鉄筆堂

うつし世はゆめ よるの夢こそまこと (江戸川乱歩)

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うつし世はゆめ よるの夢こそまこと (江戸川乱歩)

マガジン

  • 【英訳】侏儒の言葉

    本稿は芥川龍之介『侏儒の言葉』を英訳してみようという、連続企画です。もともと日本文学の作品を英語やドイツ語などの外国語で読みなおすのが好きだったのですが、芥川龍之介でいちばんお気に入りのこの作品には翻訳が見当たらなかったのがこの企画を思い立ったきっかけです。底本には芥川龍之介『侏儒の言葉』(1968、岩波文庫)を使用しています。

  • 夢日記

    寝起きにうすぼんやりと記憶に残っている夢の記録。夢の記録ですから、何の脈絡もないように思われる記事ばかりでしょう。そこでは、うつし世とは異なる奇妙な論理がはたらいているようです。

  • ノンジャンル

    表題の通り、さまざまなジャンルの文章です。

  • 読書記録

    書物の海についた小さな足跡の記録。本屋さんで見つけた本の紹介や、読み終わった本の感想文が置かれています。

  • 怪談

    創作怪談置き場です。そのほとんどは、読者を怖がらせることを意図した模造品の怪異ですが、事実の一端を伝えるものも混入しているかもしれません。

最近の記事

【英訳】侏儒の言葉28:ユウトピア

Utopia Basically, the reason why a perfect utopia never comes into being is just as follows - there cannot exist a perfect utopia unless humanity changes itself; if humanity does change, what you once regarded as a flawless utopia may at o

    • 【夢日記】空蝉

      外国に旅行に来てゐる。 穏やかな波の音。 燦々と降り注ぐ陽の光。 空気は暖かく、まとわりつくやうな湿気を感ずる。 たぶん、東南亜細亜あたりだらう。 むかし、一度旅行で行つたことがある。 何処かからラヂオ語学講座の音声が聞こえてくる。 「それではみなさんも発音してみませう。 ‘mazerunda’ ー ハイ、もう一度。 ‘mazerunda’ ー この動詞は日本人の私たちには覚え易いですね。偶然にも『混ぜる』と云ふ意味の動詞なのですから。次はこの動詞の活用形を見ていくこ

      • 【英訳】侏儒の言葉27:敵意

        Hostility There is no difference between cold and hostility: they both feel pleasant as long as we are exposed to them to just the right extent; and they are both absolutely necessary for anyone to stay healthy.

        • 【英訳】侏儒の言葉26:輿論

          The Public Opinion The public opinion is always a form of lynching, and lynching is always a form of entertainment, even though it uses newspaper articles instead of pistols.   Or, The public opinion is worth existing simply because it i

        【英訳】侏儒の言葉28:ユウトピア

        マガジン

        • 【英訳】侏儒の言葉
          28本
        • 夢日記
          73本
        • ノンジャンル
          8本
        • 読書記録
          15本
        • 怪談
          5本
        • 断片的翻訳
          3本

        記事

          【夢日記】謝恩会と淀んだ海水の臭い

          ぼくは卒業制作として、短い動画を十本ほど創作し終えている。われながら、なかなか良い出来だと思う。どちらかと云えばモダンアートみたような仕上がりで、丁度、抽象画の画風はそのままに動画に仕立てたような作風である。兎に角、これまでにない会心の出来栄えであって味わったことのないほどの充実感を覚える。 そのとき、講師が教室に這入って来て、これから謝恩会(?)にみんなで出かけるのだと云う。講師によれば洒落たカッフェかレストランか、そんなような処で立食形式のパーティーをするのだとか云うこ

          【夢日記】謝恩会と淀んだ海水の臭い

          【夢日記】仏像と料理コンテストと他人の顔

          しんしんと雪が降っている。 周囲は色とりどりの着物姿の若い娘だの洋装した紳士だのでごった返しており、ぼくは雪を踏みしめて歩いている。新年を寿ぐ言葉も聞こえないことはないが、ぐるりの人びとはドウモ何かの催し物に向かっているようである。 群衆が鉄道の駅に向かっているのが段々と了解せられてくる。果たして、いつの間にかぼくの眼前には無闇大きな木造の駅が聳え立っている。ふと辺りを見ると、めかし込んだモダアンな男女ばかりでなく、丸眼鏡に詰め襟の学生服姿の連中も目立つようになってくる。

          【夢日記】仏像と料理コンテストと他人の顔

          【夢日記】或る葬儀

          母方の曾祖母の葬儀に参列する。 ぼくは喪服を着て、リムジンに乗り斎場に向かっている。車内には何人か、三十代、四十代恰好の男女が乗り合わせている。たぶん、イトコであるとか、長いこと顔を見ていない親戚連中なのだが、誰ひとり判然としない。マア、曾祖母の前回の葬儀から二十年位は経っているのだから仕方がない。一同、押し黙ったまま、車が進んで行く。 斎場に到着したので、黒塗りのリムジンから降車。暗く、雨が降っている。斎場まで延びる赤絨毯を踏みしめる。 斎場には、ぼくが以前勤めていた

          【夢日記】或る葬儀

          【夢日記】青い夜

          大学生くらいの若い女性二人と飲んでいる。 ここは二人のうちどちらかの女性の部屋である。ぼくは二人とは仲の良い友人なのだが、誰だったか、不思議とモウひとつ思い出すことができない。 ぼくは部屋にあるリキュウルや果実なぞを材料にして、彼女たちにコクテイルをせっせとこしらえている。 青のリキュウルを入れたロングのコクテイルが出来上がったので、一方に渡す。 「ありがとう」 そう云って彼女は酒を受け取り少しずつ飲んでいく。 けれども、その様子がドウモおかしいのである。 青いリ

          【夢日記】青い夜

          【夢日記】下降

          気がつけば、ぼくの手にはロープが握られている。 そのまたロープには大振りな桶みたようなものが括りつけられてある。 桶のなかには、たぶん一歳くらいだろう、小さな赤子が入っている。 どこの子かは知らない。 男の子か女の子かさえ遠くてよくわからぬ。 ここは、新宿かどこかの古い高層ビル。 見覚えはあるのだけれども、どこなのかは判然としない。 螺旋状の階段を登り切った、一番上の階にぼくは居て、ロープを握っている。 そこの手すりかなにかから、ロープは螺旋階段の渦巻きの真ん中を、

          【夢日記】下降

          【夢日記】濁り水の底に沈むもの

          部屋の床はざぶざぶと水に浸つてゐる。何処かで水でも漏れてゐるのかしらん。 僅かに滑る濁つた水にくるぶしの辺りまで浸しながら、僕は部屋のなかを歩きまはる。そもそも如何して自分が此処にゐるものやらとんと見当もつかぬ。 ともかく其処は奇妙な部屋である。 一面水浸しになつてゐて、彼方此方に小さな石像のやうなものが水面から覗いてゐる。 ー 違ふ。あれはただの像ではない。地蔵?確かに地蔵にも似てゐるやうだが、其れにしては何だか妙である。二頭身くらいしかない其像は薄気味悪い微笑を湛

          【夢日記】濁り水の底に沈むもの

          【英訳】侏儒の言葉25:醜聞

          Scandals  The public loves scandals. Those of Byakuren, Arishima, Mushanokoji - How much pleasure the public has found in these! Then, why do people love scandals, especially those of others whose names are known as celebrities? Gourmont s

          【英訳】侏儒の言葉25:醜聞

          【雑記】浪漫とは何か

          本なぞ読んでゐると、時折「浪漫」なる概念に出会ふ事がある。最近も本を読んだり、文を草するときに「浪漫」に度々出会つた事から、此機会に少しく考へてみようといふことになつたので、此処に備忘録的に記しておく。 僕は言葉をよく知らぬものだから、改めて手許の字引を繰ると「感情的・理想的に物事をとらへること。夢や冒険などへの強いあこがれをもつこと…云々」(デジタル大辞泉)と書かれてある。すなはち、此は哲学者の希求するが如き論理だの理性だのといつたものは一旦脇に置いて、感情や理想に身を委

          【雑記】浪漫とは何か

          【英訳】侏儒の言葉24: 地獄

          The Inferno Life is still more hellish than the hell itself. The torment that the inferno imposes on you has never violated its regular laws. For example, the agony you would suffer in the realm of hungry ghosts is like your meal burns in

          【英訳】侏儒の言葉24: 地獄

          【夢日記】滅びゆく図書館

          其処は豪奢なる、天井の高い建物である。一階奥の閲覧室にはシャンデリアなぞが吊つてあつて、ひとが優に十人も十五人も並んで立つてゐることのできさうな眼前の広い階段には、赤い絨毯が敷かれてある。 都に位置する図書館では、既に鬼籍に這入つた沢山の作家だの、詩人だの、思想家だのと云つた連中の思考が、書架に累々とその軀をば陳列せられてゐる。 僕はかういふ思考の墓場を愛してやまぬ者の一人である。静かで、冷たく、何時迄もカサリカサリと思考の軀どもが乾いた音を立て続ける其場所を…。 然る

          【夢日記】滅びゆく図書館

          書けない、書けない、書く時間がない、なんて言ってないで、なにか書かないとな…。

          書けない、書けない、書く時間がない、なんて言ってないで、なにか書かないとな…。

          一気に秋の夜風…。読書の夜。

          一気に秋の夜風…。読書の夜。