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短編小説 「DVDレンタル」


休日の昼間、クリア塗装がまだらに剥がれた赤い軽自動車を走らせて街を抜けて、僕はまたあの古びたDVDレンタルショップに向かった。街で唯一残っているレンタルチェーン店だ。

この店は、時間が止まったような空間で、古着や中古のテレビ、さまざまなガラクタがひしめき合っているリサイクルショップと併設されている。日が経つごとにレンタルスペースは縮小され、DVDの棚は徐々にリサイクル品に押しやられていく。

僕の目的は明確だった。ネット配信されていない、どこか懐かしさを感じさせるB級映画を探すこと。なぜなら、それが僕の週末の小さな冒険だからだ。パッケージのデザインが古臭く、色褪せた映画ほど、僕の興味を惹く。

「今日はどんな映画を借りようかな。」店内を歩きながら、僕はひとつひとつのDVDを手に取る。映画のタイトルも、大配信サービスでは見かけないようなものが多い。『ゾンビキャッツ・フロム・マーズ』『エイリアン・ナイトメア』『逆襲のサスクワッチ』……まさにB級映画の宝庫だ。

僕が映画を選ぶ基準は、ジャケットと裏に書かれたあらすじだけ。レビューなどは一切気にしない。それが、予期せぬサプライズを楽しむコツだと僕はわかっている。その中から、今日の気分にぴったりの一本を選ぶ。ある意味で、それは掘り出し物を見つけるようなものだ。誰も気に留めないような映画が、僕にとっては隠れた名作になることもあるからだ。

手に取ったのは『忘れられた惑星の怪物たち』という映画だ。ジャケットはビビッドな色使いで、宇宙船が怪物に襲われるシーンが描かれている。あらすじには「この惑星に足を踏み入れた人間は、二度と元の世界には戻れない」と書かれていた。完璧だ。

家に帰り、ポップコーンを用意し、ソファに腰を下ろす。DVDプレイヤーのボタンを押すと、画面には古めかしい映像が現れる。映画が進むにつれ、予算の都合か粗い特殊効果が笑いを誘うが、それがまた魅力的で、ストーリーに引き込まれていく。僕は映画の世界に完全に没入し、現実を忘れてしまう。この瞬間が、僕にとって最高のリラックスタイムなのだ。

映画が終わると、僕は心地よい満足感に包まれていた。このB級映画が心に深く響いた。それは、配信されていない映画にしか見ることのできない、原始的な魅力と、予測不能なストーリー展開があるからだ。

夜が更けていく中、僕は次の休日もまた、このレンタルショップで新たな冒険を探すことを楽しみにしていた。それが、僕にとっての小さな幸せであり、生活に彩りを加える特別な瞬間なのだ。




時間を割いてくれてありがとうございました。

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