ねえ、雨の匂いがするよ

ペルソナは「罪」と訳すのだと
赤いスカートを広げた少女
足元に綱などないはずなのに
世界はたやすくひっくり返る
散らかして遊ぶのが好きでしょう
三日月型の笑顔に隠して
歌われる言葉は誰へ向けるの


雨と夜にずぶ濡れている
だからワルツなど踊れないし
手紙の宛先も忘れてしまう
ほんとうは声がききたかった
罪悪感を抉りだされた後
心臓が収まっていたはずの場所には
何が咲いているんだと思う?


最初の呼吸。
いつから声を失ったの、君。
たらりら、らん。
踊り方は教えてくれたっけ。
指切りげんまんで重ねた指に、
くるくるとリボンを巻いたなら、
ずっと笑っていてくれるのかい。


夏をとじてしまおうとするのは
さみしいからだと言った
吸いこんだ花火の匂い
遠くで誰かが泣いている
宝物を流してしまったのだって
にぎやかで瞬きが追いつかないから
絆創膏を貼らないと


月が割れて こぼれて 落ちた
そのひかりをすくうのは
心細い指先 の 。
長い夜を泳ぐために
片目を潰して
平気だなんて歌った
ねえ、雨の匂いがするよ


ここまでお読みくださり、ありがとうございました