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ひとりでホテルに泊まってみたら、「私」が戻ってきた。

ひとりでホテルに泊まった。
騒がしい日常から逃れ、助けを求めるようにホテルに駆け込んだ。
静寂と有り余る時間の中、ひとりでホテルで過ごした時間は、私に安らぎと経験と明日への力をもたらした。

ひとりでホテルに泊まることになった経緯

世の中にひとり○○と言われるものはたくさんある。ひとりが平気でいつもひとりでいることの方が多かったので、今まで様々なひとり○○にトライしてきた。その中でも、ひとりホテルステイは個人的にかなりハードル高く感じていた。それはホテルのスタッフの方からどう見られるかとか、予算的なこととかも無いわけではなかったが、最大の理由はホテルの部屋でひとりで大きなベッドを見つめたら、寂しさに襲われるような気しかしなかったから。そうなる瞬間を容易に想像できてしまい、怖かったから。

でもホテル自体は好きだった。だからホテルや旅館を紹介しているお出かけ系のSNSアカウントは日頃からチェックしていて、それらで様々なホテルの写真を見るのはすごく好きな時間だった。ホテル関連のアカウントやハッシュタグを追っているうちに、ひとりでホテルに泊まっている人や旅行のついでではなくホテル自体を目的として行っている人の投稿を見かけるようになった。
それまで誰かと一緒じゃなきゃ、観光地などの目的がなきゃ行くことができないと思っていたホテルが急に身近なものに思えてきて、ひとりでホテルに泊まりにいくことが叶えたいことの一つになった。

チェックイン

恥ずかしながら、今回の宿泊まで私はチェックイン前にホテルに荷物を預けられるということをよく知らなかった。
今までホテルに泊まったときを思い返すと、家族や友達とまず目的の場所で遊んだりし、その後チェックインの時刻にホテルに向かうことばかりだった。
今回は先にホテル付近とは別の場所に目的があったので、事前にホテルのホームページで荷物を預けられるか確認はしていたものの、実際にホテルのフロントでスタッフの方に慣れた様子で荷物預かりの手続きをしてもらったときは、内心ちょっとした感動を覚えていた。

しかし、感動はこれだけでは終わらなかった。

再び今度はチェックインのためにフロントを訪れると、今朝荷物預かりの手続きをしてくれたスタッフの方がおり、ちゃんと自分の顔を覚えていた。その人が私に向ける笑顔が何よりの証拠だった。
ホテル側からすればそれくらい当たり前のホスピタリティなのかもしれない。それなりの宿泊料だって払っている。
そんなことわかっているけど、嬉しかった。
こういうおもてなしを受けるたびに、ホテルという空間とそこで過ごす時間に愛おしさを感じ、普段の仕事や生活への刺激・モチベーションに繋がる。

事前に気をつけてよかったこと

今回の宿泊では貸出用が用意されている館内備品をいくつか利用した。極力荷物を最小限にしてトートバッグにまとめられるくらいにしたかったので非常に助かった。今まで備品を借りることになんとなく引け目を感じていたが、気付くと荷物が大量になりカバンがすぐパンパンになるタイプなので、荷物が減らせるなら今後どんどん活用していこうと思った。

また事前にチェックしていたホテルステイ慣れしているインフルエンサーの方の情報にもあったが、もし眺望や内装などで部屋にリクエストがあるなら予約の時点で必ず言った方がいい。
今回泊まったホテルは様々な色の部屋があることが特徴のホテルだったので希望の色をリクエストしたところ、無事リクエスト通りの部屋を用意してもらえた。

部屋での時間

部屋はツインルームだったが、読みたい本を持って行ったし、いつでもnoteの記事が書けるように携帯用のキーボードも持って行ったし、更には部屋のテレビにNetflixやAmazonプライムなども入っていたのでゆっくり映画を見て過ごすこともできて、全く退屈しなかった。

二年前、出張で急遽会社に取ってもらった部屋がツインルームで、その出張で女子が自分しかいなかったため一人でツインルームを使うことになったことがあった。ツインベッドとその脇に置いてあったホテルウェディングの案内POPを見てひとり寂しさに襲われたあの日を思えば大進歩だ。

それにしても、ホテルのふかふかのベッドってなんであんなにも幸せな気持ちになるのだろう。純白の寝具に包まれて自分の体がただ沈んでいくあの感覚は、何にも変え難い幸福感に満ち溢れている。

ゆっくり湯船につかれたらいいなぁと思っていたら、お風呂がプールに入った後に使うようなシャワールームしかなくて拍子抜けしそうになった。扉がガラス張りだったのでなんとかお洒落さでカバーできてはいたものの、冬に泊まるのはちょっと考えものだな、など思ってしまった。これからホテルを探すとき、特に冬などお風呂に重きを置きたいときにはお風呂を重点的にチェックする必要があるとまた一つ学んだ。

朝食

これまでのホテルでの朝食といえば、たいてい家族や友達とビュッフェなどに行くのが普通だったので、今回朝食を付けるかどうかはかなり迷った。朝食を付けるかどうかで宿泊料金はかなり変わる。
ただ今回泊まったホテルは有名ホテルや最近のお洒落なカジュアルホテルには多い、泊まらなくても使えるカフェがあるところだったので、せっかくならと思い朝食付きにした。
予約時点ではカフェで食べることを想定していたが、カフェに行くと部屋への持ち込みもできるとわかり、部屋の方がリラックスできるかなと思ったので結局部屋で食べた。

これが想像を絶するほど快適だった。人目を気にせずごはんの写真をたくさん撮ったり、ホテルのルームウェアを着て好きな映像など見ながらゆっくり味わえる。

朝食や料理が売りのところなら朝食付きにして、そうでないなら前日に買い込んでおいて、部屋でゆっくり食べるというのが今のところホテル朝食の個人的最適解となった。

チェックアウト、そして現実へ

チェックアウトの時間が迫ってきた。十数時間で広げた荷物を一つ一つ片付ける。その度にまた現実に戻るということをいちいち痛感させられ、寂しさが募った。たった十数時間だったけど、宿泊する前からは予想もつかないくらい癒された時間だった。去り際には、過ごした部屋に「ありがとう」と言葉をかけずにはいられないほどだった。

今回の宿泊はチェックアウトまで全てが清々しかった。
ひとりで過ごす寂しさなど、微塵も感じなかった。

本当は自分の仕事じゃないのに、自分がやらなきゃ回らないからやっている仕事。
ただ仕事がうまく運ぶように自分の気持ちを無にする瞬間。
いつでもどこでも追ってくる仕事の連絡。

そういうものは、仕事だからしょうがないと思っていた。お給料が発生している以上我慢すべきものなんだと思っていた。
でもこういうことを「仕事だから」と我慢して、コロナで会いたい人に会えない寂しさも我慢して、そしたら私の気持ちはどうなるの?どこにも行き場のないまま、誰にも見られないようにゴミ箱に捨てるしかないの?

そんな風に腐ってドロドロになっていた気持ちを、ホテルステイはきれいさっぱり洗い流してくれた。気持ちの良い時間が、明日へ進むためのエネルギーとキャパをくれた。

ホテルステイをして本当によかった。ホテルステイは私が私に戻るために必要な時間だった。余裕がなくなって私が私でなくなりそうになったら、またホテルステイしよう。

私のことをよくわかっていて今一番喜ばせられるのは、紛れもなく私だけなんだから。

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