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『Summer Pockets REFLECTION BLUE』プレイレポート(上)~個別ルート編

こんばんは。

今回は、夏らしいゲームということで、『Summer Pockets REFLECTION BLUE』をプレイした感想、その前編となります。

テキストアドベンチャー系列の中でも、今回でkeyブランドのゲームに初めて触れることとなりました。
(アニメ媒体なら『planetarian』シリーズにも触れてますが)

冬から春にかけてLeaf/AQUAPLUS作品に触れたのでなにかKey作品も触れてみたいという中で、noteを書くほどノベルやテキストアドベンチャーに浸かってから二度目の夏が来た。…これ以上の理由は不要です。

『ライザ3』『ナツノカナタ』と合わせ、今年の夏は夏らしいゲームに触れる年になりました。

本ゲームは恋愛アドベンチャー。そしてkeyといえば「泣きゲー」と言われるように、きっと泣かされたり感情を動かされることでしょう。恋愛よりもそんなファンタジーと感動を求めて買っていたり

本記事では、8つある個別ルートをクリアした段階での感想をまず記そうと思います。というのも、収集した情報だとグランドルートもあるそうじゃないですか。
となると、良くも悪くも個別ルートの感想が覆りそう…なら、この時点で先入観なしに書けばいいじゃない、というワケです。

記事が長ったらしくなるのも抑えられるし、全体を通した感想をグランド走破後に行うのも一興かな、と。こうすれば先を見たさに私の尻も叩けます
無印から5年、この作品も3年前の作品ということで、ネタバレには配慮せず進んでまいります。


ゲーム全体の所感

懐かしさがかおるゲームスタイル

主要キャラクターと顔合わせするプロローグを経て、マップセレクトでイベントをこなして島の人々との交流を深め、一定期間までに個別ルートに繋がる重要イベントを見て、各ルートを進めていく…とゲームとしてはオーソドックスな恋愛アドベンチャー。

▲マップセレクトという概念がとても久しい

とはいえ基本は目当てのヒロインのイベントを集中的に踏みまくるのみ。
結構排他的な条件なので並行攻略とか基本的にできないですね。

▲突然卓球ゲームが襲い掛かってきたりしますが(初回です)

各キャラクターはみんな濃く、いい人ばかりですごくあったかい気持ちになれますね。作中の人物からの扱いで暗い気持ちになることは皆無で、その面ではとても穏やか。

▲男友達も変な奴だがいいヤツです。…でも変な奴らだなあ

その上で、島民の交流を垣間見るものもあり、島の人たちの横の繋がりがしっかり描かれているのもよかった。
強いて言うなら…大人のネームドが少ないのがやっぱり寂しい、というところでしょうか。

プレイヤーと主人公が同調する音楽

key作品と言えば音楽の評価も良く耳にします。本格的にkeyサウンドに触れましたが、これまで評価されてきた理由も納得。

タイトル画面の「Summer Pockets」からして耳に残りますし、「Sea, You & Me」も夏の情感と郷愁をぎゅっと詰め込んだ幅広い展開が本当に素敵です。

▲プロローグ終わりは曲と地の文がしっかり記憶に残してくるんです

なによりも、羽依里がその時感じてる思いにプレイヤーを落とし込んでくる点を何より声を大にして言いたい。
各ヒロインのテーマは思いっきりギャルゲらしさでその人物の雰囲気とかを伝えてくれます。(蒼のテーマ「Other Side Blue」とか)
一方、疑念がわいたとき、無力感に苛まれたままヒロインの独白を聞くとき、一見無茶な自身の想いを行動に起こすとき―その時々の感情と情景に曲がちゃんと導いてくれました。

▲明るい空気から一転するとき、「眼差しの後ろ」などがスッとテンションを運びます。

いい曲ってだけじゃなく、シナリオの流れに自然に同調させる作品はそうそうないと思います。

余談ですが、いくつかの編曲者に普段アトリエシリーズでいい曲いっぱい聴かせてくださる柳川和樹氏のクレジットがあって個人的にテンション上がったりもしました。良かった曲についてはまた後編で触れたいです。

個別ルートの記録

さて、シナリオ面もとい個別ルートのお話。
この作品、完全無知シチュというわけではなく、知ってしまった事前情報はいくつかあるのです(グランドルートの存在など)。なので、大まかな攻略順ほぼ決めておりました。
8ルートすべて終えて振り返ると、個人的に世界観を楽しむのにほぼバッチリと言っていい選び方となったようです。

では、クリアした順に触れていきます。なお、進行度に応じてある要素が変化しますので、最初をAとしてB,Cの3段階に定義、そこから「Aのn周目」といったセーブデータの作り方も併記します。

1. 紬ルート(A1周目)

最初に開いたのは、自分探しをしている、小動物的な女の子の物語。一番幻想的な流れと縁遠いかな?とも思ったりしてました…が、ファンタジー全振りだった

▲静久も交えた三角関係…?と思ってたのですが、そんなことは全然なかった

神隠しという、他のルートだと逆に珍しい現象が核に据えられていることもあって、非常に印象的なシナリオでした。
運命を受け入れての別離の後、エピローグでの再会もすごくきれいな流れで良き。めちゃくちゃ初々しい恋愛しているのがただただ眩しかった…
ことあるごとにふと擬音語喋っちゃう子、可愛いです。

▲泣いてる姿を見るのが一番つらいのは紬だったり。本当につらそうな顔で泣くんだもの

2.うみルート(A1周目)

続けて触れたのがうみちゃんの物語。羽依里とともに加藤家にしばらく滞在する親戚仲間。主人公の妹系ポジだろうこと、バッドエンド救済みたいな分岐だったことを連想し、ここで触れておこうと思いました。
元水泳部としての羽依里にフィーチャーしつつさらに日常を掘り下げたような内容で、とても爽やか、晴れやかなシナリオです。

▲ここだと親子のような接し方になるうみちゃんと羽依里

このシナリオの中盤でうみちゃんを叱咤する羽依里のシーンはかなり上位に食い込む名場面。あれはカッコよかった。側に居るはずの親が居ないってちゃんとわかってあげてるんですよね。

▲掘り下げという意味ではこれも印象的。
天善がダメになっちまっただ…

完走した感想は…うん、うみちゃんの不思議さが増すだけだった。他のルートほど起伏がないんですよ。各ルートでのうみちゃんの行動を考えると、これグランド通してからもう一度触れるべきシナリオだろうと確信しております。

3.静久ルート(A2周目)

ここで再スタートした上で、紬ルートの裏と予想した静久のシナリオへ。最初の印象は…おっぱい以外に形容できなかった。追加シナリオってのもあり、ボリュームはどうだろう?という疑問もあった。
進んでみたら、思った以上に私の心に残り続け、個別ルートだと一番好き。

▲追加イベント・シナリオだと美希と静久は追加立ち絵がありますが、
その中でもこの笑顔に多分やられたと思う

紬と静久との3人での交流という点は変わりないのですが、静久の記憶と家族にフィーチャーしていく展開に。
キーとなる蝶の存在も目立ち始め、本格的に島の不思議に触れ始めるものとなりました。このルートは後でまた語ります。

4.鴎ルート(A2周目)

最初から羽依里に親しく絡んできたスーツケースの女の子。とにかく行動力があるなという印象。とうとう本人が島に居ない展開が待っていた。
出会いから「冒険」と「宝探し」に終始しているってのはとても良かった。
宝を探し、鴎の痕跡を探し、彼女の夢見た光景を追い求め…と羽依里のやることが一貫しているのが良い。

▲なにより、スチルとはいえ親世代のグラフィックがあるのが嬉しい
当方ちゃんと親世代も活躍してほしい派閥です

ツッコミとしては、エピローグで飾られるべき船で旅立ったっぽいのはいいのかそれで!となったなど。

▲海賊船にならなかった帆船は、10年で立派に立てなかった鴎の比喩と思った
海賊船が出来たことで、立てるようになるのかな

5.蒼ルート(B1周目)

脳内が煩悩で塗れた駄菓子屋の看板娘。羽依里とは軽口をたたき合ういい関係です。蝶が絡むことは知っていたので、島の秘密が明かされるだろうと思い、見事その通りだったルート。
静久の記憶や島に現れた鴎に関わっていた光る蝶=七影蝶に迫ることに。中盤のいいところで情報が開示されたのが良い塩梅。

▲なぜ羽依里に七影蝶が見えるのか。これもきっと、大事な伏線

突如存在が明かされた双子の姉にはちょっとびっくりしたのですが、
伏線めいたものがガッツリあって、結末はすごく予想しやすかった。

▲藍の性格、結構楽しい。クリア後ちゃっかり個別ボイス設定が生えていて笑った

また、ルート突入前後問わず、選択肢が非常に多かったのも特徴。
いたずらしたり照れ隠ししたり、いろんなやりとりがあることを表していたのかな、と。…バッドエンド、なかったよね…?(静久ルートのトラウマ)

6.美希ルート(B1周目)

見かける度に良一を撃ってばかりな印象もあるけど、羽依里含め島民のために積極的に気配りができるよい子。
蒼と美希は絡む機会も多かったので蒼の後に攻略することに。
いろんな物語を見てきましたが、さんざん見てきた日付変更時のアイキャッチに異変があった時の衝撃たるや。システム介入に近い演出はやはり目を惹きます。ここまで引っ張ってある意味良かった。

▲突然の制服良一に私の思考はフリーズした

どのルートでもすごくマジメかつ、目立った暗さもなかったがゆえに想定の遥か斜めを駆け抜けていったことは本当に驚きました。どうしてこうなった、という意外性では個別ルートNo.1と言っていいでしょう。

▲終盤からはきっちりと謎も明かされグッとくる場面もどんどん来たので安心

けれど、ルートを通して撒かれていった伏線がキレイにまとまり、エピローグに繋がった時、一気に感動がどっと押し寄せて感極まっていました。
あの終わり方がとても好き。
また、示唆されていた夏鳥の儀に参加する展開もここが初と、次のしろはルートに綺麗にパスを出せたかと。

7.しろはルート(B2周目)

初手どすこいのインパクトが凄かった物静かな女の子。パッケージヒロインは最後に攻めるべきと相場が決まっておりますので、トリ一歩手前での登板です。羽依里の過去にもっと触れるのかな、と思っていましたがしろは自身の謎に迫る側面の方が強かった。うんうんこれがパッケージヒロインだ。

▲そう来たかー。なるほどなーと首をぶんぶんしてました

それに、思ってたより少年団たちと関わる展開も多くて、仲間との交流という側面も強調されていたように思います。孤独でもなく、2人でもなく、多くの友だちに囲まれていく流れはいい救いにもなっているだろうな、と思うのです。

▲ウミホタルのくだりを終えてのこのセリフ。こういうの大好物です
▲良一の掘り下げもたっぷりで良き。でもここは大爆笑しました…

しかし、シナリオとしては多分グランドルートも込みで考えるべきなのだろうな、というのが素直な気持ち。告白も最後の最後だし、エピローグもは少々抑えめ。何より「時の編み人」なる概念だけポンと出されたのが大きい。触れ損ねた七影蝶の存在など残された伏線もあるので、ここはグランドルートの楽しみとしましょう。

▲そして突然描写されたうみちゃんの謎もありますし。
しろはとも何やら因縁があるのでしょう

8.識ルート(C1周目)

ラストは完全新規キャラの識。(なお、ホントはB2周目でルート突入データ作ってたけどもっかい根幹に動きがあったので作り直す羽目に)
出会った当初はひたすら泣きまくって腹をすかしてる子どもだなー、なんて思ってました。

無印時点でグランドルートで閉じてるだろう物語なので、そこに全く新しいキャラを投じるのはどうなのだろう?と思い、そうなると世界観の補完とかそういった意味合いもあると考え、パッケージヒロインの法則に違わずトリを務めてもらいました。

▲やっぱりそう来たかーそうだよなー

そして予想通り、過去から来た子でした。記憶を取り戻してからは年相応どころかどこか達観したような言葉遣いも出始め、羽依里と一緒に惹かれていった部分もあります。

▲線香花火と人生の話は純粋に聞き入りました

過去改変という扱いづらいだろうテーマ。救われた人が増えても一見島に変化がないのはやはり気になっちゃったかも。
識の意識ひとつで島全滅―という展開からはこうあってほしい、という流れになっていきました。

▲とはいえこんな結末になるとは思わなかった…
この一言に思わず私は天を仰いだ

世界観に更なる味付けをしつつ、無印からの人々に大きな影響を与えることなくまたひとつ心を揺さぶるシナリオが描かれていた、と思います。
夏鳥の儀の灯籠にも更なる意味が増えていたりしましたし、後味は悪くなく、いいシナリオでした。

▲そうして、このタイトル画面に辿り着きました。いよいよ。

個別ルート総括

という感じでざっと振り返ってすでに5000字オーバー。
あるルートで描かれたものが別のルートでカラクリがわかるなど、各ルートを遊んでいくことで見えるものもありました。

▲蒼ルートで見る大量の記憶はその典型例。
紬ルートの灯台守の顛末だけでなく、鴎やうみの親族らしき記憶も

気になったことと言えば…
識はともかく、鴎と紬&静久の、他ルートでの登場頻度がどうしても少ないこと。全ルート終わってみれば出自もあって納得はする(少年団メンバーではないのも大きい)のだけど、まあ関ってこないな、とは思っちゃいました。

▲その分、静久と紬主体だとかなり多くのキャラが関わり賑やか

あと、個別ルートでABCと定義していたものですが、これですよね。
それは、蒼ルートをクリアしたあとのこと。

▲ReSTART…だと…?

なんだこれはと思い、警戒しつつもスキップして進めると。

▲SKIP止まったんですけどー!?

そう、うみちゃんの人格(?)が変化した。しかも二度も。私が事前に知っていたのはグランドルートの存在くらいで、あちゃーと唸ったことをよく覚えています。呼称まで変わるし段階によってはじめて生える選択肢まであるからビックリ。ますます、重要キャラとして存在感を増していきました。

静久ルートは語りたい

で、後に回しました静久ルートについて。
紬ルートでの少年団からの反応やおっぱいの由来、紬との関係性など、様々な静久のバックボーンをきっちり描いて回収しつつ、静記憶欠落の問題は自力で解決したとも七影蝶の影響によるものだったともどちらも解釈できる流れとしたのがとにかくよかったのです。

▲根本にある母娘間の問題は、羽依里の支えもあって糸口を見出したのもよい

個人的な考えなのですが、現実的なものに不思議をちょっとトッピングしたファンタジーが好きなのです。
どう考えても七影蝶の力なしでは解釈できないのではなく、二通り以上の考え方を残してくれたところがより好きなんです。

▲実際のところ、静久に寄り添うミケネコ=猫の神様が、
蝶を通じて記憶を切り取っていたとは思う

そしてなにより、紬と静久の固い絆が改めて描かれた面も見逃せない。
紬ルートだと、「静久はどう思ってる?三角関係的には…」なんて思ってたのですが、それはもう浅はかな考えだった。

▲互いを想っての決死の叫びに、本当に胸が締め付けられた
…この時の選択肢、ちゃんと正解通せてホント良かった

そんでもって、紬ルートクライマックスで歌われた「紬の夏休み」の原典が「小鳥の結婚式」であり、それを活かしての三人だけの結婚式でインストを流す…それはもう鳥肌ですよ。最初からこれ考えてたの…?

▲単なる結婚式のやり直し以上にメタも活かした場面。感嘆した

それでいて、静久と羽依里の関係も、今にふさわしい距離感を見出し、一旦は別々の道へと進みます。母娘の歪な関係を解決するための適切な距離探しが、二人の恋にも影響するのです。流れが美しい。

▲トドメとばかりにプロローグの描写を持ってくるんだから震えました。
二人が共依存になるバッドでもこの二羽の表現が用いられているのも高ポイント

エピローグ、最後の一枚絵も紬ルートをクリアしたならば一瞬で意味を理解できるものとなっていて、今後の未来をしっかりと予見させてくれる素晴らしいものでした。

最初から最後まで、本当に流れが綺麗で、全ルート終えた今でもダントツで美しい物語でした。

▲余談。この一文にプロローグの選択肢のあまりの影響の大きさに
差分読破ニキは逆のため息をついたのだろうなと思ったなど

前編を終えて

ということで、個別ルートが終わった時点の感想は以上です。
ここまででも好きなポイントがいっぱいあり、世界観もだいぶ見えてきました。ここからはいよいよ様々なカラクリが紐解かれ、さらなるカタルシスが待っているのでしょう。
それではこのあたりで。再び鳥白島に行ってまいりたいと思います。

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