見出し画像

水鉄砲

今回の帰省は結構いろんな人に会えた。

高校時代の仲良くしていた友達。

中学の時仲良くしていた友達。

久しぶりに喋る友人も多く本当に楽しかった。

楽しかったのはもちろんだが、
楽しい時間と、その後押し寄せる一抹の不安は対になっている。
「僕はここで、みんなに褒めてもらって大丈夫なのか?」
「ここでばっかり調子乗って、本当は何もできていないのになあ」

そりゃそうだ、それは事実。

「僕にはこの街があっているんじゃないか」

まあ、そうかもね、そうかもしれない

「この街に住みたいな、みんなに気兼ねなく会える」

もちろん、こっちには中学、高校と
積み上げてきた友情と信頼のおける仲間がたくさんいる。
その信頼は、あまりに深く、そして広い。


僕は、小学校に1回、中学校に1回ずつ転校をしている。
最初は怖かった。
知らない街に住む、知らない文化を持った同級生は聞く
「転校生、名前は?」
「前の街はどんな街だった?」
「どう?こっちの生活慣れた?」

怖かった、どう返すのが正解なの?

「僕はこの街に来るのは本望じゃなかった。
前の街の、気兼ねなく話せる友達と、昨日の話の続きがしたい」

そんなこと、口が避けても言えない。

僕のために用意された椅子と机からは動けない、自ら話しかけることも許されない。
知らない街の同級生に、ピストルを向けられ、四方を囲まれている感覚。

自分の居場所はどこだ、意味もなく這いつくばる。
転校生はその一挙手一投足が注目される。
バレないように這いつくばって、もう体は泥まみれ。

見かねた同級生がトリガーを引いた。

『今日の放課後遊ばない?』

銃口から飛び出してきたのは水。
体に蔓延った泥をみんなで洗い流し、
次の瞬間。濡れた体を抱きしめてくれた。

ストレスを感じないことは生きていく上で非常に難しい。
そのストレスは、ほとんどが対人関係だそうだ。

周りの視線が怖く、無抵抗だと手をあげて降伏したくなる。
でも大丈夫、大概みんなが手にしているのは水鉄砲だ。

僕の水鉄砲が、知らない街に来た誰かの泥を洗い流せるといいな、
では、それまで、しばらく。。。


この記事が参加している募集

この街がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?