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小林紀晴 ASIAN JAPANESE

その昔、カルチャーまわりのトレンドがほぼ届かない地方の高校生にとって、紙の本は主たる情報源でした。お気に入りのあの雑誌をゲットするため、週一度は必ず行く場所であった本屋さんですが、あまり魅力的な空間ではありませんでした。

同じような書棚にカタめの内装、無味無臭の空気感、会話も押し殺さなければいけないような暗黙の圧が常に背中にささる感覚。"人が少ない田舎の本屋"を冷徹に誇張するとこんな感じ。

そんな感触のまま実家を離れ、進学した街でふらっと訪れたヴィレッジヴァンガード。当時は今よりもエグみのある本がたくさんあったように感じます。いわゆる"フツウ"ではないごく少数の濃いめな物語が、空間としてアーカイヴされている痛快なその場所にその後もしばらく食らい続けました。

とりわけよく食らったのが紀行文、バックパッカーの棚。オフライン時代のバックパッカーとは、平たく言えばリアルFFやドラクエをするようなもの。ワンルームに紀行文の書籍が増殖していき、ある日、ついにリアルRPGの世界に飛び込んだ良い思い出があります。

大学を卒業して数ヶ月、わりと気合の入ったメディア関連の断捨離&デジタル移行を敢行。CDはPCへ、書籍は処分するか思い入れのあるものは電子版で買い直す。質量のあるメディアを出来るだけデータ化して身軽に。

そんなイベントを経ても、手放されることも電子版に置き換わる事もなく、今も部屋に置いているちょっと特別なシリーズ。

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