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短歌集 左の頸動脈にあります

神様に会ったらどんな食べ物が好きですかって聞いてあげたい

静かだね春の光に祈られてあなたの吐息眠りたそうに

信じ合うことをやめない信じ抜くことを誓うよ私は強く

窓が開く季節がここで混じり合うひとりぼっちじゃないと笑おう

できるだけ悲しむことがないように苦しいことが消えますように

言い聞かすそこがどんなに苦しくて辛いとしてもひとりよりいい

ナイアガラ逃げて走って擦りむいて涙と鼻でもうぐちゃぐちゃだ

幸せになるため生まれてきたのだと信じることに決めたんだ、だろ?

私には私の苦しみあなたにはあなたの苦しみどちらも大事

幸せは他の誰かと比べたら恥ずかしがって隠れちゃうのよ

不思議だね自分の名前忘れても私のことを覚えているの?

苦しみ分かち合おうと残酷な言葉それでも私は言うの

なぜ君は未来の話をするんだい?明日を信じてみたいんだまた

へその緒を切られたせいだ母親に愛されたいと思ってしまう

雪解けを始めることにした僕の心に降り注ぐ甘い雨

あんなにも頑張らなくてよかったと思えるくらい強く生きたい

マフラーを巻いてもらったぬくもりが私の手からまた紡がれる

燃えてますきっと魂なのでしょう頬を焦がして伝っています

みんなみんな走って迎えに行くんだよもうすぐそこで春が弾ける

足跡を波がさらって行きました涙の跡も海へ溶けます

ヘンゼルのアイスクリームふわふわのキャンディーでできた綿菓子の雲

未来から声が聞こえてくれたならいいな私は大丈夫って

間に合ってよかったこんな愛おしい首にロープは似合わないから

人生を悔やんだことはないけれど嘆きたいほどむちゃくちゃなんだ

真っ直ぐに嫌いになれればこんなにも切ない花は咲かないでしょう

死んでまで生きたくないと思うのは当然だって僕は思うよ

きれいごとだよね命を大切にしろってだけど生きて欲しいよ

込み上げる心はまるで旋律のようだとあなたを見てると思う

ダメダメと自分に言って聞かせるとダメな自分になってしまうよ

君はまだ生きているので幸せになれよ死ぬまでちゃんと生きろよ

恨まない私は過去を運命を大好きだった人たちのこと

誰ひとり欠けては生きていけぬのだ反吐が出るほど嫌な人さえ

もう二度と生まれてきたくないほどに苦しんだ もう幸せになれ

まだ僕は生き返るのが怖かった死にたいともう思いたくない

会いに行くそう決めたからぼくたちは手足を生やし目を持ったのだ

魂の出し入れをする引き出しは左の頸動脈にあります

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