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本棚ーなんども読むnoteー

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読みながら涙が出たnote、ニヤニヤが止まらなかったnote、誰かにおすすめしたいnote。本棚に並べておきたいnoteたち。
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#いま私にできること

企画がやりたくて入社したけど、配属は総務だった

 地方の支社に赴任して1ヶ月が経った頃、上司から会議室に呼ばれた。  「総務を中心にやってもらうからね」  担当業務を告げられた僕は、「はい、楽しみです!」と笑顔で平静を装って返事をしたけど、落胆で身体の力が抜けていくのを感じていた。  ”プランナー”や”ディレクター”みたいなカッコ良い肩書きの響きに憧れて、「企画」や「イベント」という仕事の華やかな部分に気を取られて就職活動をした。できる奴だとは周囲からあまり思われていなかったので、「驚かせてやりたい」「手の平を返させ

今年の父の日は父の命日と重なった。なぜ私は本を読むのだろう、なぜ文章を書くのだろう

小学生の頃、お父さんやお母さんが死ぬのが怖いと思った夜があった。 「それは明日じゃないし、少なくとも50年ぐらい先のことだから大丈夫」。 そう言い聞かせて、眠りについた。 10代のほとんどを「うちは普通の家庭だから、不幸なことは起こるわけがない」と高を括って生きていた。「普通」というのは、お金がありすぎるわけでもなさすぎるわけでもなく、それなりに仲が良く、暴力や離婚などの家庭内トラブルとも無縁で、どの数字をとってみても日本人家庭の平均値という意味で、だ。 だから当然の

止まった時間と透明な回転扉

自分の中に止まった時間がある。 生きることに必死だったが、どこにも向かえなかった時間。精一杯もがいたが、少しも動けなかった時間。 希望はなかったが、絶望しないように必死だったときの記録と記憶。 *** 二年前のある日、有楽町線の電車に乗っていた。当時通っていたカウンセリングルームの帰りか散歩の帰りか、よく覚えていないが、めずらしく外出した日だった。 自分の気持ちがわからなくなってから、しばらく時間が経っていた。 うれしいとか楽しいとか悲しいとかつらいとか、なにもわ