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「ビション・フリーゼがいた」

某日、散歩をしてみた。
もうあまりにも動いていなくて、かといって働くなどして他人と関わる勇気も湧かず、しかしスポーツゲームの類は間違いなく長続きしないので、"身一つで周りを眺めていたらいつの間にか運動ができている"散歩をとった。リングフィットアドベンチャーはオンラインで買うべきである。
出来るだけ見慣れない景色で、尚且つ景観にノイズの少ない場所を歩きたかったので、近所にある河川敷を選んだ。河川敷の脇にある坂道を下り、散歩スタートである。
夕方だったからか、まず多かったのは犬の散歩をしている人だ。犬を飼っている人は毎日運動しなければならないから健康そうだ。スタンダードな犬種が多いのを「そら田舎やしな」と横目に見ていると不意に最近出てきたアーバンな犬種も通りかかったから驚いた。犬種問わずみんな可愛かったのは言うまでもない。わたしはポメラニアン派だ。それと同じくらい多かったのはジョギングしている人だ。橋の上にもいた。ここまで書いて気づいたが、そもそも河川敷に降りる用事なんて犬の散歩とジョギングしかない。
人と犬だけではなく、鴨もいた。15羽くらいの集団で芝を啄んでいた。試しに近寄るとそっと離れていくので、追いかけまわしたい欲を抑えつつ道に戻った。
川を見るときは、橋の土台等のどの辺りにコケやら水垢やらがついているかに注目する。大雨のときはそこまで水位が上がっているということだ。今回散歩に選んだ川はなかなか高さがあった。夏は河川敷が沈む日もあるだろう。
しばらく歩いていくと、さあ上に上がって下さい(漢字がメチャクチャだ!)と言わんばかりに坂道が出てきた。河川敷はそこで一旦途切れており、登らざるを得なかった。
普通の道に戻ると知らん建物があった。名前を見てもよくわからなかった。こんなところ自転車でも来ないので本当に初めて見た。そして建物の前にまた犬がいた。犬を連れたご婦人方が話している。羨ましい。わたしも犬を飼って散歩の会合やドッグランに突撃してみたいものだ。犬の横を通ると、1匹がこちらに歩いてこようとした。良い子だ。わたしはこういうときに撫でに行けない人間なのでそのまま通り過ぎた。その先をああしてこうして歩いていると、見慣れた橋に出た。夏に用があって来たところであった。時計を見るともう30分経っていた。景色を眺めながらヨタヨタさまようだけでこんなにも時間が死ぬ。ここで引き返さないと往復1時間を超過する。帰ることにした。
帰りは橋を渡って向こう岸を歩いた。行きとは違ってあまり整備されておらず、人とすれ違うことはなかった。時折頭上をカラスやサギが飛び、フンを落とされないかヒヤヒヤした。この頃になるといよいよ陽が沈みだしており、車も増え、今日が終わりを迎えようとしていた。
行きで河川敷降りたあたりまで戻ると流石に整備は行き届いており、何ら問題なく上に行くことができた。橋を渡って帰路に着く。歩き始めたときは途中でどこかに寄ろうと思っていたが、普段ロクに動かさない脚が痛みを訴えていたため大人しくまっすぐ帰った。

家につき居間に向かうと、母が動画を観ていた。母は次に見る動画を選びながら聞いてきた。

「どうだった?」

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