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短歌

死にたいとあなたが思っているのならそんな世界が間違いなんだ

手探りで一歩一歩を確かめる闇を切り裂くナイフを持って

この瞬間今この瞬間誰よりも私は悲しいに違いない

どうせまた居場所をなくす夢を見る だけど明日はその先だった

あなたから歩幅を合わせてもらったら恋はどれだけ幸せでしょう

胸ひらく 痛みはいつもここにある 愛して欲しかったと叫べない

ゆっくりと折れた翼をたたむとき誰かの顔を思い出せない

なあお前あの時死のうとしてただろ俺が現れてなかったら

よく目から涙を流す愛だった世界で一番大切だった

海は街 空はあそこに見えるだろ早くここまで来いよのらねこ

なぁ空よ悲しいだろう苦しくて誰にも代われない運命が

悲しみよ一緒に行こう 君もまた私の大事な一部なんだよ

この家を出て行きなさいと泣きながら夜道を歩く母親とふたり

雨音を過去を孤独に打ち込んで僕を再生し直してくれ

哀しみがようやくぼくに追いついた 光の毛布かけてあげよう

大空を見上げたぼくのほっぺたに小さな雨粒が着地する

生きていくことが悲しいことならばぼくは生まれてこなかっただろう

君が死ぬことより君が死を選ぶことが悲しくて仕方ない

ちぎれそな命の糸を引っ張って何万回の玉結びする

生きてたらいいことあるって嘘だけど生きててよかったと君が笑う

永遠にお前ら傷つけ合ってなよ死ぬまできっと暇はしないぜ

作りたい君の心の合鍵をいつかでいいから僕にくれるか

大丈夫不安な気持ちがきっとまた明日を迎えに行ってくれるよ

雪解けた水の気持ちで部屋を出る春が来たのは確かみたいだ

変わりゆく未来ほんとはこのままでいたい私を連れて行ってよ

苦しいがもうさよならだ若草のように愛して欲しかった人

星が見える間違いなく今僕は今きちんと上を向いて生きてる

なんて空が綺麗なんだと気づいたら途端に誰かに会いたくなった

生きているように見えていた蜘蛛が死んでいたのだと知った今朝

新鮮な夢の世界でもう二度と会えない人とバカ笑いする

幸せになって欲しいと言いながらなんでナイフを振り下ろすんだ

蝉の声 草の熱気でむせかえる殻の中から夏が始まる

孤独さや痛みにさえも愛着が湧いた わたしを置いてかないで

もうちょっと眠っていたい夢でしか会えない人の優しい匂い

台風に捨てて行かれた湿り気がぽんつりベッドに染み込んでいく

クリップで留めておくには優しくて捨てるにしてはぎこちなかった

死ぬときに心は飛んでゆくのかな ちゃんと大人になれるのかなあ

揺らがないものを探しているのなら安心しろよ必ず死ぬぜ

寂しくて痛くてとても寂しくてだけれど恋はしたくなかった

ヒーローは世界に一人だけでいい私の小さな世界に一人

ぁーこわい信じることがこんなにも怖いことだと思わなかった  

待っている時間は長い 生きていく覚悟をすると少し足りない

蝉の中生きていたいと大声で泣いた私は大嘘つきだ

ダメだとか思わないでよ いつだって僕はあなたのそばにいるのに

不安だよ だからねたぶんこの道できっと合ってると思うんだ

健全と呼ばれる人が本当に世界に存在しているのかな

新しい命が生まれてくることを喜ぶ人に私はなりたい

人生は真冬のやうであったけど雪が降るのが好きだったのだ

好きだった人の部活を思い出す 何がそんなによかったのだろ

まぁいっか何も最後に無くっても骨になったらいいだけじゃんね

珍しくでしゃばってきたカーテンと風の可視化について語らう

君じゃなきゃダメと思った瞬間に君は私の友達見てる

紅芋のタルト あなたの真っ白なトートバッグを思い出したわ

生きるのが悲しいんじゃない死ねないと知っているのが悲しいんだよ

うるせえな黙って死ねと乱暴に言って何回自分を責めた

迷惑な未来が待っていようとも関係ないと笑ってやるさ

やさしさと孤独がうすく降り積もる砂漠のようなベッドの上に

雨粒のひとつひとつを手に取って大事に大事に降ろしてやりたい

あなたから許されるべき普通って一体何か教えてごらん

浮き沈み光って弾け静止する無声映画のような心だ

意味ばかり求めていては人生がつまらなくなるだけだと思う

死ぬことが怖いか?ううんそれよりも死ぬまで苦しむことが怖いよ

幸福よ怖いだろうがもう一度自分の羽で飛んでゆくのだ

いずれまた僕は命を吹き返す 打ち上げられた鯨みたいに

最初から負けを認めて土俵から降りる勇気が君にはあるか

水鳥が冬に向かって飛んでくわ戻ってこなくても見送るわ

飛んでいる羽根を一枚なくしても撃墜するまでの絶景を

いつどこでどんな形で別れても貴方のことで淋しいだろう

甘夏のシェイク あなたの味がした 幸せだったっけ私たち

もう死んでいるから痛くないなんて嘘をつかなくていいんだよ

つまづいて転けたがそこには何もなく立ちあがろうとも思わなかった

透明な庭にクラゲが迷い込む 今夜もきっと眠れぬだろう

優しさは誰かのためにあったので寂しいだとか言えるわけない

紫陽花の悲しみは紫陽花にしか分からないから大嫌いだな

あなたには生きる力があるんだと誰かに信じてもらいたかった

雨は降れ涙は枯れろ誰からもこの感情も奪い取れない

失敗も不安も嘘も絶望も避けられないからもう悩まない

傷つかぬことはできない傷ついたことをなかったことにもできない

悲しみに名前をつける そうやって僕の一部になっていくんだ

こんな日も人生だったと言える日がいつかほんとに来るんだろうか

信じれる人がいないと嘆くけど自分を信じていないじゃないか

切なくて暗くて遠く寂しくて怒鳴りたかった 孤独が刺さる

死に方を選べるという錯覚が人を生かしているかもしれない

すぐ人を見下す胸を撫で下ろし傷ついたのは自分だったな

道端に落ちてるごみを拾ったら私のような顔をしていた

親指の爪が剥がれたこと以外何も起こらなかった夏です

夕暮れが突然わたしの前にきてごめんなさいと泣いて謝る

正しさを押し付けないであなたより悲しくなくては泣いちゃいけない?

命から解放しろと魂が拳を振り上げて泣いている

繊細で傷つきやすく折れやすい 花なら死ぬまで大事にされた

今すぐに死んでもいいが痛いなら明日でいいか的な生き方

簡単に言葉になってたまるかよ苦しいなんてお前にも分かる

父親を殺さなかったことだけを一番褒めて欲しかった父に

母親が卵を割った この音はいつかは消えてなくなる味だ

もし全て君のせいだと思うなら他人を信じていないからだよ

死なないで生きていけたらいいよねと君が言うから笑ってしまう

私より悲しくなくて私より泣くのが上手い人の勝利だ

ねえちょっと散歩に出ない?ちょうど今小雨が降ってきたみたいなの

せめていつか君が安心して泣ける人の隣に居ますように

夢じゃなきゃあなたに会えないだなんてそんなのあんまりだと思わない?

月の影 最終列車の停まる音 ホームに立った君の脊椎

死にたいと言えぬ理性が確実にぼくの心を蝕んでいる


#創作大賞2023 #オールカテゴリ部門

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