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ショパンコンクールからの飛翔1年

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オタクファンから見た角野隼斗さんのショパンコンクール回顧録的な
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-ワルシャワ7/20-(第18回ショパン国際ピアノコンクール予備予選/角野隼斗)

慄える細い指が、白い鍵盤をなぞる。角野隼斗がクラシックを弾くときの厳かな儀式。静かに、静かに。彼がこんなに緊張しているのを見たのは初めてかもしれない。 全神経を指先に集中させてショパンへの募る想いをぽつりぽつりと語り始めた。ノクターンOp.48-1がホールに微かなこだまを響かせる。静かに燃える音が灯る。青白い炎。この音だ。この音をずっと待っていた。どんなに緊張していても、紛れもなく彼の音色だとわかった。どうか、この音がショパンに届きますようにと、祈るような気持ちで聴き入った

羽化

ショパンコンクールの予備予選のあと、推しは静かだった。 そして今の彼は以前と違う空気を纏っている。 小ネタも忘れてないし、本質(と私が勝手に感じてる部分)は変わってない。だけど明らかに違う。 思い至ったのは、これは「羽化」なのではないかなと。静かにしていたのは、蛹化中だったのかなと。 蛹化中に何を考え、何を感じていたかはわからない。帰国後のインタビューが公開されて、ほんの少し心の内を見せてもらうことができたけど、彼の言葉と心は少し違うように感じることがある。嘘をついて

角野隼斗が世界に見つかってしまった

自動翻訳)角野隼人がショパンとジャズを演奏しているのを聞いていました-並外れた芸術性!私たちは今、熱心なファンです- (ハヤトのトは斗!) Emanuel Axを知っているだろうか。このツイートを昨日フォロワーさん経由で見た時は、驚きすぎて現実味を感じないほどだった。何を隠そう、私は彼のファンだから。さらりと「角野隼斗の熱心なファンです」とか言っているが、とんでもない人なのである。 私は1、2年前にYouTubeで彼を知ったニワカだが、出会い方が衝撃的だった。 手前で膝

成長する角野隼斗の『胎動』

ここのところずっと、8月10日にデジタルリリースされた角野隼斗の新曲『胎動 -New Birth-』を聴いている。 新曲、といっても、初めて私が聴いたのは今年の1月、角野の全国ツアーでのことだった。 そこから何度か、YouTubeライブや配信などでも聴く機会があった。聴く度に毎回、受ける印象が少しずつ違っているのが面白かった。ミュージシャンは同じ演奏を何度もしない。だから、違うことそのものは、別に角野に限った珍しいことではないのだが、気付いたことがある。 角野の『胎動』

ポーランド国立放送交響楽団×マリン・オルソップ×角野隼斗

2022年9月7日 川口リリア メインホール 19時開演 この日は、全国11都市を巡る来日ツアーの初日でした。まずなによりも、皆さまが無事に来日でき、こうしてお目にかかることができただけで、感無量でした。ようこそ日本へ!! そして、私にとっても、そして角野さんにとっても、特別な一日。忘れないように感想を書いておきたいと思います。なるべくいろんな人が目にしていいようにとは意識して書くつもりですが、やっぱり想い入れが強い公演なので、ファン目線がいつも以上に濃いめになるかと思い

ポーランド国立放送交響楽団×マリン・オルソップ×角野隼斗(山形公演)

9月18日、初日の川口公演から10日後。ツアーファイナルの前日となる山形公演にも行ってきました。 初日と同じプログラムなので、数公演を経て変化したと思われる彼らの空気感や音楽の印象を書こうと思い立ったものの、会場について、公演前後のできごと、かてぃんさんの音楽性や人物像についてなどアレコレ語っています。正直コンサートレポートの体を成していないかも。 というわけで、音楽の感想だけに興味がある方は目次から【開演から終演まで】を選んでお進みください。(ここも脱線して語っていますが

角野隼斗は世界に試され続ける道を選んだ

角野隼斗が自身のYouTubeに久々の動画を上げた。 40分を超える大作【ショパン: ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品11】 動画が公開された10月17日はショパンの命日。数日前のYouTubeライブの折に「17日21時プレミア公開」と告知され、ファンの間では何が投稿されるかの予想も盛んに交わされた。 深夜0時を30分ほど過ぎた頃、内容に関しての知らせが。 通知がきたとき、私はこの曲をSpotifyで聴いていた。CDが近く発売予定であるため、ショパンの命日である17日

隠されたメッセージ:Video making team Prize for the best performance

先日、第18回のショパコンから1年の節目に、主催のショパン研究所が動画を公開しました。 動画の概要欄にこんな一文を添えて。 動画には、優勝したブルースの演奏に乗せて、ファイナリストたちの姿と共に、白い文字でコンクールを統括する言葉が記されていました。87名の参加者がいて、17か国からの参加で、15日間の審査で……とそこで私の目に、にわかに信じられない一コマが飛び込んできたのです。 「え、Hayato Sumino!?」 慌てて時間を戻して再生しなおすと、間違いなく、角野