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日本経済の問題点


はじめに


 かつての経済大国・日本は,今や完全に地に堕ちました。経済成長率は先進国中最低であり,自慢の自動車産業は中国や米国に追い抜かれ,もはや発展途上国の様相(慢性的な通貨安とデフレ)を呈しています。優秀な人材は海外に流出し,さながら年老いた金満家(国際収支を投資に頼っている国家)になってしまったようです。
 日本経済のどこが問題なのでしょうか?日本はどうすれば,経済的に復活できるのでしょうか?今回は,ある人物と企業の動向を追いながら,世界の趨勢と日本経済の弱点を考察します。そして,日本経済復活の処方箋も呈示したいと思います。

金融革命


 経済を身体とすれば,金融は血液です。血液が停滞すれば身体が腐るように,金融が衰退すれば経済は鈍化します。そして今,金融に革命が起きつつあります。この革命は,金融(Finance)にハイテク(Technology)を導入することから,一般的にフィンテック(Fintech)と呼ばれています。そして,フィンテックを先導する起業家こそ,今回ご紹介するジャック・ドーシーなのです。

ジャック・ドーシー


 ジャック・ドーシーはアメリカの起業家で,テスラのイーロン・マスクと仲が良いことで有名です。テスラ社のイーロン・マスクを根っからの合理的な経営者(現にコスト削減が得意)と称すれば,ジャック・ドーシーは創造的な天才です。


ジャック・ドーシー


8歳でコンピュータに興味を持ち,14歳で交通システムを制御するプログラムを書きました。ニューヨーク大学に進学しましたが,学問の退屈さを痛感し中退。昔からコミュニケーション能力に自信がなかった彼(幼少時の言語発達障害が影響か?)は,「世界の人々と交流する場を創りたい」という思いから,twitter社を創業しました。twitterが世界的に大流行したことは,皆さんもご存知のことと思います。

スクエア社


 ツイッター社を辞めた彼は,ある日,小売店経営者の悩みを知りました。商売をするには,会計用の機械(レジ)を購入する必要があります。また,顧客のカード決済に対応するため,カード会社に高額な費用を支払わねばなりません。そこでジャック・ドーシーは,スマホ一つでカード決済ができ,さらに在庫管理・給料振込や税金の支払い・会計処理までできる製品を開発しました。今や多くの小売店のみならず中小企業も採用しつつあるsquare(スクエア)です。
 さらにジャック・ドーシーは,多くの若者が銀行口座を持たず,ビザやマスターカードなどの決済手段を持たないことを知りました。しかし,すべての若者はスマホを持っている。そこで彼は,スマホ一つですべての金融取引ができる決済プラットフォームを開発しました。北米の多くの若者が使用しているcash(キャッシュ) App(アップ)です。このアプリを使えば,飲食店での支払いや個人間送金,株式や仮想通貨取引まで可能であり,簡易的なローンやレストランの予約までできます。いわば万能型のアプリといえるでしょう。コロナウィルスによるパンデミックの際,米国政府は国民に助成金を配布しました。米国政府は,若者に助成金を配布するため,ジャック・ドーシーのアプリを活用したことは有名な話です(お陰で,三日以内に助成金の配布が完了したそうです)。

ブロックチェーンとは何か?


 ジャック・ドーシーのさらなる活躍を語る前に,ブロックチェーンという技術についてお話ししなければなりません。ブロックチェーンとは,日本のサトシ・ナカモトという人が開発した分散型金融システムの技術です。取引や決済の記録がプログラム上のブロックに記載され,それらが次々と連なることから,ブロックチェーンと呼ばれています。
 現代金融システムの問題点は,中央集権的な構造にあります。例えば,一万円札は国家が発行します。そして,一万円札の価値は,商品と紙幣の需給関係で決まります。つまり,国家が紙幣を刷りまくれば,一万円札の実質的価値は低下するのです。簡単に申し上げれば,私たちの金融資産は,国家の按配によって左右されるのです。
 ブロックチェーン技術を用いることにより,中央集権的な存在(政府や銀行)は不要になります。つまり,通貨や金融資産に対して絶対的な権力が介入できなくなり,個人の経済的自由が担保されるのです。国家が介在しませんから,送金手数料も安くなります。先進国と発展途上国の通貨間不平等もなくなります。ブロックチェーンの記録は誰でも閲覧できるので,マネーロンダリングを防ぐこともできます。いわば金融の民主化が実現するのです。

アフリカ諸国より遅れた国・日本


 ブロックチェーン上で使用される通貨を暗号通貨(仮想通貨)と呼びますが,その代表的通貨がビットコインです。ビットコインは既に世界に広がっています。中南米やアフリカでは,多くの人々が決済通貨として使用しています(彼らは政府が発行する法定通貨を信用していないからです)。中東や欧米・アジアでも使われており,仮想通貨決済はもはや当たり前です。理由は簡単です。貧しい人々にとって,ビットコインは最も安全な通貨です。豊かな人々にとって,ビットコインは最も魅力的な通貨です(枚数が限定されているので価値が保存される)。スマホが当たり前の若者にとって,ビットコインは最も便利な通貨です。つまり,ビットコインに無知な日本人は世界で最も遅れており,未だに現金と銀行に頼る日本は金融後進国なのです。

ブロック社


 さて,小難しいブロックチェーンの話はここまでにして,ジャック・ドーシーの話に戻りましょう。2021年12月1日,ジャック・ドーシーはスクエア社をブロック社に改名しました。なぜ多くの人々が知るに至った社名を変更したのでしょうか?それは,彼の理念にありました。彼はこう考えたのです。この世界は,経済的なブロックで形成されている。小売店経営者というブロック,若年消費者というブロック,移民というブロック,発展途上国の人々というブロック,売れないアーティストというブロック・・・。これら全てのブロックを統合し,新しい金融プラットフォームを創りたい。そして,誰もが自由かつ効率的に取引ができ,富が公正に循環する社会を創りたい,と。
 彼はまず,売れないアーティストを救おうとしました。アーティストは一定数のファンがいても,音楽会社や業界人に認められない限り食っていけません。そこで彼は,TIDALという音楽ストリーミング会社を買収し,アーティストとファンを直接つなげ,アーティストが金銭的対価を受けられるプラットフォームを開発しました。
 次に彼は,銀行口座を持たない人々(移民や若者)が仮想通貨で自由に売買できるようウォレットを開発しました。ビットコインは分散型金融であることから,中央集権的な銀行が存在しません。つまり,個人が銀行の役目を負わねばならず,そのためには高度な自己管理(秘密鍵の保存)が必要だったのです。そこで彼は,誰でも簡単にビットコインを管理できるBitkeyというハードウェアを開発したのです。さらに彼は,ビットコインの送金手数料や処理速度を改善するため,ライトニングネットワークも開発中です。

新しい経済圏の確立


 ジャック・ドーシーの活躍は留まることを知りません。オーストラリアの企業Afterpayを買収し,BNPL(Buy Now, Pay Later)市場にも参入しました。BNPLは後払い決済と訳されますが,後払いとは大きな違いがあります。それは,決済期間を自由に選択でき,消費者の与信能力が公的機関のお堅い審査ではなくAIによって判断されることです。アメリカの与信機関FICOは,国民の半数以下にしか「普通の生活が送れる与信承認」を賦与していません。つまり,国民の半数以上は,普通の生活が送れない経済的処遇を受けているのです。Afterpayによる与信革命により,潜在的な購買層を掘り起こし,小売店や中小企業の発展にも寄与しようとしているのです。
 このように,販売者・顧客・クリエイター・開発者などのブロックを統合し,新しい経済圏を創るのがジャック・ドーシーの理念です(彼の言う「エコシステム・オブ・エコシステムズ」)。すべての人が公平に参加する金融プラットフォーム。スマホで口座をつくり,ビットコインなどで簡単に取引できる平等かつ公正なプラットフォーム。Bitkeyというハードとcash Appというソフトを使い,送金・ローン・投資・レストラン予約・支払い・資金管理など,全ての金融サービスが受けられるビットコインライトニングネットワーク。これが,ジャック・ドーシーの経営理念であると思われます。

日本の弱点


 以上により,ジャック・ドーシー及びブロック社を通して,米国における金融革命を解説しました。日本がいかに遅れているか,よくお分かりになったと思います。世界各国は今,急速にブロックチェーン技術を採用しています。ドバイのある業界関係者が言ったように,「日本は未開の地」なのであります。いや,日本はブロックチェーンどころか,DX(デジタル・トランスフォーメーション)においてさえ遅れているのです。例えば,マイナンバーカードにしてもそうです。電子化と業務簡素化のために導入されたマイナンバーカード。しかし実態は,依然として文書主義です。運転免許証を更新する際,マイナンバーによって私の記録は分かるはずです。しかし,窓口に行けば,個人証明の文書を書かされます(文書なんか偽造できてしまうのに・・・)。何枚も書類を書いた挙げ句,今度は申請書類に収入印紙を貼らねばなりません。そして,収入印紙を買うために,長々と窓口に並ぶのであります。cash Appにより銀行口座も証券口座もクレジットカードも統合したアメリカに比べて,日本は全く合理化されていないのです。なぜ日本は,電子化できないのでしょうか?
 社会改革は通常,三つの段階を踏みます。第一に新しい技術が発見され,第二に技術を導入する目的(コンセプト)が理解され,第三に新技術に適するよう人事組織を改革します。日本は,人事組織の改革ができないのです。簡単に言えば,人を切れないのです。従業員や公務員を解雇せずして,どうやって人事組織を改革するのでしょうか?日本が真っ先にやるべきこと,それは企業が従業員を解雇できる法的整備を整えることです。
 「従業員を解雇する」と聞けば,多くの方は冷酷な印象を受けるかもしれません。しかし,変化なくして成長はありません。昔は,電話交換手なる職業がありました。それは,電話機にて相互に会話できるよう,手動で回線をつなぐ仕事でした。しかし,技術革新により,通信が自動化され,電話交換手という職も無くなりました。もし当時,「電話交換手が可哀想だから,電話の自動化を止めよう」となったら,今頃どうなっていたでしょうか?日本の生産性は劇的に低下し,一部の人々を守るために国家全体が衰退しなければならなかったでしょう。しかも,一部の守られた人々は,国家に守られた分,より一層無能化するのです。

おわりに


 経済政策という意味で,日本がやるべきことは三つあります。第一に,労働者を解雇できる状況を作ること。そして,競争原理を社会に導入すること。第二に,新産業へ重点的に予算を配分すること。具体的には,AIやブロックチェーン,新産業の土台となる半導体です。第三に,教育制度改革を断行すること。欧米に倣い,創造的天才を育て受け入れる下地を作ること。
 専門家は言います,「日本人は模倣に長け創造性に欠ける」と。本当にそうでしょうか?私は決して同意できません。世界初の恋愛小説(「源氏物語」)を生んだのは,日本ではありませんか。欧米に先駆けて宗教改革(日蓮や親鸞)を断行したのは,日本ではありませんか。世界初の無血革命(明治維新)を実現したのは,日本ではありませんか。東洋で唯一,欧米諸国に追いつき追い越したのは,日本ではありませんか。ロボティクス(鉄腕アトムやドラえもん)の理念を広めたのも日本ですし,スマホの発想を思いついたのも日本です。金融革命の本命本丸であるブロックチェーンを創造したのも日本です。日本人は創造性に欠けるのではありません。日本人は類稀な創造性を有する民族です。しかし,その創造的天才を受け入れる社会的土壌がないのです。
 

以下は参考書籍です。


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