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ひとりでいるときにマスクを外した方がいい理由

コロナ禍で急速に開発と生産が増えた不織布マスク。製品によって機能に差はあれど、「マスクは防御するためではなく攻撃しないようにするためのもの」と言われることもあるように、きっちりかっちりウイルスを防いでくれるわけではない、どちらかというとクシャミや咳の際に飛び散る飛沫を大幅カットするためのアイテムだそうだ。たしかに安いマスクだと頬や顎のあたりがガバガバである。
ただ、ウイルスレベルで小さいものは防げなくても、ある程度大きな分子は防ぐようだ。
というのも、2年前のコロナ禍ど真ん中。あまり多くを話すとプライバシー保護の観点からして危険なのでかなりぼかすが、定期的に自然豊かな某所に通っていた。どのくらい豊かかというと、当時住んでいた家の近くでは1種類分しか聞こえなかったセミの声が、某所では2種類3種類に増えたほどだ。そう、季節は夏真っ盛りだった。
某所へ通い出して2回目くらいだったか、違和感を覚えた。何かが足りない。あまりにも味気ないというか。周りでは色鮮やかな緑の葉をつけた木々が揺れ、アスファルトの敷き詰められた地面は通り雨で湿っていた。

ああ、そうだ。匂いだ。

こんなに自然豊かな場所に来たら、植物の香りがするはずだ。しかも、雨上がりなら尚更。もしかして?……そう思ってマスクを外すと、案の定だった。
青々とした草の匂いが鼻腔を通り抜け、ようやく視覚情報と嗅覚情報が一致した。同時に、マスクの思わぬ性能に恐怖する。こんなにニオイを遮断してしまうものだったのか、と。
それからというものの、他人と会話することがない限りできるだけマスクを外すようになった。田舎を辿って生きている人生なので、どこで外しても草の香りがする。無機質な布のニオイより、こっちを嗅いでいる方が心が満たされる。
現在、コロナウイルスに関する規制は2年前と比べて緩和されているが、やはり感染が終息する気配はない。マスクを手放せない日々はまだまだ続いているのだ。しかし、独りでいるときくらいは壁を取り払って、直に身の回りを感じてみてほしい。世界の本当の姿を忘れないように。

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