を知り、退院ができる状態なのかを評価するという目的がある。

幻聴や独語は病棟という空間では消失していても、外出中などの刺激が増える場所や自宅などのほっとする場所では出現することは良くある。

また睡眠や食欲も自宅では変化することも良くある。

病棟では強制的に規則正しい生活になるも、家に帰るとスマホやPCを触って寝なくなったり、お菓子などを食べ過ぎたりする。

ときに薬を飲みたがらなくなる人もいる。

外出や外泊時に記録用紙を渡され病棟に戻ってきた際に提出をすることが多い。

この記録と病棟での様子を見比べながら本人の退院の時期を決めていく。

そのため外泊・外出時の記録は正直にすることが必要になる。

本人が記録を見て悪く書くと文句を言う・怒るという理由で、嘘を書く家族が時々いるもののマイナスにしかならない。

もちろん病棟での様子から判断して、外泊の記録が良すぎる場合は、家族は本人のことを十分に観察していない、あるいは家族は本人の言いなりであると判断したりすることはある。

この場合 早期に退院することはデメリットが大きいため、家族が強く退院を希望してこないかぎり退院は慎重に行うことになる。

こういった駆け引きのようなことは面倒な上に、「この家族の言葉は信頼できない」と医療関係者から評価されることはプラスになることはない。

本人がいくら嫌がったとしても外出や外泊の記録は正確にする必要がある。

本人が激怒するなどの理由でどうしても書けないときには、本人を病棟に送った後に受付に手紙を書いて渡すのが良い。

一方医師に直接話をするというのはあまりおすすめしない。

それについては後日書いてみたい。

9.病気の説明は頭ではなく気持ちに訴える

殆どの人は入院した時は病気の自覚は皆無であることが多い。

ある程度はあっても否定したい気持ちのほうが圧倒的に強い。

治療が進むにつれてゆっくりと病気の自覚が出てくる。

「自分は病気じゃない!!」と言う人に家族はどう接するか。

家族が「お前は病気だ!」と何度繰り返しても無駄である。

まして「病気は○○で、今は○○という症状」なんて難しい話をしても仕方ない。

そういった話は医師や同じ疾患を持った人たちから聞くほうが良い。

家族は、
「あの時はすごく心配した」
「私たちもつらかった」
「今は落ち着いてきて安心している」
「顔色が良くなった」
「同じ状態にはなって欲しくないからしっかりと医師の指示を聞いて欲しい」
などと、頭に訴えるのでは無く気持ちに訴える方が良い。

気持ちに訴えることができるのは、家族だけである。

10.一喜一憂しすぎない

家族は本人の状態の変化に一喜一憂する。

気持ちは分かるものの、あまりにも一喜一憂しすぎは良くない。

精神疾患は状態に変動があり一直線で改善することをはそうない。

逆に一直線でどんどん改善している場合、改善しているのではなく本人が上手に隠している、あるいは本当に良くなっているものの、変動に対する準備ができていないため、ちょっとした揺れに対して激しく動揺してしまうことがよくある。

そのためある程度の波を本人に自覚してもらい、家族も理解し、その波を乗り越えるための練習を入院中にしていく。

この過程を通して病気である自覚も芽生え、症状に振り回されないようになる。

このように状態に波があることが普通であり、回復という過程において必要ですらある。

状態の波に対して家族が一喜一憂し過ぎると本人を不安定にさせてしまう。

ちょっと良くなると「もう良くなった。これで大丈夫」と喜びすぎ、

ちょっと悪くなると「もうダメだ。また悪くなった」と悲観的になりすぎると、

この不安や焦りは確実に本人に伝わり不安定になっていく。

良くなっていれば、一安心する。

悪くなっていれば、そういう時期でしばらくしたら良くなると思い、早く楽になって欲しいなと願う。

家族は疾患についてプロになる必要はない、頭でっかちになってはいけない。

揺れすぎず、本人が回復するのを誰より信じ、つらい時をじっと耐え、本人とともに待つ。

これが家族ができることであり、家族にしかできないことである。

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