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【考察】スチームパンクの話

○前置き

 がっつり遊戯王MDの話ばっかり投稿してるnoteですが、書いてる人はSteamMewksを屋号に活動している創作家だったりします。
 先月19・20日に国際展示場で開催されたイベント、デザインフェスタ56にも出展させて頂いて、沢山の作品を購入頂いて来年度も活動を継続できる状態となりました。

 SteamMewksは主に「ヒトとドールのスチームパンク」を方針に装飾品や小物を取り扱っているのですが、現在割と致命的な弱点が一つあります。
 アングラ寄りの界隈、仮想ファンタジーの題材であるスチームパンクを取り扱っている以上は仕方ない部分ではあるのですが、日常的に使える装飾品が殆ど無いんですよ。これは装飾品を扱う場所としては致命的で、例えばどれだけ凝った作品を作れたとしてもイベント会場でしか使えなければ意味が無い、という話なんですね。

 今回、前回のデザインフェスタでこの辺の弱点が完全に露呈した形となりまして。そういう経緯があり、来年度以降の方針として「日常使いできるスチームパンク」の研究を進めていこうと思った次第です。

○「スチームパンクの日常」とは

 実は常日頃から世間一般の「スチームパンク」というものが、ただのコスプレ集団に見えて仕方ないんですよ。
 いや、世界観そのものは好きなのですが、例えば蒸気を使った稼働装置や補助器具、正体不明の力を使った魔法の装備、ゴテゴテとした機械。見るのは楽しいです。そういう装備を表現の一つとして使う創作家の方々を否定することもしないです。
 ただ、同様に「スチームパンク」をテーマに扱う者として、「その世界で生きる人間が本当に普段からそんなガチガチの装備を付けているのか」は疑問に思えて仕方ないんです。

 そういう事情もあってSteamMewksで取り扱うものは比較的軽量なデザインを心掛けていたのですが、重厚感溢れる方が格好良いのは全く否定できません。だって本当に格好良いし…。

 じゃあ逆に「本当に使ってそうな装備」ってどういうものなのか、という話。この切り口で活動している方が自分の周りにはほぼ全く見受けられなかったことから、ひょっとしてこの分野は未開拓なのではないか、と考えたんですね。

・横浜の郵船日本丸の見学

 ちょっとしたご縁がありまして、横浜に停泊している日本丸に見学に行ってきたのですが、ここで一つ知見を得ました。かつての航海士達が航海中の余暇として、古くなった縄を使ったロープワークや手芸を楽しんでいた、という史実の歴史が紹介されていたのです。
 これは現代ではマクラメ編みやアジアンノット等、様々な名前に代わってこそいるものの、ハンドメイドの先駆者と言っても過言では無いものです。

 これを見学しながら、ふと気付きました。スチームパンクの世界って、史実にも存在する蒸気船を始めとした大型の装置がよく登場するけど、これを動かす乗員達の趣味って何だろう、と。
 もちろん絵画や写真、様々なものも当然あると思います。ですが、より現実味を帯びた話をするのであれば持ち込める私物の制限などから、簡単に手に入るであろうアイテムが発展すると思いました。

 そこで目を付けたのが、ロープと石、それから歯車でした。

○スチームパンクの世界の装飾品

 スチームパンクの世界はメインジャンルが蒸気、サブジャンルに魔法が存在します。この魔法というものが何を指すかは色々と意見が分かれるところなのですが、スチームパンクの原典と呼ばれる作品の一つはアーサー王伝説が混じっていたりします。そして作中に「魔法使い」なるものが実際に登場します。
 SteamMewksは元々魔法寄りのスチームパンクを取り扱っていたのですが、「技術の高い人は制御の困難な代わりに自由度の高い蒸気機関」「練度の低い技師、あるいは一般人が扱う道具が一定の出力しか出せない魔法機関」と設定したうえで世界観を展開していました。

 で、この魔法というものがまたスチームパンク世界の創作を幅広いものにしており、その動力源に使われるものが宝石(ジェム)と設定されることが多かったりします。宝石にはさまざまな魔除け等の謂れがあるため、それを軸にかつての創作家達は考えたんだと思います。

 そんなありふれた道具である魔法の石と、古びたロープ、メンテナンス等で余った歯車、この三つを組み合わせれば史実の航海士達が行ってきた手芸を、スチームパンクの世界の手芸に置き換えることができるのではないかと考えました。

補足:アーサー王伝説とスチームパンク

 SteamMewksで取り扱う魔法寄りのスチームパンクというものは一部のスチームパンク過激派達には認められないものなのですが、原点としている世界観は存在します。
 スチームパンクのゴッドファーザーの一人、K・W・ジーター氏の“Morlock Night”こそアーサー王伝説とスチームパンクを繋ぐ作品なのですが、実はこの作品が生まれた背景には面白い話が繋がります。そしてこれを追求すると、泉の妖精やブリテンの物語の歴史まで言及する事になったりします。

 アーサー王伝説というものは、驚くことに実は一度「そんな歴史はなかった」と否定された事で滅びた物語だったりします。現在語られているアーサー王伝説というものは「史実ブリテンの物語に神秘性を持たせた物語」ではなく「否定されてしまった、ブリテンの神秘性を実は本当は存在したものとして吟遊詩人達がアーサー王伝説として語ったもの」に当たります。
 “Morlock Night”はそんな時代に生まれた「あり得たかもしれないアーサー王伝説」の一つであり、「スチームパンク世界のアーサー王伝説」と考えることもできる作品だったりするんですね。実際この作品にはアーサー王を甦らせようとするマーリンが登場したりと有名な顔ぶれが揃ってたりします。

 魔法寄りのスチームパンクはマジックパンクとの差別化が非常に難しいのですが、「魔術や魔力に語りの軸を置いているのがマジックパンク」、「あくまでもサブジャンルとして取り扱うものがスチームパンク」と考えています。

○そうして生まれたもの

 たくさんの試作品を作り、徐々に「現実寄りのスチームパンク」という表現が形を持ち始めた気がします。
 未開の地を踏む一人として、技術を広げていきたいものです。

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