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花物語

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いや実際、すべての花に物語があるのである。私が大嫌いな言葉は「名もなき花」。ほとんどすべての花には名前がある。名前があるということは、人と関わりがあったということだ。一方で雑草と… もっと読む
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花物語 巻ノ四・パンジー、ビオラ

壮大な歴史を紐解けばあらゆる色とさまざまな形 赤、白、黄。青、桃、紫、橙。黒、緑。これらの中間色と複色の花。虹の7色をはるかに上回り、ほぼ全ての色があると言っても過言ではない。 その大きさにしても、野生種に近い径2~3cmあるいはそれ以下のもの(これらはビオラとよばれる)から、最大は直径12cmまで。形もまた、円に近く限りなく平面的な大輪の整形花もあれば、花弁の縁が波打つもの、細長い小輪、花弁が尖ったものなど、果ては完全な八重までと、多種多様、多彩なバラエティを見せてくれ

花物語 巻ノ三・フクジュソウ

立春に咲く黄金色の花園お正月の花にして春の妖精 お正月に飾る花、植物として思い浮かぶのは、松・竹・梅、南天、千両。いずれも縁起物。洋花ならシンビジウム。草花なら菊とハボタン。といったところか。あとひとつ、縁起物でかつ草花として、福寿草、フクジュソウがある。輝くばかりの黄金色はいかにもおめでたい。別名、元日草。 同時期に咲く山野草にセツブンソウと雪割草(オオミスミソウなど)がある。元日草、雪割草、節分草、と並べると、新春・花の三姉妹といった華やかな趣だ。開花時期は条件による

花物語 巻ノ二・ハボタン

飾るキャベツの千変万化ハボタンはキャベツから生まれ、寄せ植えの花材となる キャベツという野菜がある。言うまでもなく、野菜の代表格だ。植物の種として捉えると、キャベツは実に興味深い。カリフラワー、ブロッコリー、メキャベツ、ケール、コールラビ。すべて、キャベツと分類学上、種を同一とする、変種または品種だ。そして、なぜか主に日本で、観賞用に改良されたキャベツこそ、ハボタンなのである。 年の瀬の声が聞こえる11月から、お正月をまたいで2月頃まで、園芸売り場にはポット苗や鉢植えのハ

花物語 巻ノ一・ウメ

冬から早春を彩る花木の代表格かつて「花」といえばウメのことだった 万葉集の時代、サクラよりウメが好まれた。単に「花」といえばウメのことだった。新古今和歌集の時代、サクラに逆転された。という話は、花好きお約束の薀蓄(うんちく)。なお万葉集に詠まれた数の1番目はハギで、ウメは2番である。 現代において「花」といえば確かにサクラのことだ。イメージとしての「花」は圧倒的にサクラである。しかしながらウメも、現物の花としての人気は負けず劣らず高い。 栽培し身近に楽しむのなら、サクラ