見出し画像

お金の問題提起 第2弾 ふるさと納税にモノ申す

人間の醜い金銭欲について語る第2弾です。多くの人は、お金に対して「汚い」「いやらしい」「下品」といったネガティブなイメージを持っているでしょう。そのため、お金の話をすること自体が、タブー視されたり、品のない行為と捉えられたりします。しかし、お金が関係する問題を放置することもできません。勇気をもって指摘する必要があります。

今回は、ふるさと納税の問題点を指摘します。

ふるさと納税はクラウドファンディング?

ふるさと納税は、自分が応援したい自治体に寄付することで、地域活性化に貢献できる制度です。近年、その認知度と利用者数は年々増加しており、2023年には納税額が約8000億円に達する見込みです。
しかし、多くの人が「お得な返礼品」にばかり目が行き、その本質的な仕組みを理解していないのではないでしょうか。

1. ふるさと納税とは?

ふるさと納税は、自分が生まれ育った故郷だけでなく、応援したい自治体に 寄付 することができる制度です。寄付した金額に応じて、地域の特産品などの 返礼品 を受け取ることができます。

2. ふるさと納税のメリット

ふるさと納税には、以下のメリットがあります。

  • 地域活性化に貢献できる

  • 返礼品を受け取ることができる

  • 節税効果がある

3. ふるさと納税と寄付金控除

ふるさと納税は、寄付金控除の対象となるため、寄付した金額から2,000円を差し引いた額が所得税と住民税から控除されます。

4. ふるさと納税とクラウドファンディング

ふるさと納税は、クラウドファンディング と類似点が多くあります。

  • プロジェクト: 自治体が取り組む地域活性化プロジェクト

  • 支援者: ふるさと納税を行う人

  • リターン: 返礼品

ふるさと納税は、自分が応援したいプロジェクトに 支援 することで、 地域貢献と返礼品を同時に得られる、まさに 社会貢献型クラウドファンディング なのです。

ふるさと納税は問題が多い制度


ふるさと納税は、納税者が自分の選んだ自治体に寄付を行うことで、寄付金控除を受けられる制度です。地域活性化や納税者の選択肢拡大などのメリットがある一方で、以下の問題点も指摘されています。

1. 返礼品競争による本来の趣旨の希薄化

寄付金控除を受けるためには、返礼品を受け取る必要があります。そのため、多くの自治体は寄付金を集めるために返礼品競争を繰り広げています。高額な返礼品を贈る自治体が増え、本来の趣旨である「ふるさとを応援する」という目的が薄れてきているという指摘があります。

2. 自治体間の格差拡大

返礼品競争に勝ち抜けるのは、財政基盤が強い大都市や観光地など、限られた自治体です。多くの地方自治体は、返礼品を用意するための財源がなく、ふるさと納税による税収減に苦しんでいます。

3. 住民間の不公平

ふるさと納税を利用できるのは、一定以上の収入がある人だけです。そのため、低所得者は制度の恩恵を受けにくく、住民間の不公平が生じるという問題があります。

4. 行政サービスへの影響

ふるさと納税によって、自治体の税収が減少します。特に、人口流出が著しい地方自治体では、税収減が深刻な問題となっています。税収減は、行政サービスの低下につながる可能性があります。

5. 制度の複雑さ

ふるさと納税の制度は複雑で、手続きも煩雑です。そのため、利用を躊躇する人が少なくありません。

6. 寄付金の使途の不透明性

ふるさと納税の寄付金がどのように使われているのか、透明性に欠けるという問題もあります。

7. 環境負荷

返礼品の配送による環境負荷が指摘されています。

ふるさと納税は、地域活性化や納税者の選択肢拡大などのメリットがある一方で、上記のような問題点も存在します。これらの問題点を解決するために、制度の見直しや運用方法の改善などが求められています。


ポータルサイトの手数料問題

ポータルサイトの手数料問題

ふるさと納税のポータルサイトの手数料問題は、近年ますます注目を集めている問題です。ふるさと納税ポータルサイトの手数料問題は、大きく3つの側面から捉えることができます。

1. 高すぎる手数料率
多くのポータルサイトは、寄付額の8~15%の手数料を自治体から徴収しています。これは、他の寄付金控除制度と比べて著しく高い水準であり、自治体にとって大きな負担となっています。

2. 不透明な手数料体系
多くの場合、手数料は寄付額に応じて段階的に設定されていますが、その詳細は公開されていません。そのため、自治体は比較検討が難しく、不当に高い手数料を支払っている可能性があります。

3. 手数料競争の弊害
ポータルサイト間の競争が激化する中、手数料を下げることで自治体を誘致する動きが活発化しています。しかし、これは返礼品競争の激化や、自治体の財政負担の増加につながる可能性があります。

対策を講じたが・・・

これらの問題に対して、政府は2023年10月から、ポータルサイトへの手数料を寄付額の50%以下に制限するなどの対策を講じました。しかし、依然として下記の課題が残されており、抜本的な解決には至っていません。

自治体の財政負担の増加

高額な手数料は、自治体の財政を圧迫します。本来、ふるさと納税は地域活性化のために活用されるべきですが、手数料によってその効果が損なわれてしまう可能性があります。

返礼品競争の激化

ポータルサイトの手数料を負担するため、自治体は魅力的な返礼品を提供しようと競争します。その結果、過剰な返礼品競争が発生し、財政悪化や地域特産の軽視につながる可能性があります。

寄付者の負担増加

手数料は寄付額から差し引かれるため、実質的に寄付できる金額が減ってしまいます。これは、寄付者の負担増加につながり、制度の利用を抑制する可能性があります。


ふるさと納税不要論

ふるさと納税不要論

ふるさと納税は、地域活性化に一定の効果を上げている一方で、さまざまな問題も指摘されています。政府は、地方格差の是正や返礼品競争の抑制など、制度の改善に取り組んでいますが、課題の解決には更なる議論と制度設計が必要でしょう。
ふるさと納税の制度は必要なのでしょうか。

ふるさと納税不要論の主な論点

  • 地方格差の拡大: 人気自治体への寄附が集中し、財政基盤が脆弱な自治体はさらに苦境に陥る。

  • 不公平性: 納税額の高い人ほど恩恵を受けやすく、低所得者にとっては負担になる。

  • 本来の目的と乖離: 返礼品競争が過熱し、地域活性化という本来の目的から遠ざかっている。

  • 制度の複雑性: 確定申告やワンストップ特例の申請など、制度が複雑で分かりにくい。

  • 行政コストの増加: 自治体側の事務処理負担や返礼品調達コストが増加している。

ふるさと納税は、地域活性化と納税者の選択肢拡大という目的を持つ、画期的な制度です。しかし、現状のままでは、地方格差の拡大や不公平性などの問題が懸念されます。制度の持続可能性を確保するためには、問題点の解決に向けた議論を深め、より効果的で公平な制度設計を目指す必要があります。

ふるさと納税の代替案
ふるさと納税に代わる地域活性化策としては、以下のようなものが考えられます。

  • 地方税の使途を明確化: 納税者が自分の税金がどのように使われているのかを明確にすることで、地域への貢献意識を高める。

  • 地域の魅力向上: 観光資源の開発や産業振興など、地域の魅力を向上させることで、移住や定住を促進する。

  • 地方創生への投資: 国や民間による地方創生への投資を拡大することで、地域経済の活性化を図る。

ふるさと納税は、地域活性化の可能性を秘めた制度です。しかし、制度の持続可能性を確保するためには、問題点の解決に向けた議論を深め、より効果的で公平な制度設計を目指す必要があります。同時に、ふるさと納税に代わる地域活性化策も検討していくことが重要ではないでしょうか。

寄付金控除でふるさとを応援
ふるさと納税制度は、ふるさと以外の自治体でも利用できます。もはや、ふるさと納税とは呼べないでしょう。返礼品が目的ならオンラインショッピングと変わりません。

ふるさとの自治体に寄付をすることで、寄付金控除を利用することができます。ふるさとを応援して節税もできる方法です。寄付金控除とは、寄付をした個人や法人に税制上の優遇措置を与える制度です。寄付金控除には、次の2種類があります。

  • 所得控除: 寄付金の額を一定の範囲で所得から控除できる制度です。

  • 税額控除: 寄付金の額を一定の範囲で税額から控除できる制度です。

所得控除と税額控除の主な違いは、控除を受けるタイミングです。所得控除は、寄付を行った年の所得税の計算時に適用されます。一方、税額控除は、寄付を行った翌年の所得税の計算時に適用されます。
寄付金控除を受けるためには、次の要件を満たす必要があります。

  • 寄付金が、国や地方公共団体、公益法人など、一定の団体に寄付されたものであること。

  • 寄付金が、その年の所得金額等の40%を超えない額であること。

  • 寄付金控除を受けるための書類を、確定申告時に提出すること。

寄付金控除の対象となる主な寄付金には、次のようなものがあります。

  • 国や地方公共団体への寄付金

  • 公益法人への寄付金

  • 災害義援金

  • 政党への寄付金

  • 特定の教育機関への寄付金

寄付金控除は、社会貢献活動を行う個人や法人を支援するための制度です。寄付金控除を活用することで、納税額を軽減しながら、社会貢献活動を行うことができます。自治体に寄付することで、ふるさと納税と同じ効果が得られます。そもそも、ふるさと納税は、個人住民税の寄附金税制が拡充されたものなのです。

究極のふるさと納税

ふるさとや任意の自治体を応援する方法に、住民票を移す方法があります。ふるさと納税が始まる前の話ですが、実家に住民票を移して、ふるさとに納税していました。全額を納税できますから、この方法は究極のふるさと納税と言えるでしょう。
住民票を移す方法は、スポーツ選手や芸能人も使っています。田中康夫さんが、長野県知事時代に「厳しい財政の中でも在宅福祉に力を注いでいる意欲的な自治体に税を納めたい」として、下伊那郡泰阜村に居を構えて、住民票を移したのは有名な話です。
ただし、居住の実態がないと罰金が課される可能性があります。つまり、実際に住んでいない場所に住民票を移すことはできません。給付金や選挙などの手続きで困ることもあります。住民票を移す時は、この点に注意してください。
余談ですが、居住地に住民票を戻したところ、ふるさとの市役所の方から「ふるさとに納税してもらえませんか」とお願いされてしまいました。このため、二拠点生活にして、ふるさとに納税していた時期があります。


ふるさと納税について考えてみよう

ふるさと納税で、納税先や用途が選べることは素晴らしいと思います。しかし、税金は住んでいる地域で使われるものです。ふるさと納税が増えすぎると、住んでいる地域の税収が減ります。その結果、充分な公共サービスが受けられなくなる恐れがあります。自分で自分の首を絞めることになりかねません。

ふるさと納税は、なにかと問題が多い制度です。納税と言いつつ、実質は寄付金であるのは無理があるでしょう。ふるさと以外にも適用できるのですから、看板に偽りアリです。豪華な返礼品につられるのは本末転倒です。また、高額な手数料を受け取っているポータルサイトが野放しなのは、政治家と癒着があるのではと疑ってしまいます。もちろん、そんなことはないと信じたいです。しかし、本来、税金として収めるお金が、民間のポータルサイトの利益になっているのは看過できない問題です。

限度額を設けて、住んでいる地域の税収に影響が出ないように配慮したうえで、応援したい任意の地域に納税ができるようになって欲しいと思います。そして、納税者を返礼品で釣るような真似は、止めた方がいいのではないでしょうか。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?