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平瀬美里 舞台 アリスインデッドリースクール永劫 観賞記

名優・山崎努は、必殺シリーズに於ける念仏の鉄などの魅力あるキャラクター等ごく一部を除いて、台本を読み込み、役を演出家らと作り上げたものに表現し残したものは無いということだろう、「同じ役は二度と演じない」といわれている。ちょっと違うことかもしれないが、今は全くドラマや映画も観ない小生は、当たったから続編、みたいな流れにも幻滅だったので、氏のような俳優さんがたくさんいてくれたら、と思うばかりである(って、前にもこんなマクラ書いたかもしれないわ)。
が、しかし!
台本を読み込み役作りを徹底しても、それを全公演の半数はおろか、2公演で強制終了(新コロで)された者、それも、まだまだこれからキャリアを積むべく、日夜芸事に励んでいるであろう、

平瀬美里!

みぃちゃんには、この11月23日から27日まで、ここ、

新宿村LIVEで上演された、

舞台 アリスインデッドリースクール永劫

で、再び、墨尾優の配役を受けたことは、演るも演らぬもない、またとない機会であることは間違いない。しかも、その間も着実に舞台経験を積み、ある時は主役を務め、ある時はベテランコメディアン相手に堂々アドリブでの笑い取りに動き、さらには助演として抑える演技を覚えたり、そして、同じデッドリースクールシリーズでは、優とは別の役(幼馴染の一つ上の学年の青池和磨)を演じたことで、作品の世界観や優の心情変化の理解も深めて、過去出演した諸先輩役者さんにも劣らない力を携えて、全8公演に挑んだのである。小生は本来5公演観賞予定が、事情により4公演を拝見した者として、その姿と作品自体の良さを、少しでも書き散らかしたいと思う。

1 あらすじ

※この記載は、拙記事昨年9月の、
https://note.com/stplbanzai/n/nfd4d8c7416b7
この記事を、役者さんの名前だけ今作に合わせたまる写し。横着者と言われればそれまでながら、デッドリースクールは基本的にストーリーは同じだから、すじは変わらないのよね。つまり、古典みたいなものだけど、それを役者はどう演じるか、演出家はどうするか、を楽しむのが良いのでね。それもまた後ほど主観まみれで散らかしますんで。

ある日の放課後の愛心学園の校舎屋上に、ひとり上がってきた墨尾優(平瀬美里)。いじめられて傷心のところ、彼女を探していたクラスメイトの百村信子(後藤萌咲)は、入学以来ずっと優のことを見ていて、その良さを活かせるのは自分しかいないと告げ、漫才コンビの結成を申し込む。突然のことにも、笑えたと癒えたような優は信子に、今日はどこに行こうかな?と聞いてみると、信子は、(私の)家に来るんでしょ!と明るく迎える。

進級し二年生となったある夏休みの朝。あの時同様、誰もいない屋上に上がった優だが、今日は登校日で、映画研究会の同学年である橙沼霧子(大澤実環)がすぐに上がって、三脚にデジタルカメラを装着して登校日の撮影の準備。そこに、優とはいろんな場所で出くわすという辻井水貴(音田栞)が上がってくるが、言葉を交わすでもなくひとりで、持参の分厚い本を読むため端に佇む。さらに、他校平泉高校の新聞部員だという堂本千十合(ちづえ。馬場光梨)が、霧子の属する映画研究会の監督の取材でやってくるが、ほどなく上がってきた、その監督・界原依鳴(田中海凪)は、取材を断るために呼び出した、とそっけなく取材を拒否する。溜息の堂本に対して、元気出してと励ます優だが、今度はその優を探すために漫画研究会の1年・黄市恵美(川本結月)が、2年・志倉夏樹(二宮夕子)に付き添われ優に、去年の文化祭で優が客席に投げた「ゲロたん」のぬいぐるみを返して、いつか私の漫画のモデルになってほしいと声を掛け、屋上はますます賑わう。そこに金属バットとタバコを手にした3年の紅島弓矢(相澤瑠香)と彼女を追う保健委員の宍戸舞(宮崎妙美)。タバコを取り上げようとする舞から逃れるため再び階下にゆく紅島。その両者と入れかわるようにやってきた2名は、生徒会長青池和磨(黒木美佑)と書記の村崎静香(KAORI)で、登校日の屋上の騒がしさを調べにきたところ、彼女を和磨姉ちゃん!と親しみで呼ぶ優が、掃除中の信子を見つけて、私たち漫才コンビを組む、文化祭で観てもらいたいと談判。門前払いと思われたが、やってみよ!和磨は認め、優と信子はさっそく持ちネタを披露しようとしたその時、世界が一変する!遠くで飛行機の墜落音と地響きにしゃがみこむ屋上の彼女たち。黒煙が流れ来るなか階下の校庭校舎から聞こえる悲鳴、いったい何が起こったのか?興味本位でカメラを向けて覗き込み実況を開始した霧子が、やがて恐れおののく。そこでは、人が、人を食べていた!?

数十分後の屋上には、避難してきたのか人が増えていた。舞と、同じく保健委員の巣宮春菜(青名畑実咲)に手当されるソフトボール部員の高森朝代(山崎理彩)、と同部員の猪狩薫(七瀬葵)、緑浜塔蘭(青木萌)。高森は左のシャツの肩口に大きな血痕がある。そして科学部の氷鏡庵(ひかみいおり。上枝恵美加)はひとりで、ここに逃げた選択を分析している。唯一の出入口の扉を叩くのは紅島で、職員室で被説教中にこの現象に出くわし、決断は早いから、と血まみれの金属バットを示し、何をしたかを物語る。人を食べる人、それは突然吸血鬼?ゾンビ?のように人を噛んでは同類に変えてゆく者たちで、堂本が持参してきたパソコンのネットでは、頭を撃ち抜くくらいの強力な致命傷を負わせないと倒れないことが確認される。張り詰めた空気がたちこめるが、優は信子を誘い漫才で和らげようと試み信子も応じる。多少とも緊張がほぐれたか、それぞれ自己紹介を始め隔意を外し、さらに校内放送から和磨から1階は危険の旨、上級生が下級生を監護し皆信頼しあうよう呼び掛け、放送室に乱闘気配が伝わるまで放送を続け、やがて屋上に戻ってくるがその左腕には血の痕。静香は会長は無事であることを強調する。一方、体育館で、その、人が突然襲う様を目撃していた高森が、仕方なく体育館の出入口を封鎖して人を襲う者を隔離したことを告げ、水貴は、そんな高森を自分の生存ありきだと非難。ますます険悪な空気が強まるが、優と信子は漫才で再び和らげてゆく。その笑いが皆の思考を柔軟にかえたのだろう、危険な1階の購買部から飲食物を調達するべく、上階からロープ等で伝うという方法を思いつき、紅島を先頭のもと、優、信子、水貴、春菜、塔蘭、夏樹と恵美が向かう。

和磨以下残った者達は、霧子の文化祭用インタビューとして、おのおのこれまでを語ってゆく。氷鏡は優秀な科学部員のことと紅茶を上手く立てる顧問が死んだことを、彼女だけは霧子のカメラを拒絶して語る。一方困っている人を助けたい一心で保健委員となった舞は、霧子を逆取材。写真撮影にこだわる端緒となった、一枚も自らの写真を残さないまま行方不明となった兄のことを吐露。すると取材拒否を一転、和磨も人助けで生徒会長となるが、上手く笑えないという悩みを語る。そしてカメラは界原へと続き、かつて一番の仲間が共作だった作品を界原一人の作品であるとして自らの名を消し、その真意を明かさぬまま死んだことを語り、堂本の取材の核心でもあった突然映画作りを止めた真相が明らかになったが、見せる相手がいなければ意味がない、という言葉から、やがて自身の平泉高校と自宅のカメラの様子から「見せる相手」が誰も居なくなったことを知ってしまう堂本。その堂本や界原に対して氷鏡は、この出来事がかつて起こった出来事の繰り返しであると疑問を感じていて、あらゆる記憶から現実を変える可能性を探るべき言い、忘れたい記憶を持つ二人を詰る。

そこに購買部へ向かっていた一行が戻るが、その後ろから見慣れない大人が2名入ってきて、ひとりは銃を構え緊迫感が漂うが、もうひとり、その上官らしき者が銃下を命じ、自衛官の竹内珠子(鈴木美里)と、その部下の柏村香(水野伶美)と名乗り、紅島からここまで護衛してもらった旨を残留組は聞く。しかし柏村も負傷しており舞と春菜の手当てを受ける中で、ゾンビと化した者の「破壊」の凄まじさを聞かされて一堂は息を吞むが、一方優達から無事な教室の話も聞き、体育館でも未だ襲われずに生存する者の存在も確認されて高森も安堵する。水貴から食料を分配するよう提案されそれぞれが飲食したいものを口にして、束の間の安息が保たれるるとなれば、そこは優と信子の出番。得意のひとネタで座がますます弛緩してゆくと、春菜が介護職を目指したい、塔蘭がもっと強くなりたいと、願いを話す。そして和磨までが、竹内らを前にしても紅島に煙草を吸えばよいと勧め、竹内も健康管理が職務ではないと微笑めば、水貴とその和磨まで煙に咽せながらの初喫煙。さらに、本当はアイドルになりたかったと吐露すれば、堂本が水貴と誘い3人で歌いましょうと提案。いよいよその雰囲気が全員に波及し、漫画家を目指す恵美が、夏樹の実演の元、すでに書き上げた作品を紹介。その夏樹は声色鮮やかに登場人物を描写すれば夢は声優。塔蘭も世界で活躍する選手になると言えば、高森は誰かを助けられればそれでいいと言い、同じ思いの静香に紅島は、単なる和磨会長のマネージャーだろと弄る。

その紅島には、この雰囲気に至るまで、ただ一人敵意を向けていた薫が、あなたもソフトボールをしにグラウンドへ戻りたいのでしょ、と挑発的に言うと、遠い眼に戻る紅島。高森が止めるのも聞かずに、昨年紅島の喫煙停学事件で部も連帯的に活動停止で迷惑を被り、戻る資格は無いとさらに責める薫。その時意を決したように表情を変えた高森を見て、今度は紅島が彼女を止めるが時遅く、薫に、その時の喫煙者は自分で紅島がかばう方で名乗り出て退部したことを明かす。呆然とする薫。元々潮時で止めるとつもりだと取り成すような紅島に、水貴はまたも高森に、そこでも自己中心、残るのはクズばかりと蔑む。見かねた竹内が水貴の愛読書を奪い「行動生物学」という書物であると暴露して座の空気を戻すと、霧子も改めてすごい奇跡の映画を作った界原を称えると、氷鏡が「奇跡は二度起きれば奇跡じゃない」と、ついにアルゴリズムの解明に至ったかのように、記憶は死の連鎖によって繰り返されていて、それが次のことの既知感を生んでいる。だから可能性を前後だけに求めずに、全方位に向けて見出せばよい、と陶酔したように言い、そこには、寿命ではない不慮の死までを当然受け入れよというような危険を感じ、いち早く銃口を氷鏡に向ける柏村。とほぼ同時に間に分け入り防護壁となる優。柏村が優に微笑み、氷鏡に、怖い時に素直に怖がることが生への近道と諭す。その柏村に、かつて入隊のころ同じ言葉で指導を受けた竹内が謝意を示せば、次は撃って私を止めよと銃を渡す柏村。お詫びの印で竹内が声を張り上げて、将来、何になるか大会!の開催を告げ、防衛大臣を目指すと宣言。以下先ほどの夢を叫ぶ生徒たち。必ず助けに来るからここで待ってと、同学の先輩として竹内は優と約束して再び階下に戻る。

だが、時はすでに遅かったというべきか。和磨は放送室で襲われた時から己のその後を理解していたのだろう、自分が自分であるうちに決めるべく、共にしたいという静香に生徒達を託して焼却炉の中に身を投じる。そして屋上もまた、再び階下に出向いていた紅島、信子、氷鏡、水貴、霧子、舞、恵美、夏樹、塔蘭のうち、舞、恵美、夏樹、塔蘭の姿が見えず、信子はシャツを大きく血で染めている。舞が襲われて、笑顔のまま最期を迎え、恵美、夏樹、塔蘭を助けようとした信子だったがやはり傷を負ったことを知る残っていた6人。どうやら氷鏡が持っている爆弾を取りに向かったようだが、科学部も製造物のみ残して作り上げた部員の姿は無かったようだ。夜から荒天で竹内らの救助も待てない中、自分たちで脱出を決行してのことだが、優は信子を置いてはいけないため、皆が意を決して階下に向かうが、信子と共に屋上に残る優。

1階の西側の柵と周囲のゾンビを、半径10mは灰と化す強力な爆弾で爆破し突破、車で駅の方へ向かうという作戦だが着火を間違うと全滅するところ、その役を買って出たのは高森。爆破地点まで来たのだが着火するものを忘れている。紅島のライターは和磨が持っていて他に方法を模索する前に、すっと水貴が自分のライターを出す。高森は、紅島にキャッチャーらしく構えて投げろと命じ、紅島の一投に、ナイスピー!と高森。実はもう噛まれていると、和磨同様に、その後のことを理解していた者がいたのである。水貴に、生き残るのはクズばかりじゃないよ、紅島にはソフトボール続けろと告げ、最期じは自らに歯を食いしばれ!と奮起。さらに、私は・・・と言いかけるが、無常にもその時間は残されておらず、爆音とともに形も遺せなかった高森。言葉を少なに紅島や薫、その他の者がその「地点」を超えて、何度もひどい言葉を掛けた水貴に、言動は生き残って責任をとれ、と手を差し出し続いた堂本であった。

屋上では、意識の戻らない信子に、コンビは二人だからと一緒に居ると呟く優だが一人ではネタも浮かばない。ようやく意識を戻した信子がなんとか起きあがると、無免許のUFOのネタを始めるが、オチでは突っ込みも「もういいよ」も返せない信子。優を食べてしまわないうちに行かないとと、こちらもその後を悟り、どこへ行くとも知らずにひとり出てゆく信子。ついに独りになった優の携帯が突然なり、その音が連鎖したように鳴り渡り、紅島以下、信子と和磨と静香を除く全員が、まるで文化祭当日の楽しさ忙しさを語るように電話で話している。最後氷鏡が科学部員への指示を終え優に首肯くと、静香が、会長がお成りです!と迎えれば、ピンク柄のフリルついた華やかな衣装の和磨が、似合うかな?と笑顔。さらには柏村が、諸君元気だな!と竹内を後に入れば、竹内は優に、間に合わなかった、ごめんなさいと謝られる。どうやら氷鏡の言う「別の可能性のひとつ」だと気付いた優に、和磨と水貴、そして堂本が、念願だったアイドルとして歌を聞かせる。

世界が生まれ変わるとき

はじまりのあの言葉

また二人いえるかな

答えを求めさまよえば

悲しみを分けあって

同じ夜に溶けてゆくのだろう

それぞれと、ハグをしたり拳を合わせたり、襟を正してもらったりと、ひとつの可能性でも別れを交わし、氷鏡から可能性は無数、和磨から自分で決めるんだ、とそれぞれに教示されるのだが、独りでは決められない優。そんな優のために信子がやってきて、最初の乱入して怒られた文化祭の時を思い出させ励まし、もしあの日信子の家に行かずコンビ組むこともなければ、あの屋上に来ることもなかったかな?と問う優に、優の面白さを伝えられなかったよと、あの選択に間違いなかった旨を説く。そんな信子に、なにかを決めたのだろうか、優は、生きている人がいたら、一人でもノビューンの優だと挨拶して笑ってもらうからと告げ、最後に、どうする?と尋ねられたその答えには、翌朝、穏やかながらも確かな口調で、さてと、今日はどこへ行こうかな?と返した。

2 雑感

①作者が手がける演出

今回の、デッドリー永劫(以下永劫)は、原作者である麻草郁さんが自ら演出も手掛けており、これは、奇しくもみぃちゃんの主演だった、永遠同様のこと。その点で、まずは麻草氏にとっても、し残した仕事を完結させるというものでもあったのかな、なんて思う。ゲネプロを観た、昨年9月、みぃちゃんが、和麿会長として生を全うした、邂逅の演出の細川博司さんは、自身のツイッターで、

「リメイクというよりは、リブート、新たなる旅立ちという趣の新生デッドリースクール。軽やかな美しき流れの会話劇で、展開の滑らかさとテンポ、情報量に圧倒された」

と言っており、トーシロの小生は、なるほどそこは脚本家、演者がセリフをつないでいけば演劇はおおむねうまくいく、という程度に理解したんだが、うん、さすがに自分でも浅いねえこの考察はT_T。

でも、これもトーシロ主観ながら、麻草氏の演出なのかな、今作は演者各々が役を独自にとらえて表現する余地、なんだろう、フィギュアスケートでいう「自由演技」みたいなものが、やや抑えめで、がんじがらめではないにせよ、ある程度原作者として描いた、役の設定に忠実でいて、というような面あったかな、なんてことは思っているのね。一つだけ自分がそう思った例をあげると、七瀬葵さんが演じたソフトボール部の猪狩薫が、相澤さん演じる紅島弓矢に対して、怒りや憎しみよりも、恐れをもっていて、紅島のタバコ不祥事で部をめちゃくちゃにされたと暴露するシーンも、涙ながらに懸命に訴えていて、それが恐怖を克服して、って感じに見えたからなのね。というのは、前作邂逅で、薫を演じた荒井杏子さんが、ゆめ真音さんの紅島に、それはもう最初から敵意を持ち、憎しみがありありとわかるという表情とまるで違っていたからなの。それが、細川氏は荒井さんのプランをある程度尊重した演出だったのと、麻草氏は役の設定を尊重した演出だったという違いとして表れていたのかな、なんて考察に至ったんだけども、まあ、これもまた浅いなT_T。そもそも邂逅なんて、先述のゆめさんや、はせまゆに加えて、草場愛・高宗歩美・白石まゆみと出ていたら、それは「自由演技」を観たくなるものねw.

あとは、やはり原作者だからか、役にも、役者にも優しい演出だったかな、なんてことも思ったね。役に優しい、というので一例あげると、一部メンバーが食料調達のために購買部に行こうという前後で、山崎理彩さん演じる高森朝代が、確か邂逅や永遠では、演じた長谷川麻由さんにしろ池澤汐音さんにしろ、眠りにつくという演出ではなかったと思うけど、山崎さんの高森は気を失っているということで眠りについているのね。で、その高森が眠りのところで、和麿会長が「みんな自分が噛まれたらどうする?」って話を振って、それぞれ、自分で決着つけるとか、自分が手を下すとか、実はかなり冷酷なことを言うんだけど、それを、実はもう噛まれている高森にはさすがに聞かせるのは忍びない、ということで、気を失わせたのかな、なんて思えたのね。もちろん結局高森も、柏村が珠子に、(自分は噛まれているから)次はしっかり撃て、と言って屋上を去るときに、自分もけじめをつけると決意するんだけど、そこまでに猶予をあげた配慮だと思いたいね。そして役者さんへの優しさは、まあ、これは当たり前かもしれないけど、ある程度のセリフ量のいところでは、みんなだいたい0位置にまで進んでからセリフを言うから、客席の目も集まって注目浴びる、というのも、観方によっては別にセンターで言わなくてもいいじゃない、とも言えるからね。だから、1公演しか観ない人でも、必ず1度は全出演者を目にすることになり、それが新たなファンを増やすことになる可能性はある、という配慮とも思えた次第なのね。

②筋が分かるからこその楽しめる観方

あらすじのところでも書いたとおり、デッドリースクールは、ほぼ同じストーリーを忠実に描く作品で、つまり、シェークスピア作品なのよww。だから、玄人筋の方なんかは、演出家ごとの、細かい演出部分の違いとかを楽しむんだろうけど、小生みたいなトーシロは、あの役は、ここがポイントで、あそこの行動を決意したんだ、とかを妄想したり、次にこの流れがくるから、役者さんは、あんな反応をするんだろうな、と予想をして、当たってたら喜び、外れたらなるほど!って唸る、なんてことを楽しんで観ます。前者の一例は、和麿会長の自決意思はどこか、ってことで、高森は珠子と柏村のやりとりからの表情から、あれが自決の意思のポイントだと思ったけど、彼女は、あそこでは小生には凄く寂しい表情を浮かべたから、ここじゃない、もっと前に自決を決めたんだな、それはやはり、噛まれたときどうする、と皆に聞いたときに、すでに決意は出来ていたんだな、なんて解釈したりね。そして後者の一例は、辻井水貴が購買部で食糧調達で戻った後、当然自分の欲しいものを取れば、これまでどおり他者なんてどうでもよく自分ひとりの世界に再び浸るんだろうと思っていたら、意外にも食料をいれた袋を、あたかも、取ってきたよ!さあどうぞ!って感じで差し出したという行動に、おおっ!て唸って、そこから、その心情は、やはり堂本が自分に感心を寄せてきたことが影響したんだろうかなあ、なんて妄想したりしてね。とくに水貴は、高森の自決を目にするまで、生き残るのは自分らクズばかりだとしたり顔でいるくらいの嫌われキャラなので、あそこで堂本との時間がもっとあれば、変われたかもしれないのに、というのが残念でもあったよね。

まあ、とにかく言いたいのは、筋が分かっていても十分に楽しめるものはあるってことで、それは決して自分の贔屓のタレントさんが出ていなくても、一度は観ることをお勧めできる作品であるということ。さらに言えば、優と信子の主演ではあるけれども、個々の役を主体として観ることも十分可能な群像劇なので、一度だけじゃ観足りない、あと数回は・・・って中毒性もあるので、もともと芝居好きだったりや、女性アイドルの奮闘が好きな人は、むしろ注意が必要な作品とも言えますかなw。

3 今作出演者の皆さんのこと

これも先述したとおり、小生今回は5公演を観る予定だったのが4公演となってしまったのは、実は、

千秋楽のマチネ公演の開演時間が12:00だったのを、

13:00と間違えてしまい開演後30分に着くという大失態をして、

その中の客席を進むことは迷惑と判断して観賞を見合わせたのT_T

いやあ、やらかしていしまいました。あるあるではあるんだろうし、30分遅れでも、例えば座席最後方の端席とかを案内してもらうとか手はあったかもしれないけど、スタッフに余計な手間をお掛けするのも忍びないしね。この会は、「ダンスライン」で初見だった黒木さんの扱いだったのも申し訳なくて、お詫びにこのとおり、

写真を購入させていただきました。あっ、もちろん年末のボブジャックシアターの作品は、すでに1公演、黒木さん扱いで購入済なのでご安心をww。って、何がいいたいかって、小生の中では、少なくとも全公演の半数以上は観ないと、今作の全役者さんの良かったところとかを細かくは語れないのが残念ってことでね。それでも4公演の限りで言えば、まずは大楽の個別挨拶で、これが初舞台だと言っていた3人。緑浜塔蘭役の青木萌さんは、今作でも、あの、和麿が噛まれたとしたら?の問いに対しての、自分で終わらせる、という回答のなにげなさが、和麿の背中を押したことを思えば、その残酷さとなにげなさのギャップを感じさせてくれたね。そして黄市恵美の川本結月さんは、今回ゲロタン漫画の説明中、自身で足を高く蹴り上げるアクションを魅せるんだけど、その動きがとてもシャープで強く、切り替えが見事だなって思えた。所属は我らがスタダ、いずれ田口組長のもと、Do it overなどでも登場する機会はありそうだね。もう一人の、巣宮春菜の青名畑実咲さんは、前作の朝日さんもそうだけど、本当に保健委員って感じになる、ほっこり穏やかな物言いとビジュアル面の美形感。舞を亡くした後の治療を任せたいので、必ず生き延びてほしいと願わずにいられないと思わせただろうから、その時点で勝利だろうね。あと、初舞台との言及はなかったけど、座組最年少14歳中学3年の、村崎静香のKAORIさん。初舞台の挨拶では、涙がつきものとなりがちの中、むしろ最後は楽しかったと言えるのは素晴らしいものだよね。個人的には、最後の「もうひとつの可能性」の場面で、優の襟元を正して捌ける間際の屋上の扉の前で、和麿をを見やるところを、もう少しだけ動きを止めて、間を取るとよかったなあって思えた。その点もキャリアが解消してゆくでしょう。

自衛官の二人。水野伶美さんの柏村は、まあ、前作がとにかく高宗さんなので、小生も正直初日は、印象的には、ってところが、でも、この、厳しい一辺倒ではなくどこか優しく明るい柏村像こそ、これも麻草氏の望む柏村なのかもとしたら、よく表現されているなと思い直したね。大きい目で、その目力が素晴らしい方でした。珠子の鈴木美里さんは、とにかく小生は珠子は白石まゆみw、の印象が残っていたので、むしろそれを薄めてもらっただけでまず十分w。エリートだから、では毎回ポーズで遊べる位置を活かして笑いも得ていたけど、自衛官だと思える歩き方とか佇まいは最後まで崩すことなく保たれていて、そこはやはり役者さんだねってなりました。

保健委員の宍戸舞は、ダンスライン組から宮崎妙美さんで、ダンスラインでは、生徒会という敵役側で、あの声質が嫌味帯びて聴かせるのが良かったけど、いやあ、その点では善悪って背中合わせなのかね?そのままあの声が癒しの声として聴けちゃうのw。生きる意味なんて健康で暇なときに考えればいい、多くが、死を意識しないと考えないだろうこの意味を、作品では舞の死(直接、死という言葉は出ない)は紅島の口から語られ、その姿は最後まで笑顔だった、というのがも宮崎さんにもしっくりきてしまったけど、舞も春菜同様、生きてほしかったよね。大楽では霧子の三脚が倒れたハプニングもあったけど、なぜかそれをそっと直すのが宮崎さんだったのが頷けてしまったわw。漫研の、恵美の先輩なのに才能に敬意を表せる志倉夏樹の二宮夕子さんは、大楽挨拶で、アリスインの世界観の芝居は初めてと言っていたね。はせまゆ熱演の「野に咲く花なら」で看護師役だったのを思い出し、みぃちゃんのようなアイドル活動をしていた場合は、ガールズ演劇が入口って人は多いけど、なるほど、一般的な役者さん?ならガールズ演劇も新鮮なのかなとか思ったり。二宮さんも影芝居では、川本さんや青木さんに何か話しかけたりもしていたので、そういう遊びの部分を、キャリアの浅い人に教えてゆく役割としても素晴らしかったなと思えたね。

橙沼霧子の大澤実環さんも、みぃちゃん同様、永遠では猪狩薫役ながら2公演で終わり、こちらは新たな役での出演となったね。なんでも撮る霧子が、数少ないところで撮るのを忘れる部分があったんだけど、その時の表情が、ああ、それくらい忘れるんだねってくらい良い表情だった。霧子役は、邂逅の稲岡さんもそうだけど、とにかくあの霧子のファッションが似合うかどうかも必要かもしれないねってくらい似合っていた。そして界原依鳴は、中山碧瞳・ミミちゃん病気降板を受けての、Awww!の盟友・田中海凪。モデル仕事の比重がどれくらいかは知らないけど、ミナギちゃんも役者の経験も順調に来ている中、なかなか難しい依鳴役は、さらに経験値になったと思う。感情を露わにするのが、氷鏡の最初の暴走を止めるところくらいな難キャラを、途中参加で作るのは大変だったろう。次はまたみぃちゃんとの共演だし、そこにはTOMOIKE組の谷松さんとも再会だから、演技の悩みなんかもぶつけたらいいよね。そして、堂本千十合の馬場光梨さんも、まだ高校生の2005年生まれ。劇中ではまさに等身大だけど、永遠ではソラ豆琴美、邂逅では二瓶有加という、お姉さんたちが担うくらいのこれも難役だと思うけど、とくに水貴に対して、屋上序盤は首傾げたりしていたのが、アイドルしましょう!となる時の表情と、最後に抱き留めて、生きようと支えるところが、実に優しく感じられた。そうそう、次回デッドリーがあったら、小生は、堂本ちゃんが、どこで水貴に感心をもったかのポイントを探りたいと思ってます。そして、敢えて、最後水貴には、優しく、「バッカじゃないの!」って言って、おでこあたりを優しく指でついてほしい、そんな演出も待ってますw。

その辻井水貴と、猪狩薫が、今作では小生、役も演じ手も一番印象深かった2名(4名)になります。まずは水貴は音田栞さん。彼女は大楽ではキャリアがある旨の挨拶を聞いて、なるほど、それは頷けるというくらい、水貴の存在感を知らされたのね。序盤屋上での、人間の愚かさを言うときの、間、先述の、食料差し出すためらい・手の震え、ってこれは単に身体的になってしまったか、後藤さんに大楽では、初めて優以外に突っ込まれてたがw、そして、クズが生きてというドヤ顔と、高森死後の絶望感と、本当に素晴らしく思えました。身近に死を目にするまでの態度は、なんか今のSNS上に多くいる「世間」そのものって感じにまでさせられたね。音田さんは小生初見で、3Bjr関係者とも、蜂巣和紀さんや堀有里さん、もちろん6番シードさんなどでももちろん観てないので、ちょっと過去の経歴を当たってみよう。そして薫は七瀬葵さん。先述の、初日の紅島への恐怖の表情に始まり、高森が薄々噛まれていることを気づいていて、彼女が痛みでもだえるたびに自分のことのように浮かべる沈痛な表情、紅島への恐怖と闘いながら詰る様、高森の真相自白後のその後のノビューンの盛り上げにも背を向けうなだれる、その背中の寂しさ、そして高森自決と紅島への何ともいない申し訳ないという表情など、いやあすべてで印象深かった。前作の荒井さんも、高森自白後にはいたたまれなくなったのは覚えがあるだけに、薫は今後も注目すべき役だよね。七瀬さんもこれまで未見だったのでキャリアを洗ってみよう。それにしても、2019年だったかの、デッドリースクールコネクトで、この薫をはせまゆが、高森を草場さんがというコンビもすげえなあ。

キャスト寸評も終盤となり、まずは山崎さんの高森は、これも再三述べているとおり、役の設定、いいかえれば制約みたいなものがあったと先入観があるので、はせまゆや池澤さんのような自由度は少ないと思えた分、喫煙自白時の爆発と文字通りの自爆時の見せ場まで溜めた感じが良かった。でも、これは役作りで共通だったと思うけど、噛まれたことへの死への思いにおびえていた点は山崎さんも十分持っていたね。そして氷鏡庵の上枝恵美加さんは、氷鏡自体が劇中でも難しいところ、こちらは難しさそのままを演じられていた気がする。ミルクティを望むところが、唯一くらいの遊び場で、小生観た回でも多少は言い方変えたりしていた感じはあるけど、それほど極端でもなくて、氷鏡でい続けるみたいな意思があると思えた。大楽ではNMB48らしくw、ちょっとだけ関西弁を感じさせる挨拶で、ようやく氷鏡を解いたかなって感じでしたな。そして黒木さん。ダンスラインでの若葉も、奇しくも生徒会長だったが、直近では大滝紗緒里ちゃん、みぃちゃんから受け継いだ和麿会長は、小生には両者を足して2で割った、という感じにうけたがどうだろうか。大滝さんの和麿は、前も書いたけど、1度しか観ていないが、とても強くぶれない感じで、他方、みぃちゃんは、これも書いたけどとにかく自身の悩んだ姿と会長の悩みがオーバーラップするほどに、強くあろうとする弱さが、これまた涙をそそられた感じだったが、黒木さんは、その両方と思えたけど、でも、やはり最後の、静香との二人芝居シーンでは、静香に、後追うようなことはさせないために、次があるかもわからない中で、次期生徒会長に事実上任命して、さっと焼却炉に身を投げる強さが素晴らしかった。みぃちゃんは、ここは絶叫に近い感じで、静香役の山崎さんと作り上げていたよね。それと、最後のアイドル衣装で捌けるときの、大楽で優に、すこしだけ万感って感じで、自分で決めるんだ、って言うのも、黒木さんの人となりも感じられて良かった。改めて年末の、ボブジャックシアターでは、蜂巣さんや池澤さん相手にどうぶつかるか、注目したいね。

残る3人。みぃちゃんにとっては、紅島役の相澤さんはダンスラインで、そして百村信子・ノブの後藤萌咲さんは、一年半前のワタシタチのキョリで、それぞれ共演の、アイドルとしては大きなグループで活動していた2人。役者としてはやや先輩と、後藤さんはほぼ同じくらいか、その意味ではこれからも意識しあってほしい2人だと思う。とくに相澤さんは、ダンスライン後にちょっと洗ってみたら、ラストアイドル時代も非常にポテンシャルが高い人だったみたいで、今作は、ある意味一本筋の通った紅島なので、迷いはなく演じられるのが逆に物足りないくらいに思っていそう。強いていえば、邂逅でのゆめ真音さんの、ヅカらしい立ち居振る舞いが、紅島は本当は不良でも何でもない、運動能力の高い有能な選手だったと想像させてもらえた点が差かな、ってあえて挑発しておきますw。まあ、こんあことはツイッターで書いたら即叩かれるだろうから、やってないで良かったw。そして、後藤さんも、小生は、播磨・ミミナギと共演の、爆走おとな小学生さんの「戦国送球」以来だけど、あの時の格好良く部員を引っ張るキャプテンから、突っ込みの相方役ながら、本作は狂言回しほどでもなく、どちらかといえば優の相方、として捉えられてしまう役に一転だけど、その分、影芝居では、mぃいちゃんの繰り出すボケ的な仕草を、ノブとして返すだけでなく、むしろ自分から率先してボケてね?って感じに、優に仕掛けていた姿に、小生には、それが余裕があるなあって見えて感心させられたね。他方で、噛まれてから自分行かなきゃ、で捌けるまでは、唯一くらい芝居本編で遊べるだろうところを、例えば、極端にゆっくり間を取って注目を受ける時間を取るとか、そういうものはしないで忠実に作品世界に居た、って思えたのも素敵に思えた。身長も高くて見栄えもするし、戦国送球でも動きもできるところで、静の芝居もできそうと、これからも中小演劇では引く手はあるだろうな。

3 平瀬美里は山崎努となるのか



インスタグラムでの感想をこうつづったみぃちゃん。

2年半前のポーズボタンが解除されて、晴れて、千秋楽まで途切れることなく墨尾優を全うしたみぃちゃん。山崎努のように、仮にまた優のオファーが、あるいは経験問わずオーディションで機会があったりしたとき、彼女は受け、あるいは手を上げるだろうか。

永遠では、もう初主演の緊張から、薄れゆく記憶の中でも、初日はセリフに忠実にいようという意識が感じられたけど、ワタキョや青木竜象さんや友池一彦さんとの仕事を経て、邂逅では、和麿という役を悩みながら共演者と作り上げることを体感した今作は、多くのみぃちゃんファンが評しているとおり、動き・セリフ言い回し・影芝居でのブレなさ・演技の泣きと、初日と大楽で自然に出た泣き、作品の理解など、小生も、彼女はすべてをぶつけた公演だったと思うし、大きな拍手を送りたい。実は、小生は当初、邂逅での優役の、蛭田愛梨さんが、初舞台というのに、自然に優そのものであったと思えて素晴らしくて、その後にみぃちゃんが再演というのには、やはりアリスインを愛する古参のファンの方には受けいれてもらえるのか?なんて不安で、本当に、邂逅の後で思ったように、直接の死は二人しか描かれておらず、そのもう一人の高森を演じ切るのがいいなあって思っていたのね。まあ、そういう古参にも原理主義的なやつはいるだろうし、エンタメの感想なんて人それぞれでいいし、なにより上演前からもわかるみぃちゃんの喜びを思えば、小生も最後は、みぃちゃんの優を楽しもうとなったけど、本当に真摯にこの作品に向き合ったんだろうなということがうかがえてなによりだった。初舞台同様、小生が観た限りセリフのよどみも噛みもなしで、影芝居は、青木竜象を知ったにもかかわらずwww、抑えるべきは抑え、これも水貴同様、身近に死を感じるまでは、おちゃらける不真面目さから、ノブの死が間近となっての悲哀、そして、永遠でもぶれずに感じられた、みぃちゃんの優からは、明日は希望という行先しか見えない、という笑顔、本当に優を演じさせてもらえてよかったね、と心から賞賛をしたいね。

だから、もちろんこれは良い意味で書くけど、みぃちゃんもまた、山崎努のように、墨尾優は卒業で良いと思う。もっとえいえば、高森とか、今回の薫や水貴も観たいけど、あえて、デッドリースクールからの卒業ということもあっていいかなと思った。この作品は、本当に女性のアイドルやこれからの役者を目指す人に、ひとりでも多く、その役を演じてもらうべき良作だから、そういう人に、あるいは経験多くても、二宮さんみたいに、まだこの世界観を知らないといいう人に、たくさん演じてもらいたいなと思ったのね。この作品で身に着けたすべての良いことを、まだ出会っていない作家・演出家・劇団・劇場・メディア、そして、山崎努さんのような名優との共演など、そうしたものにぶつけていってほしいなと思います。

思えば、アイドル活動を終えてから役者を始めたのが3年前の11月、みぃちゃんの4年目の門出は素晴らしいもので終わった。その先もまた、進んでいこう!生きよう!

ありがとうございました。


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