見出し画像

結婚して気づいた3%の苦しい時間、それを経て見えてきたもの

結婚すると、楽しいことばかりではありません。

もちろん嫁のことを世界で誰よりも愛しているし、嫁も僕のことを愛してくれていると思います。2人でいる時間の97%は愛おしく、幸せで、かけがえのない時間です。

ただ、残りの3%——どうしようもない相容れなさを感じてしまう時や、愛し合っているはずの2人がなぜこんなにも言い争わなければならないのかと思うような時間は、97%の幸せを忘れさせるほどの苦痛をもたらします。

「ハサミを出しっぱなし」「手洗いの後がビシャビシャ」みたいな、本当にしょうもないことから始まったケンカが長引いて、1日を台無しにしてしまった時。将来の計画について話していたはずが、なぜか過去の失敗を引き合いに出して「だからアンタはダメなんだ」と罵り合っている時。建設的な話し合いが、いつのまにか自分の価値観の押し付け合いに堕してしまっている時。なぜこんなにいがみあっているのか、わからなくなってしまうような不毛な時間が訪れることがあります。

加えて、我が家は日本人と中国人の国際結婚です。お互いが見ている景色や、物事を捉える前提が違いすぎて、どこまでいっても話が噛み合わない時もあります。昔、誰かが「育ってきた環境が違うから好き嫌いはイナメナイ」と歌っていましたが、あれって真実だなと思い知らされます。

また結婚となれば、嫁の持っている家族や友人などの人間関係が自分に干渉してくることもあります。特に嫁の義実家関係にまつわる、あまりにめんどくさい人間関係に消耗したり、理解できない「しきたり」のようなものに辟易させられたことは数知れません。おそらくは嫁も同じようなことを感じてきたことでしょう。

「愛があれば、きっと乗り越えられる」なんて幻想です。2人の間に横たわる、埋められない溝の深さに絶望するたびに、「こんなことになるなら、結婚なんてしない方が良かったかもしれない」と思ってしまうことさえあります。いがみあうくらいなら、一緒にならなければ良かったのではないか、とも。そんな経験は一度や二度ではない、どころか本当に数えきれないくらいあったと思います。

+++++

でも、たぶん人間関係ってこういうことなんだと、最近は思うようになりました。

その人の好きなところだけを選んでつきあえるわけがないんです。どんな人も様々な面を持っていて、それはグラデーションだったり、まだら模様の形で表面に現れているものです。その中には自分の嫌いな色だってあります。それも含めてその人を形作っているものです。

逆もまた然りで、自分の見せたくないところ、相手を不愉快にしてしまうところを隠し続けることもできません。自分の出したくない色、出すつもりのない色が、知らず知らずのうちに相手に見えていることもあるでしょう。

それをお互いに見て見ないふりをしたり、「嫌だなあ」と思いながらも我慢しながらつきあい続けることも健全とはいえません。「そんな色見せないでよ」「うるさいな、お前だって」というふうに、ストレスをともなう衝突がどうしても起こることもあります(逆に衝突がなければ、溜まった負のエネルギーがいつかどこかで、よくない形で噴出するだけでしょう)。

その人が連れてくる、他の人間関係だって同じです。家族や友人などの中に、どうしても自分にとって受け入れ難いものを持った人がいたら、やはり関わりたくないというのが本音です。しかし、その家族や友人は目の前のその人にとって、とても大事な人だったりするのです。ある人と真摯に向き合うためには、その人を形作る要素としての周囲の関係性にも、ある程度立ち向かっていく必要もあるのです。

そういった諸々の面倒臭さを引き受けたり、時には適当にいなしたり、ある時には意見をぶつけ合うことこそが、違う背景を持った人々がともに手を取り合って生きていくためのプロセスのひとつなのです。

うちの夫婦は国際結婚ということもあり、その落差に泣かされることも多いですが、きっとどんな関係でも本質は同じでしょう。

好きなところばかりを見てはいられないということ。相手の受け入れ難い部分に向き合うこと。時には衝突もありえること。お互いの違いを理解し、妥協点を探りながらバランスを取ること。相手の大事にしているものや人を尊重すること。

そういった、時には苦痛を伴うプロセスを経た先に、両者のよりよい姿があると願うこと。その3%の時間が、本当は笑い合っていられるはずの97%の時間をより輝かせるものだと信じること。

その営みこそが、違った人生を歩んできた者どうしが共に歩んでいくために必要だということ。

そうして数々の摩擦を経てきた上で見る嫁の笑顔を、僕は前よりももっと好きになっているかもしれないということ。

それらすべてが、僕が「一人じゃ気づけなかったこと」です。

いただいたサポートは貴重な日本円収入として、日本経済に還元する所存です。