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映画用フィルムの思い出話①

私は大学時代から数年間、いわゆる自主映画を作っていました。特に積極的に活動していたのが1990年代前半頃です。その頃は比較的安価に作れる8ミリフィルムは消滅寸前で、ビデオで作ろうにもキャメラはともかく、自宅で編集出来るようなシステムを簡単に購入することが困難な時代でした。
私は大学入学前に8ミリフィルムやビデオを触ったことも殆どなく、大学に入ってから本格的に扱った初めの映画を撮るキャメラが、16ミリキャメラでした。
この話は長くなりそうなので、何回かに分けて書きます。また、あえて「カメラ」でなく「キャメラ」と書きます。

初めに16ミリフィルムでどのように映画が出来るのかを説明します。
フィルムにはカラーとモノクロ、ネガフィルムとポジフィルムがありますが、ここではカラーネガフィルムでの映画作りを説明します。

まず、フィルム会社で(当時はKodakかフジ)生フィルム購入して撮影、専門の現像所(イマジカ等)に現像を依頼して、ラッシュと呼ばれる補正無しのプリントフィルムを焼きます(「焼く」という言葉を使います)。
ここまでの工程で2分半の映像をラッシュにするまでに12,000円ほど、10分の映像だと48,000円程度が当時でもかかりました。
もちろん、映っている素材が全て使えるわけではありません。学生映画や自主映画だと、大体完成尺の3倍程度のフィルムは回すので、私の大学の卒業制作作品は1時間ちょっとだったので、フィルム代+現像代+ラッシュフィルムだけで100万円位かかりました。

ちなみに私が当時使っていたキャメラはARRIFLEX-16STという、同録が出来ないほど“ガラガラ〜”とカメラの駆動音がする物でした。ちなみビデオテープやデジタル素材と違い、フィルムに同時に音を収録することは基本的に出来ません。
じゃあ、音はどうするのか?完全に別録りです。いわゆるアフレコです。アフレコした音声をシネテープという音質がすご〜く悪いテープにダビングしてラッシュフィルムと同期させながら編集をします。口の動きを小さい画面を見ながら、アフレコ音を合わせる作業は、もはや職人技でした。

なんとか編集も終わると、今度はネガ編集です。ラッシュフィルム(ポジフィルム)は何度も切り貼り出来ます。でも、ネガフィルムはマスターしか無いので、1コマでもミスをすれば、音と映像がズレてしまいます。
私が初撮影をした作品は私がネガ編集をしましたが、半端ない緊張感とフィルムセメントという特殊な液剤で張り合わせる作業の難しさから、卒業制作はミスをしない為の”保険”という意味からもプロの方に外注しました。確か15万円ほどかかりました。
ネガ編集と並行して、先ほど書いたシネテープも現像に出します。現像された音声は「音ネガ」という波形がプリントされたネガフィルムになります。

最後に現像所でラッシュフィルムを上映しながらタイマー(タイミングマン)と呼ばれる現像所のスタッフとフィルムの色調整について打ち合わせをします。
色補正をしながら焼かれたポジフィルム、そのサウンドトラックの部分に音ネガの波形をプリントしして、ようやく「初号」と呼ばれるプリントフィルムが仕上がります。ちなみに音ネガ製作と初号プリント製作は、合わせて1分あたり1万円かかりました。

ここまでで結構長くなってしまいました。どんなことを考えながら撮影をしたかは、次回以降に書きます。
最後に私が撮影をした作品の主な製作費を(かなりアバウトですが)書いてみます。全て16ミリ作品です。
①初撮影作品…10分程度の作品。大学の課題だったので、10分分のフィルムが支給されましたが、それ以外で20万円くらいはかかったのではないかと思います。監督がほとんど手出ししていたと思います。
②課題作品…授業の課題。5分程度の作品。支給されたフィルムや先輩たちの撮影で余ったフィルムとかもらったのかな?全然お金をかけずに作った覚えがあります。ちなみに私は撮影と照明を兼務することがほとんどなのですが、この作品は照明のバイトをしていた同期が照明をやってくれました。
③卒業制作…2年ががりで作った1時間ちょっとの作品。セットを作ったりしたこともあり、300万円ほどかかりました。でも、大学側が評価してくれたので、音ネガ代と初号代が学校持ちになりました。
④自主作品…30分弱の作品。大学時代からの友人が、彼がスタッフをした自身の卒業制作があまり満足できない物だったので、自分らしい作品を作りたいと作った作品です。色々切り詰めて80万円くらいで作りました。

他にもちょこちょこ関わった作品はあるのですが、今でも手元で観られるのは以上です。
また、続きを書きます。

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