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パクりデザインではない。リスペクトオマージュである。

昨日のnoteに、
日本の映画会社は完全に『エイリアン』と同じ路線の宣伝イメージで飾ってきました(『スピーシーズ』も同じ路線)
と書いて、そういやあの映画もあの映画もそのイメージだな、と思いついたので、忘れないうちに書いておく。

『エイリアン』と同じ宣伝イメージというのは、いわゆる、周りが暗い中に蛍光の緑色が光ってる、というあれです。

勿論これらは決してパクりではない。
「うちの映画も『エイリアン』くらい売れて欲しいなあ」という配給会社の真剣な思いが、デザイナーさんに、「ようするに『エイリアン』みたいにしてよ」と、発注をかけたものである。
これはあくまでもオマージュなのだ。誤解してはいけない!

上が日本版ポスター(もしくはDVDジャケット)で、下が海外版オリジナルポスター。
オリジナルと見比べて、どれだけ『エイリアン』に寄せてきているかを確認してもらえれば。

『エイリアン』

まずは、「暗くて蛍光の緑色は、宇宙からの怖いものが襲ってくる目印である」という印象を決定付た『エイリアン』。
日本版も海外版もほとんど同じデザインだが、こうして見ると、オリジナルポスターより日本版の方がフォントが大きかったり背景が主張していたりと、少々うるさい感じがするが、それでも当時の流行りから考えると随分とシンプルに思える。

『プロメテウス』

『プロメテウス』のポスターを見て、これを読んでいる皆さんは、「蛍光の緑色じゃないじゃないか! もうネタ切れなのか!」とお怒りになるかもしれない。だが落ち着いて読んで欲しいのですが、『プロメテウス』は、『エイリアン』のプリクエルなのです。更に、監督がリドリー・スコットで同じ人なのです。
そう思ってもう一度ポスターを見てみると、どうです? デザインも『エイリアン』に似てるように見えてきませんか? 卵とおっきな顔、どちらも丸くてそっくりじゃないですか! 漏れてる光も蛍光の緑色に見えてきたでしょう? ね?
見えませんか? じゃあ、もういいです。

『スピーシーズ』

『スピーシーズ』が似ているのはもう疑いようがないわけですが、これには理由がありまして、クリーチャーデザインが、『エイリアン』と同じ、H・R・ギーガーなのだ。
だから、ポスターを似せても別に怒られないだろう、と考えたのだろう。これは日本版も海外版もかなり似せてきている。「むしろ『エイリアン』ファミリーですから、うちは」とでも言い出しかねない雰囲気で、こちらも苦笑いをせざるをえない!

『ザ・フライ』

デビッド・クローネンバーグによるリメイクで、SFホラーの傑作。
特に『エイリアン』との繋がりは、配給が20世紀フォックス、という部分以外見つからなかったが、プロデューサーのスチュアート・コーンフェルドあたりが「テレポッドが丸いからエイリアンと同じデザインで良いよ」と言ったのだろう、きっと。
ちなみにプロデューサーのスチュアート・コーンフェルドがどんな人物か知りたい人は、『トロピック・サンダー』という名作コメディ映画を観れば大体わかります。
それにしてもこの「怖がってください とても、とても怖がってください」というコピーは、素晴らしい。日本語の直訳も素晴らしい不気味さだ。

『スプライス』

今回の記事を書くきっかけになった作品。
ようやく日本版と海外版のポスターが全く違う作品が出てきた。
映画の内容は昨日書いたので書きませんが、「おかしな生き物が出てくる怖い映画だから『エイリアン』と同じで良いだろう」と誰かが発注したのだと思う。
「『エイリアン』にもっと似せるように、真ん中に丸いの配置して緑色の光が漏れてるようにして」とも発注したのだろう。
しかしこうして見てみると、海外版のオリジナルポスターは、ハッキリと、「これは、おかしな家族についての映画である」と主張しているのが解る。

※次の映画の海外版ポスターは、ちょっと刺激が強めなので虫とか苦手な人は要注意です。

『スリザー』

『ガーディアンズ オブ ギャラクシー』で、一躍ビッグネームの仲間入りを果たした、ジェームズ・ガン監督の傑作SFホラーコメディ。
監督二作目にしてこんな面白い映画撮って凄いなー。この映画の感想は後日書きますね。
アメリカの南部の田舎町に宇宙からの謎生物が飛来するんだけど、やがて世界を侵略する……という大きな話には一切ならず、最後まで田舎町から出ない、という潔さ。
それにしてもこれ、オリジナルのイメージと全然違う。
日本版の方も、よーく見ると女の人の下の方に、ナメクジ宇宙人が這い寄ってきてるのが確認できるのだけど、如何せん、映画には一切出てこないような蛍光の緑色に染められているので全く気付かない!
オリジナル版のデザインだと流石に「こんなキモい映画誰も観たがらないと思うから『エイリアン』に似せよう。どうせ宇宙から来た生き物の映画だし」という発注がなされたのは容易に想像出来るが、このデザインで観てみた人は、あまりのナメクジ宇宙人のキモさに度肝抜かれるのではないだろうか。
あとこの映画、後半ゾンビものになる。詰め込み過ぎ。

『パラサイト・クイーン』

『エイリアン』に似せつつ、『スピーシーズ』にも似せているという二段構えをしている奇跡のデザインと言えよう!

海外版のオリジナルのイメージを、凄い労力を使って改変している。デザイナーさんの苦労が透けて見え、思わず涙を浮かべずにはいられない素敵なデザインだ。上下逆にしたら2コマ漫画みたい。

キャッチコピーも、オリジナル版が「最終進化が始まった」に対して、「私の中に 何かいる--」

そんなことはジャケットを見れば一目瞭然だと思うのだが、「最終進化とか言われてもこういう映画を好んで観るような人たちには、難しそうな映画だな、とか思われちゃうからやめとこう」という発注がかかったのだろうな、と想像できるし、その通りだと思う! 人類の進化とかそういう難しい事は『プロメテウス』で充分だ! (『プロメテウス』もそんな難しい映画ではなく、怖くて大きいのがウガーと襲ってくるようなただただ楽しい映画ですよ)
オリジナルの方はわざわざ胎児に見えるようなポージングにしてるのに、日本版では、それもなかったことにさせるように顔をこちらに向けていて、なんだかなあ、と思わざるを得ない。

『ブレインストーム』

1983年のSF映画。
怖い生き物も出てこないし、宇宙ですらなく、『エイリアン』との共通点は一切無いが、DVDリリースの際にこのようなジャケットデザインになった。
しかしまあ、『バタフライ・エフェクト』『マトリックス』みたいに、暗くて蛍光の緑色、というデザインは、特に怖い生き物が出てこなくても、SF色の強いサスペンス映画に使われるようになったので、これはそちらの影響で無いかと思われる。昔の電卓のイメージで、こちらのジャケットにも背景に二進法みたいな数字が並ぶ。

他にもあると思いますが、また見つけたら書きます。
この次は、「どうして日本のコメディ映画のポスターは同じようなデザインなのか?」について書きますね。時間があったら。

追記:早速見つけた。ギレルモ・デル・トロの『ミミック』も暗くて蛍光の緑色だった。

#雑記 #映画

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