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『31』 感想

若者が殺人ピエロに殺される映画。

ロブ・ゾンビ最新作『31』を観て来た。

どうしようもない70ー80年代のホラー映画(スラッシャー映画)を、ロブ・ゾンビが、そのどうしようもない部分も含めて忠実に再現した、みたいな映画だった!

「どうしようもない部分は再現しなくていいよ!」という気持ちはあるものの、あの頃量産されたホラー映画が魅力的なのは間違いなく、そのどうしようもない部分であるので、やはりそのどうしようもなさは必要だったのだと思う。

というか、それのみで構成されてるような作品だった。

観ながら、「再考もせずに一発書きで書かれたみたいな脚本だなー」と思っていたが、どうやらロブ・ゾンビ監督が現在手がけている作品が色々めんどくさい事情で遅々として企画が動かず、それにストレスを感じた監督がムシャクシャして適当に書いた企画書が一発で通って撮影に至ったらしいので、あながち間違ってなさそう。

「さあ、ゲームの始まりです」みたいなもはや使い古され尽くしたデスゲーム作品に対して、ロブ・ゾンビからの「めんどくさいルールなんか一切必要ねえんだよ!」といった回答はむしろ爽やか。

どうせ我々観客は人が惨たらしく死ぬ描写が観たくてそういった映画を観に行くのだ。

そういった描写が観たくない人はそもそもデスゲーム映画を観ない。

五人の被害者に対して五人の個性的なピエロが順番に殺しに来る、といったシンプルな物語なのだけど、特にセックスと死、の二人組ピエロは笑った。

死のピエロ(胸のところに、DEATHって書いてある。最高!)は、スタイルの癖がすごい(千鳥ノブ)! コントみたい!

その割には中々男らしい死に様で泣かせてくれた。いや、泣きはしなかったけど。

随所で『悪魔のいけにえ』『悪魔のいけにえ2』のリスペクトを感じさせるシーンに溢れており、嬉しくなってしまうのだけど、ラストのあれは流石にどうなんだろう?

『デスプルーフ』が大好きな俺としては「いやいや無理無理!」と思わずにはいられませんでした。

必要なシーンを撮影はしてたんだけど、上映時間の都合でカットしたんじゃないの? みたいな繋ぎ方も多くて、まあ、そこも、昔のホラー映画再現の「敢えて」なんだろうけれど、やっぱりその敢えて、をするのが上手くいってないというか、ハッとさせられないんで、普通になにこれ? と思ってしまう。

そう考えると、やっぱりタランティーノて、上手いんだなー! と思うんですよね。俺が何を言ってるか知りたい方は、是非『デスプルーフ』を観てみてください。「敢えて」下手に撮る、というのが実に意識的に効果的に使われていますので。

と、悪口ばかり書いてますが、じゃあ酷い映画だったのか、というと全然そんなことはなくて、むしろロブ・ゾンビ監督の「俺の好きなものしか撮らないからね!」という気概に溢れており、いちいち美術も照明も音楽の使い方も最高で、間違いなくロブ・ゾンビ以外にこんな作品は撮れないだろうと思うし、「ハロウィンに観る映画にふさわしいのって何かな?」みたいなどうでもいい質問をしてくる馬鹿に、「ハロウィンだろうがクリスマスだろうが好きな時に好きな映画観ればいいだろ!」以外の答えを提示してくれたのは素晴らしいことと思います。

だから、これから毎年ハロウィンには、『ナイトメア・ビフォア・クリスマス』と『ハロウィン』に加えて、『31』が並ぶのことになるのは最高だと思います。

で、こちらから鑑賞後、時間の経って考えた末のネタバレ。






恐らく、ピエロたちは、劇中で言われてたように、本当に、かつての被害者たちだったのでしょう。

生き残った者達が、大金を積まれて、新たなピエロになるというシステム。

だからこそ、チャーリーが初めてピエロに対して殺人を犯すシーンをあれだけ執拗に描き、それを仲間に諌められ、それでも殺人を犯さなければ生き残れないシーンをねちっこく描いてたのだろうと。更に、ラスボスであるドゥームヘッドが、あれだけ殺人モードに切り替わるための時間と、それ以前の人間らしい一面を描くのに時間を費やしたのだろう、と。

直接的に言及は(多分)なかったけれど、恐らく、生き残った人物は、ピエロの補充に充てがわれるのだと思います。

そこで、人が人を殺す、と言う一線を越えた人物こそ、新たなるピエロ候補になると言う。

で、チャーリーは、そこを超えたにも関わらず、時間切れで生き残ってしまう。

なので、本当に人を殺せるはずのお前に、俺はしっかりと殺してほしい! と言う願いを、最後、チャーリーに託したのでしょう。

そしてチャーリーは見事、ドゥームヘッドを殺せるが、その後の自分を殺してくれる人を探して、また彷徨う、と。


そのような物語の可能性を秘めたラストだったのだなあ、と今になって思うわけです。



それにしても、ロブ・ゾンビは、こんなにアクション撮るの下手だっただろうか?

殺人ピエロと被害者が戦うシーンはアップと細かいカットの連続で、何が起こってるのか全くわからず、ハラハラもドキドキもないし、R18の割には殺戮シーンも全然直接的な描写もないので肩透かしだった。これ、R15でもぬるいくらいじゃないか?

『ハロウィン』の頃の殺戮シーンの怖さが全然無かったなー。


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