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またね。〜儚い独り言〜

「2年付き合った彼女と来月入籍することになったよ。」

そう伝えた。

「先越されちゃったなー、私もそろそろ結婚したいとは思ってるんだけどね!」

そう話を切り返してきた。
その人は唯一自分が心を許したかけがえのない人。

あの時の決断が少し違えば
僕は君にプロポーズをしていた。


君との出会いは中学の入学式。

ぼくは人見知りな性格だから、気になっていても話しかけたりはしない。

君とはクラスが違った。
共通の友達もいなかった。

あっという間に2年がすぎた。

3年生の始業式、君と初めてクラスが一緒になった。
クラスでは席も隣で移動教室でもずっと隣の席。
急に距離が近くなった気分。


英語の授業では教科書を使って会話をした。
それが初めての会話だったのかもしれない。

それからは
打ち解けることがすぐにできた。
放課後も部活動が始まるまでの間、くだらない話をしてよく2人だけで盛り上がっていた。

すごく居心地がいい。
会話のテンポも最高で、内容にも共感できる。

僕は普段よく喋るタイプではないけど、君といるとよく話題が出てくる。
頑張って間を繋ぐことは一度もなかった。
話を終わらせるタイミングだって君は絶妙だった。
お互いに牽制し合うことなくキリも良かった。

お互いに通じ合えている気がしてた。

でも、付き合うことはなかった。

中学校を卒業して高校は同じ学校。
地元にある唯一の学校に進学した。
クラスは一緒。内心とても嬉しかった。

もちろん高校の3年間もまたたくさんくだらない話をしたし、たくさん笑い合った。
恋愛の話だってたくさんして、異性とは思えないくらいお互いを曝け出し合った。

それでも、また付き合うことはなかった。

卒業後、君は地元に就職した。
僕は少し遠い街の専門学校に進学した。

社会人と学生という立場になってから
ぼくは少し君と距離を感じるようになった。
一年くらいは疎遠だったかもしれない。

それから少し経ち、僕の誕生日に
「久しぶり!元気にしてる?今日誕生日だよね?
おめでとう!何歳になった?」

と冗談を交えて連絡をくれた。

全細胞が奮い立つ瞬間だった。

「ありがとう!めっちゃ元気!同い年だから20だわ!笑」と、普通に返信することで精一杯。
嬉しさのあまり、小ボケすら思い浮かばなかった。

それからは、疎遠だった時間を取り戻すかのように毎日連絡を取り合った。

何回か君は僕に地元から遥々と会いに来てくれたりもした。

いきなり、ショートカットになっていたり、
ときにはしっかり目のメイクで大人っぽくなっていたり、君と会う日はいつでも驚きが絶えなかった。


愛おしすぎる君は僕にとってかけがえのない存在。

ついに我慢できなくなった僕は、
「付き合ってください」と告白をしてしまった。

答えは、
「すごく嬉しい」「でも本当に私でいいの?」
と控えめだった。


子供に恵まれて、笑いの絶えない家庭。
そして、老後の姿まで僕には容易に想像ができた。
付き合い始めたばかりなのに妄想は止まらない。


それでも、社会人と学生という立場がどこか
引っかかって自分が劣勢に感じてしまい、
優位に立てないというところが自分の中で腑に落ちなかった。

小さなプライドのせいで、5ヶ月で君に別れを告げた。

「なんか君に対する好きがわからなくなった。
別れよう。」
理由も即席、支離滅裂で最低の文章だった。
そんな話を急に切り出した僕に対して君の答えは、

「君がそう言うなら、私は受け入れるよ。私はずっと好きだけど、君にもう気がないなら仕方ないよね。」
やっぱり、控えめで全てを悟っている感じがした。


それから、また君と疎遠になった。


1年半後、僕は専門学校を無事に卒業して、
地元に戻らずまた遠いところで働いていた。

「久しぶり!元気にしてた?今どこで何してるの?今は何歳ですか?」

君から連絡が来た。

君は相変わらず絶妙なセンスの小ボケを挟んでくる。くだらないけど、僕にはとても心地良かった。

「久しぶり!今は〇〇市で働いてるよ!多分君と同い年だから、22歳くらいかな?笑」

僕はやっぱり、気の利いた返事は返せない。

「お互い大人になったし、お酒でも飲みに行こうよ!」

君から誘ってくれるなんて、僕はどれだけ反省したらいいのか、どんな罰を受けても足りないくらいなのに。

それからは、半年に一回の頻度で地元に帰っていた。その帰る度に僕は1番最初は君に連絡をしていた。

すごく落ち着く空間。
会話のテンポの良さ、話が尽きないし、全部に共感してくれて否定的な事は全く言わなかった。

また君のことが大好きになっていた。

でも、僕にもうそれを伝える権利はない。

君には彼氏ができていた。

ー「君には幸せになってほしい」ー
心の中で何回も君に伝えていた。

そして僕も来年30歳になる。
君も30歳になるね。

今度は僕から連絡をする。


「久しぶり!元気にしてる〜?今年で何歳になった?」

君は
「久しぶり!何その小ボケ笑、あまりセンスないな〜笑」
「私は1回生まれ変わってやっと4歳になったところだよ〜」

秀逸だった。

僕は笑いと涙を堪えながら続けた
「重大発表なんだけど、、、」

「2年付き合った彼女と来月入籍することになったよ。」

君は言った
「先越されちゃったなー、私もそろそろ結婚したいとは思ってるんだけどね!」

時は戻らない。
それでも、記憶はずっと鮮明で決して色褪せない。

僕が歩んだ道は間違いでも
君にとって正解がどこかにあるなら、僕はそれでいい。

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