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愛国と特殊詐欺、スマホ時代の中国の若者たち

こんな記事を読みました。

いま中国では日本の福島第一原発の処理水放出の問題に対する抗議の機運が高まっていますが、その中でも目立つ行動をとっているのは若い人が多い、という話です。たしかにこれは、僕の肌感とも一致します。

過去の反日デモなどでも、積極的に日本製品をボイコットしたり、破壊活動に参加していたのは若い人が中心でした。しかし、今回の騒ぎが過去と異なっているのは、スマートフォンが広く普及し、個人による発信が容易になったことです。

若者がスマホを使いこなして、SNSやショートムービーアプリなどにそれぞれの表現で日本への怒りを投稿することで、愛国に燃える若者の姿が可視化されました。インターネットを駆使して日本の電話番号を調べ、スマホから国際電話で電凸してくるのもまた若者です。

また現在の若者、中国では「90後」(90年代生まれ)や「00後」(ゼロ年代生まれ)と呼ばれるような世代は、「豊かでスゴイ中国」を間近で見て育ってきました。都市部生まれなら、物心がついた時から近代的な街並みがそこにあった世代。田舎生まれなら、故郷が「党の偉大な領導」によってどんどん豊かになっていくのを実感してきた世代です。

そんな彼らは、習近平政権以降は顕著に激化した愛国の機運のもとで育ったこともあり、「愛国」を自明のものとして内面化している場合も多いです。そうした彼らの一部の過激な行動が、いま日本でも報道されている「日本叩き」の機運なわけです。

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以上は上掲記事の視点ですが、僕はここにもうひとつの要素があるのではないかと思っています。それはすなわち、若者に仕事がないという現状です。

中国ではこのほど、若者の失業率が過去最低を更新し続けていることが話題となっています。

その主な原因は、大卒の受け皿となるホワイトカラー職の不足と言われていますが、近頃は不動産不況の影響で各地の工事現場がストップしていたり、内需の鈍化にともなって各製造業が生産を絞るなど、ブルーカラー職や単純労働の仕事にも不景気の波が訪れています。つまり、若者は社会階層・地域を問わず仕事がありません。

やることがなく、くすぶった若いエネルギーが、そのはけ口を求めて日本叩きに向かっている面は多少なりともあるのではないかと思います。

お手元のスマホで、コストをかけることなく自分の存在を世間にアピールでき、また「愛国無罪」的に黙認されがちな日本叩きは、鬱屈した若者にとってある意味では格好の娯楽なのかもしれません。

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ところで中国の若者と不景気といえば、もう一つ思い出すトピックがあります。

それは東南アジアでの、特殊詐欺グループの問題です。

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