深呼吸のし過ぎは健康に悪い!?90%の人が知らない呼吸の真実②安静呼吸と努力呼吸
みなさんこんにちは!パーソナルトレーナーの吉田です。
前回から、「深呼吸のし過ぎは健康に悪い!?90%の人が知らない呼吸の真実」と題し、私たちが普段行っている「呼吸」についてお話ししてきています。
■前回のおさらい
◾️呼吸で吸った酸素は肺の肺胞という組織から血液に入り、血液中をヘモグロビンとくっつく形で全身の細胞へと運ばれる。
◾️細胞まで運ばれた酸素は、ヘモグロビンから切り離される形で細胞へと渡される。この時、血液中の二酸化炭素がヘモグロビンから酸素を切り離す役割を果たしている。
◾️深呼吸のように「多く吸って、多く吐く呼吸」を繰り返していると、血液中の二酸化炭素の量が少なくなる。すると、ヘモグロビンから酸素がうまく切り離せなくなり、脳や筋肉などの身体の細胞に酸素が円滑に行き届かなくなる。
◾️「コントロール・ポーズテスト」で自然に息を止めていられる時間が40秒未満の場合、呼吸の量が多い=血液中の二酸化炭素が少なくなっている可能性がある。
詳しくぜひ、前回の記事をご参照ください。
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今回は、「呼吸のし過ぎ」とはどういうことなのか?もう少し詳しくご紹介をしていきたいと思います。
■「安静呼吸」と「努力呼吸」
「呼吸のし過ぎ」についてご説明をする前に、まず「2種類の呼吸」についてお話ししていきます。
呼吸は分類の仕方によって様々な種類に分けられますが、大きく分けて「安静呼吸」と「努力呼吸」に分類されます。
⚫️安静呼吸:通常時の呼吸。睡眠時や椅子、ソファーなどに座っているとき、日常生活動作などの疲労を感じない程度の活動をしているときの静かな
呼吸。
⚫️努力呼吸:早歩きやジョギング、スポーツなどの強度が高い運動を行っているときのような、肩で息をする、速く、荒い呼吸。
このように、私たちはその時々の場面や状況で、必要に応じて安静呼吸と努力呼吸を意識せずに自動的に切り替えています。
日常生活の呼吸の大半は静かでゆっくりとした「安静呼吸」に該当します。
●安静呼吸の量と回数の目安
安静呼吸の場合、1回の呼吸で肺に取り込む空気の量は、安静呼吸では約500ml(ペットボトル1本分)と言われています。
また、同じく安静呼吸では1分間あたり12回~20回が健康的な呼吸の目安とされています。
□ポイント:安静呼吸(通常時の呼吸)で取り込む空気の量と呼吸の回数
⚫️1回の呼吸で肺に取り込む空気の量:500ml
⚫️1分間あたりの呼吸の回数:12~20回
⚫️1分間あたりで吸う空気の量:6L~10L
これに対し、運動時などの努力呼吸では1回の呼吸で吸う空気の量は1000ml、1分間あたりの呼吸の回数は60回~100回と、5倍近くにのぼるとされています。
■「正しい呼吸」とは「安静呼吸と努力呼吸を上手く使い分けることができること」
先ほども申し上げましたが、呼吸はその時々の身体の状態や状況によって変化するものです。
遅刻しそうになって、駅まで急いで走って行けば「はぁ、はぁ、ぜい、ぜい」といった速くて荒い呼吸=努力呼吸に、
逆に布団に入ってぐっすり眠っているときは、ゆっくり、静かな呼吸=安静呼吸に、
といった具合に、私たちは特に意識せずに呼吸を変化させていますよね。
このように、意識せずに「安静呼吸と努力呼吸を上手く使い分けることができること」が呼吸を「正しく行えている」と言えるのです。
●正しく呼吸を行えている人は世に中の1割以下!?
ところが、一説によると正しく呼吸が「1割以下」とも言われています。
言い換えると、「世の中の90%の人は正しい呼吸が行えていない」ということ。このお話しをすると、
「そんなに!?」
と驚かれることが多いのですが、実際パーソナルトレーニングの現場で多くのクライアント様の呼吸を観察してきた立場から申し上げると、「正しい呼吸」が行えている方は1年に1人お会いできるか、できないか・・・といった感じです。
(なので、ごく稀に正しい呼吸ができている方にお会いすると、思わずテンションが上がってしまいます(^-^))
●安静呼吸が努力呼吸気味になっている人が多い
では、具体的にどのような呼吸になっている方が多いかというと、
「安静呼吸が努力呼吸気味になっている」方が多く見受けられます。つまり、「常に呼吸が速くて荒く、多く吸って多く吐く呼吸」になっている状態ですね。
例えば、家でソファーに座り、ゆっくりテレビを視ているときに「はぁ、はぁ、」とまるで走った後のような荒い呼吸をしていたらどうでしょう?
少なくとも健康には見えませんよね?
上記のような極端な例でないにしろ、「安静呼吸の場面でも、まるで努力呼吸のように呼吸が荒くなっている」方が増えているのです。
荒い呼吸、すなわち「努力呼吸」では通常時の安静呼吸と比べて、より多くの空気を吸うことになります。
スポーツなど激しい運動をしている時であれば、安静時よりも多くの酸素を必要とするので「多く吸って、多く吐く」努力呼吸になるのは自然なことです。
しかし、そのような荒い呼吸が慢性化すると「呼吸のし過ぎ」になります。
すると、前回の記事でご紹介したように、血液中の二酸化炭素の量が少なくなり、酸素がヘモグロビンから切り離せず、脳や筋肉などの細胞に行き届かなくなります。
結果、脳や身体は「酸素不足」に陥ってしまいます。そしてさまざまな悪影響を及ぼすことになるのです。
このような、慢性的に呼吸のし過ぎになっている状態を「呼吸過多」といいます。
●ポイント
一見、空気を多く吸えば、それだけ多くの酸素が身体に取り込めると思われがち。
しかし実際は呼吸の量が多くなればなるほど、酸素は細胞まで行き渡りにくくなり、身体は酸素不足になってしまいます。
●正常な呼吸量の目安
前回の記事でご紹介した「コントロール・ポーズテスト」は、安静呼吸での呼吸の量が適切かどうかを判定するテストです。
我慢せずに自然に息を止めていられる時間が40秒以上であれば、呼吸量は正常ですが、40秒を切るようですと、「呼吸の量が多い=呼吸過多」と判定されます。
※コントロール・ポーズテストの詳細は前回の記事をご参照ください。
↓
https://editor.note.com/notes/n65c205306e09/edit/
また、この他にも「自然な呼吸をしている状態で、鼻の下に人差し指を横にして当て、指に鼻息がかかるかどうか」で判定する方法もあります。
◾️人差し指に息がかからない場合→適切な呼吸量。
◾️人差し指に息がかかる場合→呼吸量が多すぎる=呼吸過多。
どちらもご自宅で行えるチェック方法ですので、ぜひやってみてください。
■血中酸素飽和度が正常でも呼吸が正常とは限らない!?
ところで、コロナ禍になってから「血中酸素飽和度」という言葉をよく耳にするようになりました。新型コロナウイルスの感染を検査するPCR検査を行う際、パルスオキシメーターという指を入れて測る数値です。
この記事を読んでいただいている方の中にも、おそらく測定をされたことがある方はいらっしゃるのではないでしょうか?
血中酸素飽和度は「血液中の酸素の量」の事でSpO2とも呼ばれ、 値は%で表されます。
ちなみに、厚労省の研究班が策定した「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き」では、新型コロナウイルス感染症患者の血中酸素飽和度が「96%以上」は軽症、「93%超〜96%未満」は中等症Ⅰ(呼吸不全なし)、「93%以下」は中等症Ⅱ(呼吸不全あり)と評価しています。
血中酸素飽和度は96~99%が正常値とされています。しかし、実はこの数値をもって「呼吸機能が正常」とは必ずしも言えないのです。
というのも、血中酸素飽和度は呼吸過多の方でも正常値が出ることがほとんどだからです。
先ほど血中酸素飽和度は「血液中の酸素の量」と述べましたが、酸素はヘモグロビンとくっつく形で血液中に存在します。
つまり正確には、「血液中のヘモグロビンの何%が酸素とくっついているか」を示す数値なのです。
ここまでご紹介してきたように、酸素はヘモグロビンとくっついたままでは脳や筋肉の細胞には届きません。血液中の二酸化炭素によってヘモグロビンから切り離されることで、初めて細胞まで行き届くのです。
そのため、たとえ血中酸素飽和度は正常値でも、呼吸過多で血液中の二酸化炭素が少ない状態では、身体は酸素不足に陥ってしまうという訳です。
血中酸素飽和度は新型コロナウイルスの他、通常の肺炎やぜんそくなどの呼吸器科の疾患の診断には用いることができる数値ですが、「健康的な呼吸かどうか」を判断するには適さない、ということですね。
■酸素スプレーや酸素カプセルは意味がない!?
もう1点、呼吸に関する誤解として「酸素スプレー」や「酸素カプセル」があります。
これらも深呼吸と同様に「身体により多くの酸素を取り込めて、健康に良さそう」なイメージをお持ちの方は多いのではないでしょうか?
しかし、実際は標高が高い地域や肺機能に問題がある場合を除き、これらはほとんど効果は認められないと言われています。
1気圧の平地では、酸素を多く吸っても血中酸素酸素飽和度が上がることはありませんし、脳や身体への酸素の供給が増えることもないからです。
■まとめ
今回は呼吸のし過ぎ=呼吸過多について詳しくご紹介してきました。
◾️呼吸にはリラックス時の「安静呼吸」と運動時や緊張している時の「努力呼吸」がある。
◾️正しい呼吸とは「身体の状態や状況に合わせて安静呼吸と努力呼吸を適切に使い分けられること」
◾️普段の安静呼吸が努力呼吸のように「多く吸って、多く吐く」荒い呼吸になってしまっている=呼吸過多の人が多い。
◾️慢性的な呼吸過多が続くと、脳や身体は酸素不足に陥ってしまう。
次回は「自宅でできる呼吸機能のチェック方法」をご紹介したいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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