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猫とジゴロ 第二十三話

帰り道は何となく梅雨時っぽいしっとりした曲が聴きたくてハイファイセットの曲でできたプレイリストをかけていた。『雨のステイション』良いね。ユーミンの曲はね、昔付き合った女の子に教わったんだよね。教わったっていうと何だか堅苦しいけどさ、まあ、彼女がよく掛けていて何となく覚えていったっていう感じかなあ。敦子っていうショートの似合うパフュームの「のっち」似のやたら綺麗な女だったよ。何だかよく覚えていないけど、多分どっかのバーでナンパしたんだ。俺に振り向くなんて鼻から思ってなかったからたまげたけどね。一体全体俺のどこが良かったのか訊いてみたいけど。とにかく俺は、女の子に関しては「可愛い系」より「きれい系」なんだよね。

古くは鈴木京香、今だと綾瀬はるかかなあ。正統派の美人が好きだね。あとは顔もふっくらしていた方が好みだね。まあ、実際に付き合ったのはそんなにバリバリ綺麗な女の子ばかりではないんだけれどさ。例の慶應のおぼっちゃまから紹介された慶應の女の子もいたけどね、なんせ俺は底辺フリーターだからさ、会話が噛み合わないんだよね。まあ、こればっかりはしょうがない。

そんで女の話だけど、俺は恋愛に関してもコンサバディブな考えの持ち主さ。二股かけたり浮気したり(まあ浮気くらいはあったけど)余り忙しない行動は取らなかったな。付き合うと決めたら「きちんと」付き合った方だよ。女に泣かされた事はあっても泣かせた事はなかった。ああ、なんでこんな照れ臭い話なんかしているんだろうね。でもさマダムほど年上の女性っていうのは全く範疇になかったからさ、その、新太郎さんって幾つくらいの人だったんだろうね。そう、年齢さ。シンタロウっていったら石原慎太郎か勝新太郎くらいしか思いつかないけどね。まあそれ相応に歳いった男だったんだろうな。

そうこうしているうちに車はあっという間にレインボーブリッジを超えてショートーへの帰路は終わりを告げていた。俺は今日一日、頭をフル回転させてあれこれ考えたから何だか心地よい疲れがあったね。

斉藤さんは元気になったかな。吾郎は元気でやっているかな。radikoで聴いてお気に入りになったジョニ・ミッチェルの『Night Ride Home』を聴きながら家路を急いだ。