Base Ball Bear鑑賞 - 『若者のゆくえ』

 なんだか久しぶりに文章を書きたくなりましたよ。今26歳で相変わらずサラリーマンやってるんですが、最近は色々なことがどんどん起こって、ほんの1年くらい前を思い出しても今の自分なんて全然想像できないですわ。
 この曲を聴いた中学3年生(?)の自分はもう12年くらい前になってしまって、そりゃもちろん今の自分のことなんか1mmも想像つかなかったでしょうね。でも今の自分から中学3年生のときの自分が感じていたことや考えていたことを思い出してみると割としっかり思い出せるし、あのときからもちろん変わったことは山ほどあるけど、細胞総とっかえされてるにも関わらず自分自身が継続している感覚は死ぬほどあるんですけどこれは一般的にどうなんですかね。そういうもんなのかどうなのか。
 自分が子どものころに見ていた大人たちにも子ども時代があったなんて想像もつかないですけど、きっとその大人たちも、今の自分と同じように過去の自分を思い出すこともあったんでしょうね。


 昔からひとりでどこかをフラフラするのが好きで、中学生とか高校生のときの休みの日には、ウォークマンで音楽聴きながら自転車でテキトーに地元をブラブラして一銭も使わずに飽きたら帰ってくるということをよくやってました。個人的に『若者のゆくえ』を聴いて思い出すのは、そんな感じでヤマダ電機の近くにある橋をママチャリで走っていた高校生のときの風景で、季節は秋寄りの夕方だった気がします。ちなみにその橋の近くの小さい方の川のそばの道を自転車で走っている感じを連想させるのは『short hair』です。ある曲によって、それを聴いていたときの風景とか季節感が連想されることはよくあるんですけど、その曲や連想される風景で共感を得られるのは自分自身だけなので残念です。


 歌詞を引用しながら見ていきますが、

青空を眺めては 説明できない気持ちをかざしてた
何もなくすべてがある日々に、さようなら
君に、おめでとう

 過去の自分を思い出しているような形式だと思いますが、この「何もなくすべてがある日々」っていうのが本当に良いですよね。今生きている日々が意味のあることばかりで社会の役に立つことばかりなのと比べて、若者がすごす日々には意味のないことばかりですけど、そこに大人になった我々が求める自分らしさのすべてがあるような、そんな風に捉えてます。ちなみにアルバム『光源』以降はそのことを「マテリアルな」と表現してますね。
 プロデューサー玉井健二とのアルバム『十七歳』での制作を、小出はよく「名前のなかった感覚に論理だてて名前をつけていく作業」のような表現をしています。正確な言葉選びはすぐには出てこないですけど。この『若者のゆくえ』が作曲されたのはアルバム『十七歳』のプロモーションをしていた頃で、当時キャリア唯一の「降りてきた曲」と小出自身はブログでつづっていましたが、『十七歳』をやっと作り終わったというタイミングで、「何もなくすべてがある」という表現で、そういう観念を掴んでいたんですね。
 そんな日々に「さようなら」ですし、「君に、おめでとう」なんで、「マテリアルな」日々や青春っぽい感じから変化をしていくという姿勢がここにも表れているのではないかと思います。でもこの卒業ソングっぽい曲調のせいもあるかもですが、あくまでも過去の青春っぽい日々を大事に振り返るような、そんな印象がありますね。

いつの日か報われる時が来るのだろうか?
想う 旅立ちの朝 「ひとりぼっち」は素晴らしい意味だ
さぁ これから何処へ行こう
一人でさ
若者のゆく先に光あれ

 ここも好きなとこですね、みんなそうだと思うんですが。小出自身が過去の自分を救ってあげるような曲だと思っているんですけど、それによって救われた何人もの「ひとりぼっち」なBoys&Girlsがいると思うんですよ。代表して感謝申し上げます。小出にとって高校時代はリア充的な意味で充実していたこともあったと思うんですが、一方で「ひとりぼっち」の日々やめちゃくちゃ暗い記憶がだいぶ大きなものだと思います。でも小出がそんな自身の過去を承認してあげていてくれて、それもファン的には嬉しいことです。そしてもちろん「ひとりぼっち」人間としても大変救われるよね。
 そしてこの、「光あれ」っていう表現が僕は大好きです。良いとも悪いとも決めつけない感じというか、成功とか失敗とかとはまた別の次元の感覚というか、そういう印象を受けます。高い収入を得るとか成功を掴むとか何かに勝つとか、もしそういう類の栄光が「ゆく先」に無くても、それでも何か喜ばしいものに近づけそうなそういう感じです。
 どこに行くかは分からないくらいが希望がありますし、これは単純に僕の性格というか考え方の傾向なだけかもですが、どこに行くにもそれは究極的には「一人で」行くものじゃないかと思います。現在不自由で息苦しいことばかりの日々だけど、そんなアタクシにも光あれ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?