CITY DANCE(1stミニアルバム《GIRL FRIEND》③)

noteに移行したタイミングで曲順の縛りをなくしたので、せっかくなら大ジャンプして古めの曲の考察をしてみようと思いました。


収録曲が4曲だけだし、アルバムタイトルがリード曲と同じなのでミニアルバムとしてはあまり認識されにくい《GIRL FRIEND》ですけど、1stアルバム《C》の凝縮版みたいなものだと思います。《C》の完成までの電波塔ジャケット時代はベボベもメジャーデビューしたてで東京のバンドとしてやっていくぞっていう感じで、アルバムタイトルのCというのも〈City〉〈she〉〈sea〉〈死〉とかいくつか意味が込められてますよね。


とかまあ色々ありますけど、今回は《CITY DANCE》。この曲を通してベボベにおける〈City〉とは何なのかを探っていきたいですけど、その前にサウンド面から。XTC要素の最も強い曲ですね。サビのメロディはまんまXTCの《Respectable Street》(1980)。音作りもシャキシャキしたギターに隙間をうまく作るベースがまさにXTCのそれですね。なんとも粘っこくて煮え切らない、気持ちがいいようで気持ち悪い、でもクセになる湯浅ギターのフレーズも好き。全体ではポップで馴染みやすいしっくりくるサウンドに、ドロっとした気持ち悪さを仕込む、メジャーデビュー直後のこの毒のある感じ堪らないですね。

歌詞もいいですよね出だしから。
空を飲み込む都市は今、桜色
空見上げてただ堪える人がいる

いくつものCのうち、この曲は曲名通り〈City〉要素が中心かなと。その都市(まち)というのは空をも飲み込む恐ろしいほど大きな流れですね。でも恐ろしさだけではなくポップな桜色で、まさに毒のある感じと親しみやすさの象徴ですよね。


これもまさにベボベにおける大きなテーマですけど、要するに〈City〉とは言い換えれば〈ポップ〉ってことなんじゃないかと思います。ということは、〈she〉&〈City〉⊂〈LOVE〉&〈POP〉ってことじゃないかと。sheだけがLOVEじゃないし、CityだけがPOPでもないと思うので、イコールではなくて、でも1つの一般項のようなものですね。こういう作品と作品との繋がりを発見できるの最高だなあ。そしてそのポップバンドの最高峰であるXTCのフレーズの引用ですよ。天才かと。


ここでもう少し歌詞を見ていきましょう。
摩天楼の背伸び 浸みていく影法師
溺れた人魚たち 四角い青空
涙ぐんだ景色 桜色の飛沫

この並列、なんか元ネタありそうな雰囲気ありますけどちょっと僕は知識不足でして。でも「摩天楼(東京タワー?)」や都市に飲み込まれた「四角い青空」の前に、一人ひとりの影法師(人間性の輪郭みたいなもの)は滲んで人魚は溺れ、そんな個人たちを喰らって都市は綺麗な「桜色の飛沫」を上げる、って感じですかね。都市とは強大で恐ろしいシステムですけど、そんな大衆がクソだと言うわけでもなく、そこにはまた一つの美学があるわけです。これも都市とポップの共通項ですね。似たようなことを《こぼさないでshadow》の考察で書いた気がします。


空を飲み込む都市は今、桜色
染まりゆく君の中心、見届ける

そんな都市の強大さや恐ろしさと、美しさや親しみやすさがありまして、そして今ふたたび「君」という個人にフォーカスを合わせるという最後の歌詞だと思います。

といった具合で、《CITY DANCE》という曲を通してベボベにおける〈City〉について考えてみました。小出のいう「東京のバンドとしてやっていく」というのは、単に自分たちの戦場もしくはテリトリーを決めることだけではなく、東京という〈City〉について研究して表現する、ということなんじゃないかと思いました。

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