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下水道がない土地で下水処理の方法を考える 検討編のつづき

 これを書いている時点ですでに下水処理の設備はできている。
使い始めてから2ヶ月程度だが、今のところ臭いはほぼしない。
たぶんトイレットペーパーも分解されているのだろう。
使用状況については動きがあったらまた書こう。

 今回は浄化槽以外の排水処理方法を見ていこうと思う。


・浄化槽以外の排水処理方法

・バイオジオフィルター

 浄化槽以外と書いたが、バイオジオフィルターは浄化槽などから出た放流水を多孔質の砂利に植物を植えた水路に流すことでさらに浄化を図るものである。
魚などの住める水質まで浄化されるため、池に流すことができる。

AGURI JOURNAL
「”いのちのてざわり”を体験してほしい」音楽家・小林武史が見出した農業の可能性とは

 これは木更津のクルックフィールズにあるバイオジオフィルターの模式図である。

 クルックフィールズはMr.Childrenなどのプロデューサーで有名な音楽家 小林武史さんが手がけた、
人と農と食とアート 自然の協奏曲を奏でる施設である。
意識高い系の人が好きそうだ。今度意識高い系の人を見に行ってみよう。結構近くにある。

 環境問題の意識が高い人を否定する訳ではないのだが、昨今、環境問題とか地球温暖化とか騒いでいるのはいったいなんなのか。
グレタ・トゥーンベリさんがどんな目的で活動をしているのかは知らないが、この世に金儲け以外で環境問題に興味がある人というのは本当にいるのだろうかと疑問に思う。
そんなこと気にする前に足元にその他の問題が山積みだろ。

 ビジネス目的以外で環境問題に興味のある人がいるとしたら、たいへん心に余裕のある人か、現実逃避癖のある人なのだろう。

 玄関前にいつも生ゴミが散乱しているとか、近くの川に魚が浮いているとか、近所の住人が立て続けに原因不明の腫瘍で入院したとか、外に出ると涙と咳が止まらないとか、土砂崩れで家を失ったとか、そういうことがなければ環境問題には目覚めないと思うのだ。
実際、そんな状況が日本でも1970年代頃にあり、それは住民運動に発展し、裁判などになり、その結果、だいぶ改善された。
土砂崩れについては現在進行形であり、山間部に設置されたメガソーラーに明確に起因するものが一部ある。
裏山にメガソーラーができることに反対する人の気持ちはよく分かる。

 メガソーラーには様々な問題があり、これを推し進める人たちが環境意識の高い人として見られていた様は実に滑稽である。最近はメッキも剥がれてきつつあるが。
別に小林武史さんが再生可能エネルギーに傾倒していたことをバカにしているわけではない。
メガソーラーだけでなくソーラーパネルにもさまざまな問題はあるが、全てを否定しているわけではない。便利は便利である。

・エコロンシステム

エコロンシステム

 土壌浄化法(ニイミシステム、土壌被覆型礫間接触酸化法)と呼ばれる方式の一つの形態である。
構造は単純で、汚水溜めの上に多孔質物質の層を乗せ、その上に土を被せるというものである。
汚水溜めは嫌気的条件、多孔質層は好気的条件となり、それぞれ条件にあった微生物が繁殖することにより、排水がきれいになっていく。
もともとの微生物は土壌内にいるもので、条件を整えてやればシステム内にやって来て、勝手に住み着く。
微生物による浄化なので、そういう意味では浄化槽と原理は似たようなものだ。

 浄化槽では処理された放流水は最終的に河川などに流されてしまうのに対し、エコロンシステムでは土壌に吸収され、植物へ水分と養分を供給することができる。(バイオジオフィルターと似たようなものだ)
デメリットはスペースを取ることぐらいだろうか。

 エコロンシステムの名称の由来は汚水溜めの上に乗せる独自開発の多孔質ブロックである。
この多孔質ブロックででできた層にはいくつか役割がある。

一つは好気的環境の生成である。
多孔質層は空隙があることで空気を含み、好気条的件下で活性化する微生物が生息しやすい環境を整える。

二つ目は表面積の拡大である。
多孔質物質は体積あたりの表面積が大きいため、生息する微生物の密度が上がり、排水処理能力が向上するのだ。

三つ目は毛細管現象により水を吸い上げる効果である。
多孔質層はスポンジのように汚水溜めの水を重力に逆らい、下から上へ吸い上げてくれる。

多孔質物質の特性を利用した、すごくうまい仕組みだと思う。

値段が高いのは全然普及していないからである。

エコロンシステムについて詳しく知りたい方は下記をご参照ください。
エコロンシステムの開発者 冨安さんのインタビュー
ミツカン 水の文化センター
排水を自宅で処理して地球に還す

〜既成概念を覆す「家庭排水浄化装置」〜 
エコロジーコロンブス福岡代表 冨安 貢弘

・下水処理技術の重要性について

・「ゴミ」問題

 環境問題意識高い系のことを書いてしまったので、
少しだけ環境問題関連のことを書いておこうと思う。
(意識高い系って最近あまり聞かない気がする)

廃棄物、いわゆる「ゴミ」についてである。

 日本では1年間でどれくらいのゴミが出ているのか見てみよう。
下記、令和3年度(2021年度)に排出されたの廃棄物の量である。

令和3年度(2021年度)
・一般廃棄物(家庭から出るゴミ)4,095万トン 
・産業廃棄物  3億70,568トン

数字を見てもピンとこないが、割合で見ると、全体の1割が家庭から出るゴミで、9割が産業廃棄物である。
産廃のほうが多いと予想していたが、ここまで差があるとは思わなかった。
廃棄物のメインは産廃である。

産業廃棄物といってもいまいちピンと来ない。
そこで産廃の中身がどうなっているか見てみよう。
下記が産業廃棄物の内訳のグラフである。

令和4年度事業 産業廃棄物排出・処理状況調査報告書 令和3年度速報値

汚泥 43.9%、動物のふん尿 21.9%、この2項目で6割を超えている。
プラスチック類については触れないでおこう。

汚泥は主に下水処理場から排出されるもので、動物のふん尿の処理についても、下水処理の技術が応用できる分野である。
汚泥と動物のふん尿合わせて65.8%、これが廃棄物のメインであり、ここに莫大なコストがかかっている。

ゴミ問題というものを語るにあたり、下水処理の問題を避けて通ることはできないのだ。

・下水処理事業財政破綻、のち国家衰亡

 下水道事業の抱える問題は汚泥の問題だけではない。
この前、たまたま房日新聞を手にしたら館山市の下水処理事業についての記事があった。(2024/3/6)
 記事によると、館山の下水処理事業は使用料収入だけでは費用が賄えず、毎年、一般会計から3〜5億円支出し、穴埋めをしているそうだ。
そのため館山市は整備計画休止、料金値上げの検討をしているとのことだった。
ちなみに館山市の公共下水道の利用人口は4738人だそうです。

 これは館山市の例だが、公共下水道は赤字が続いているところがかなり多いらしい。(あまり調べてないのでどの程度か詳細は不明)
今後、人口減少が続くような地方都市では公共下水道の維持は不可能である。
地方都市のみならず、そこそこの規模の中核都市でも下水道の維持は困難になるだろう。

 下水道事業は生活する上で必要不可欠なインフラであるが、近い将来、ほとんどの自治体で大幅に赤字が膨らみ、財政破綻向かうだろう。
そうなった時はもう手遅れである。

本当に手遅れになる前に下水道事業の抜本的な見直しを図る必要があるのだ。

と、こうい自治体、公共事業の財政破綻論はもうだいぶ前から聞くが、実際どの程度信憑性があるのかは良く分からない。

 ただ一つはっきり言えるのは、この先税金や社会保障費とともに、第二税金とも言える上下水道、電気料金などの価格は上がり続けるということである。
そして、能登半島地震で顕在化しつつあるように、過疎化が進む地域では一度破壊されたインフラの復旧は進むことはなく、もう元には戻らないのである。つまり人が住めなくなるということだ。

首都圏を除き、ほとんど全ての自治体で人口は減少している。
たまに子育て支援とかで人口が増加したという自治体があるが、あれは近隣の市町村から移動してきただけで、少し広い視点で見れば±0である。
首都圏、とりわけ東京は人口が増加する一方だが、東京の人口が増えるということは、どこかの人口が減っているということだ。
そもそも日本全体で見れば人口は減少の一途をたどっているので、その中で人の取り合いをして少しばかりの人口の増減で一喜一憂しても仕方ないだろう。日本は過疎化しているのである。

過疎化の解決策として移住して人口を集中させればいいという論調がある。
能登半島地震でも過疎化している被災地の復興は諦めて集団移住を唱える人がちらほら出てきているが、問題はそういうことではない。

もし移住を進めて人口が集中した都市部で大規模災害があった場合、どうなるのかということだ。首都直下地震は起こり得るのだ。

災害大国の日本において、このような移住政策の行き着く先は大袈裟でもなんでもなく国家衰亡である。
この国において人は分散して住むしか選択肢はないのだ。
しかし、そうはいっても被災した過疎化地域を元に戻す意味も体力も無い。

移住でもなく従来の復興政策でもない第三の道を探る必要がある。

ということで話が大きくなり過ぎてしまったが、毎日使うものなのでインフラについて少し考えてみてもいいと思う。

下水処理についても語る意義を見出したところで検討編は終わり、製作編に続く。

・参考文献

・地球のくらしの絵本(全5巻) 13,750円 四井真治 (著) みやざきひでと (人形・ジオラマ)

バイオジオフィルターだけでなく、クルックフィールズ全般に関わった四井真治さんが書いた本である。絵本とあるが、絵ではなく人形とジオラマで作っているところにこだわりを感じる。確実に絵よりも金と時間がかかっている。5巻セットで13,750円、1冊あたり2,750円、いい値段である。

 子供向けの本を侮ってはいけない。
教育関連の子供向けの本というのは全国の図書館、小中学校によって主に購入されており、多少高くても買ってくれるため、部数が読め、売上げも固いのである。
実際、このへんの売上げでもっている出版社が何社も存在している。
ある程度予算がかけられるし、その道の専門家がかなり専門的なことを書くのだ。

 図書館に行って子供向け本のコーナーを見ると、その内容の充実っぷりびっくりする。
こんなの子供はたいして興味ないだろという本が結構ある。
しかし読まれなくても売れればいいのだ。
もったいないので大人こそ読んだほうが良い。

緩速ろ過の専門家、信州大学名誉教授の中本先生もこういうルートで本を作って欲しい。
その際、ちいかわやすみっこぐらしとコラボすると尚良い。
四井さんも信州大学出身だってさ。

・下水道革命 河川荒廃からの脱出 石井勲、山田國廣他(著)

石井式浄化槽というものがあり、それについて知りたかったので購入した。
この本の著者である石井勲さんを中心に開発された浄化槽である。

現在流通している浄化槽のもとになったのはこの石井式浄化槽だと思う。

多層構造、流入水量を一定にするバッファー機能、ばっ気層から嫌気層への返送構造など、現在の浄化槽は石井式をもとに作られているとしか思えないほど構造がよく似ている。

石井式で処理された排水は飲めるくらいの水質まで浄化されるという。
放流水質が良いのは上記の機構が優れているという点もあるが、単純にでかいことが効いていると思う。
本の冒頭に5人槽の写真が載っているが、見たところ現在の5人槽の2~3倍はありそうだ。
現在の浄化槽でも大型化すれば放流水質のさらなる向上は簡単だろう。
しかし製造、輸送、施工コストを考えると、コンパクト化は必須である。
庭も広くはできないし。

現在の浄化槽に見慣れてしまったため、石井式浄化槽そのものについては正直目新しさは感じなかった。
(石井式のほうが先でルーツなはずだから、この書き方はおかしいが)

この本の中でとりわけ面白かったのは、柳川の水にまつわる話である。
柳川の水との関わり、歴史はとても興味深いものだ。
これについては別でまた書こう。

この本でもほんの少しだけ触れられているが、
「柳川堀割物語」という柳川をテーマにしたドキュメンタリー映画がある。
あの宮崎駿と高畑勲が映画「風の谷のナウシカ」のヒットで得た利益で作った映画である。
約3時間、けっこうな大作だ。

この映画の制作期間は1年間の予定だったが、監督の高畑勲が遅らせたため3年間に延びた。しかも高畑勲は宮崎駿が用意した制作費を使い切ってしまう。そして宮崎駿は自宅を抵当に入れるのだ。
二人ともちょっとどうかしている。

この作品を経て、ジブリはその後、数々の名作を世に送り出していくことになる。
ジブリの歴史は高畑勲の浪費と宮崎駿の借金から始まったのだ。


予告編があったので観てほしい。つまんなさそー

柳川割堀物語を見て、柳川に行こう。

・土壌浄化法の実際 毛管浄化研究会(著)

この本は土壌浄化法(ニイミシステム、土壌被覆型礫間接触酸化法)に関する専門書で、読んでもよく理解できない部分があるが、実際の運転状況をもとにかなり細かいデータが載っている。

この本の出版年は1987年、先ほどの下水道革命が1989年出版、柳川堀割物語も1987年公開、浄化槽法の施行が1985年ということで、この頃、下水処理について大きな動きがあったようだ。
河川の汚染状況が悪化していたというのが理由だろうか。

何事も黎明期というのは後の時代では考えられない苦労があるものだが、
その苦労の分、やりがいや楽しさを感じられる時期でもある。

この本からは、新しい下水処理技術を確立しようと奮闘した人たちの情熱を感じる。
しかし、悲しいことに土壌浄化法というものはほとんど普及していない。
情熱だけで世の中は動かないのだ。

これから先、汚泥と動物のふん尿の処理が立ちいかなくなったとき、古くて新しい技術として土壌浄化法が復活する可能性は若干残っているかもしれない。

この本、なんと中古で8,000円もした。
35年前の本なのにとてもきれいな状態だった。帯もついていた。
最初に買った人、読んでないだろ。

うんこ博士を名乗る人
しかしその正体は趣味でうんこグッズを作って売ったりしている人である。
お風呂に入る時以外はいつもうんこ帽子をかぶり、うんこ棒を持っているよ!
(胸につけているのはうんこのアップリケである)


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