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おにぎりで泣かせる人

【佐藤初女(はつめ)さん】

青森県弘前市、岩木山の麓で「森のイスキア」を主宰していた方です。
森のイスキアを訪れる人々に食事を作り、一緒に食卓を囲むという働きを長くされてきた方。
この方がにぎったおにぎりを食べて泣く人がいるらしい。

いつも行くパン屋さんに初女さんの本が置いてあり、そこで初女さんを知りました。



わたしは、大事なことは言葉にしなければ伝わらないと思っていました。まどろっこしいのがにがて。はっきりくっきり。
おにぎり食べて泣くなんて、どういうことかさっぱりわかりませんでした。


でも、ようやく腑に落ちたというか、わかってきました。
「ことば」は言葉のみではないこと。料理、絵画、身のこなし、そのほかあらゆるものに「想い」が宿るのだということ。

近頃、いろいろ「あぁ、そうだったのか」と感じます。今まで、なんて幼かったんだろう。恥ずかしい💦たくさんの人に忍耐してもらってきたんだろうなぁ。ごめんなさい。

【時を経ての再会】

以前、初女さんの書いた本を持っていたのですが、よくわからなくて手放してしまいました。

それが数日前、本屋で初女さんと再会しました。
時間がたってやっとわかることがあるのですね。今、初女さんの言葉が胸に沁みます。



初女さんは2016年に94才でお亡くなりになりました。
お会いしたこともないのに、初女さんを思うと心がじーんとします。

誰か特定の人に向けた愛ではなく、誰にでも開かれている心。
誰でもいらっしゃい、と言える心。
みんなのお母さんみたい。海のような人。

お会いしたかったな。

私にとって、祈りとは生活です。
生活の動作、ひとつひとつが祈りです。
心をこめて食事をつくったりともに食卓を囲んだり
ごく平凡な日々の営みの中にこそ
深い祈りがあるのです。

心の奥にはことばを超えたいのちの筋があります。
ことばを、超えなければね。

佐藤初女『いのちをむすぶ』集英社




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