窓際の席は本当に羨ましいか

教室の席に着くとしたら、どこの席に着きたいでしょうか。画匠フェルメールはきっと窓際に座っている女の子が好きなので、それが見やすい位置に座ると思いますが、そのように人にはそれぞれお気に入りの席があると思います。

かくいう私は、高校生の最初のあたり、窓際の席に憧れていました。学校の周りには森林しか無かったので窓の外には森林かツララしかない景色だったのですが、外の景色をぼんやりと眺めて物思いにふける様子を見せれば、なんだかミステリアスなJKになれると信じていたのです。

そして、重要なのがストーブでした。教室にはエアコンがなかったためため、秋田の冬を越すには極寒な環境だったのですが、そんななかでも窓際にだけはストーブが設置されていたのです。

私は名字が佐藤なので、いつも教室の真ん中後ろのあたりの席でした。もっと出席番号が早いと思われるかもしれませんが、阿部、伊藤、小松、佐々木、斎藤など、あ〜さ行が多かったため、今思うと佐藤たちは意外と後の方に追いやられていました。真ん中後ろの席は先生の目にもつきやすく、そばにストーブがなくて寒いこともあり、出席番号が遅い窓際は温かそうだなあ、羨ましいなあといつも横目で嫉妬していました。

しかし、コース別授業などのおかげで、念願かなって何度か窓際の席になったことがありました。さ行のくせになんとラッキーなヤツめと思われるかもしれません。私は昔からなんの取り柄もないのですが、運だけはいいのです。前世ではきっと道に落ちている10円玉を見つけては交番に届けるなど、善行に励んでいたのだと思います。

そんな強運を駆使して手に入れた、念願の窓際の席。とても嬉しかったのですが、あたたかいと思って手放しに喜べたのは束の間でした。

いざ窓際になってみると、「インフルエンザの流行る時期だから」と換気タイムという名で窓が開放されるし、強い臭いを放つアネコムシ(カメムシ)がどこからともなくやってきます。これは、いつも教室の真ん中後ろの方でのほほんとしていた佐藤には到底分かり得ないことたちでした。窓際はあったかそうで羨ましいなあ、なんてぼんやりとした平和な思考回路で過ごしていて、その弊害を予期できていませんでした。

やはり、当事者になってみないと、その問題は分からないものです。お友達のお話にそれとなく簡単に「わかる〜」と言ってしまいがちですが、気をつけようと思います。

ちなみに、学校の教室の黒板は、日本全国でほとんどすべてが西向きになっているそうです。中学生の時に読んだ、重松清さん著の「青い鳥」という本で知りました。だから全国の小中高生はみーんな西を向いてるそうです。面白いなあ。上から見てみたいです。

授業中はみんな西を向いていても、進路は北を向くのも、東を向くのも、南南東を向くのも自由です。窓際の女の子を見るために、南を向くのだってアリなはずです。そうしたら、色んな人が色んな景色を見れて、それをシェアできたらもっと面白いだろうなあ。私はどっち向こうかなあ。

おわり

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