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みらいめがね

2021年はこれまでと比べてたくさん本を読めた年だと思います。ザッと読んだ本をあげると…
・よみがえる変態、いのちの車窓から(星野源)
・ナナメの夕暮れ(若林正恭)
・花束みたいな恋をした
・ありがとう、わたし(中元日芽香)
・「繊細さん」の本
・1分で話せ
・すみません、金利ってなんですか?
・いろいろ(上白石萌音)
・氷柱の声(くどうれいん)
・推し、燃ゆ(宇佐見りん)
などなど、、、
ちなみに買ったけど読めてないのも何冊か。今年は積読をしないようにしたい…。

こうしてならべてみると、それまでと比べてエッセイの冊数が多い気がします。小説を読んだ時に感じる、映像が頭に流れる感覚は今でも大好きだけど、最近はたくさんの人生に触れられる感じがするエッセイにはまっています。読んでよかったしこれからの生活のおまもりになる本がたくさんできました。うれしいです。あ、あと数年ぶりに少女漫画を買い始めました。

そこそこたくさん本を読んできた中で1番読んでよかった本が荻上チキさんのみらいめがねです。

評論家である荻上チキさんの存在は、星野源のANNのゲストとして放送された回に知りました。聞いたことない人だし、聴かなくていいかなあ、と思っていたけれど、ほんっっっとうに聴いてよかった…。話し方や選ばれる言葉がやさしくてあたたかくて、9月の回も10月ゲスト回も、どちらも大好きです。何かに挑戦してうまくいかなかったり、自分の思う結果にならなかったりした結果、もう自分が挑戦しても意味がないのだと挑戦できる場になってもしなくなってしまう、という(若干の意訳あり)「学習性無力感」の話も、2回目ゲストの時のメインテーマであった選挙や投票についても、心理学用語である「コーピング」の話も、とにかくあげればキリがないくらい今の私が聴いてよかったと思う話題ばかりでした。またゲストにきてほしい…。

で、そのチキさんが出したエッセイがみらいめがね、みらいめがね②です。いやーーーーー、本当に読んでよかった。私がこれまで出会ってきたエッセイというものは、「◯◯という出来事があった、私は◯◯が好きだ、◯◯という人間だ」という内容が主軸で、その人について深く知ることができる文章でした。もちろん書き手の人柄やなにを感じてきたのかがわかるし、その後その人の作品に触れる度に人となりを感じられてきました。けど、みらいめがねは私が今まで読んできたエッセイと少し異なる話でした。

例えばみらいめがね②にある「心の歯磨き」という章。うつ病に悩んできたチキさんと、精神科の主治医の先生の話です。10文字でまとめるといかに先生と調和が合うか、という内容なのですが、ただチキさんに起こった出来事が列挙されているのではなく、なぜ自分と先生の相性がよかったのか、自分がどのようにうつ病と向き合ってきたのか、ミラーリングやマインドフルネス、認知行動療法など、評論家である(評論家だからなのかはわからないけれど)、チキさんの知識や自己分析がふんだんに詰め込まれているところが、このみらいめがねの特徴だと思っています。(もちろん、毎章の終わりはチキさん自身の話でオチに帰着する、という点も含めてエッセイとして満点すぎる)

本全部を通して、私もチキさんと同じようなことでくるしんできた気がします。何かの会に参加してサブカルマウンティングを経験して疲れて帰ってきたり、何かしらのコーピング手段を手元において生活していたり。生活してきて感じてきた違和感を言語化することも、自分がどうしてこの感情になったのか、感情が細分化することも、みらいめがねを読まなければその必要性に気が付かなかったと思います。

苦しんできたのは私だけではないということ(時にこの事実が自分の首を絞めることになるのですが)、私の性格が、個性が悪いからと責めていたことがきちんとカテゴライズされた中におさまるということ、たくさん救われてきました。

1番感じたのは、月並みではあるけれど知識を身につけることの重要性です。私がこれまで何かを学んできたのは基本的に受け身ばかりだった気がします。だからなのか蓄えた知識がものすごく役に立った、という経験もそこまでありませんでした。何かを学んだら自分を理解することや誰かと関わる上で助けになることがあるのかもしれないと思えました。そして、私がそれまで知らなかった世界がたくさんありました。セクシュアリティの話も、世界の紛争問題も、エッセイから学ぶとは思わなかったです。視野が広くなりました。いやはや素晴らしい経験をした。

私はチキさんほどの沢山の経験をしてきていないし、これまでのほとんどの時間を楽しい、辛い、怒ったなどの簡略化された感情で表してきました。なのでチキさんの話でもピンとこない部分が何割かあります。けど、きっとこれからの生活で他の話もスッと受け止められるような時が来るだろうし、それが楽しみです。

比喩ではなくあと50回読みたい…。みらいめがねとチキさんに出会わせてくれた星野源にも感謝ですね。

最後に、備忘録ついでに今の私に響いた章を書いておきます。
みらいめがね
・人生病、リハビリ中
・母の思いと僕
・僕の声とラジオ
「呪いの言葉」に向き合う
・タクシーと人生
・生きづらさを取り除け
みらいめがね②
・趣味はつらいよ
・心の歯磨き
・自虐の落とし穴
・耐えるのではなく変える
・「フレーミング」に気をつけろ
・会話の作法
…多いな。


追記

これを書いた後にみらいめがねを読んでいて思い出したことがあったので。
共感することが多かったのと同じくらい、「そっか、私と違う考え(カテゴリー)の人もいるのか」という当たり前のことにも気付きました。自分の尺度で物事をみるのはきっと自分をいつか苦しめてしまうことになるし、軽々しく否定も反論もしたくない。けど受け入れ難いことも起きる。自分の考えを大切にする気持ちと周りを思う気持ちがごちゃごちゃになって、たまに身動きが取れなくなったり、発信をすることがこわくなることがあります。

全部を受け入れて抱き締められればいいんだろうけど、それにはもう少し時間がかかりそうです。けどきっとそれができたらもっとたくさんの人や物事を愛することができるのかなあと思います(最近愛とは、について考えることがあったのでそれとも関連づけてしまいました)。

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