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「特別」なのは

「特別」

思わず、写ルンですのシャッターを切った。
2019年の夏、まだ新型コロナウィルスの存在なんて、全く知らなかったとき。親友といっしょに、日常から逃れたくて旅をした。

初めてやってきたこの土地には、田んぼと海が一度に見える場所があった。8月の終わり、稲穂が頭を垂れ、風に揺られるその美しさに息をのむ。

「こんな景色を、日々見ることができたらなあ」

心に浮かんだその一言を、すぐに打ち消した。「移住なんて、そんな大それたことは私にはできひんし。」

だから、私は写真を撮った。
いつでも見られるように。





それから1年半後、私は京都府京丹後市に移住した。この景色を見たいからという理由ではなかったけれど、間違いなくこの時の感動が決め手の一部になった。

自然と人が交わることで生まれる美しさが、ここにはたくさんある。
はっきりとした四季と、目の前の自然をよく見て、程よい距離で関わりつづけている人々の営みは、今まで私の知らない世界だった。でも、不思議なほどによく馴染んだ。


旅は、特別だ。


何もかもが特別に見えるし、何もかもを特別に感じる。日常から逃れて、いつもと違う自分になれた気さえする。その感覚を手にしたくて、旅に恋焦がれる。今も。

あの時「特別」だと思った場所で暮らしても、次の「特別」を求めている。
遠くに行きたい。その気持ちが、なくなることはない。

でも。
逆を考えてみたら。

日常の中にも、「特別」はある気がする。
二度とない一瞬や、ぎゅっと心が掴まれるような感動が、きっとある。そして、それは自分では気づかなくても遠くの誰かにとって「特別」なこともあると思うのだ。

変わらない景色の中で、旅するように。
「言葉ギャラリー」の中もそんな時間になっていれば、とても嬉しいなあと思う。

京都府京丹後市の情報は、下記がおすすめです。

・丹後暮らし探求便


・たんたんポケット


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