七曜日の唄


月曜日の雨やどり
君が忘れたままのビニール傘に
ちいさく爪でつけた跡
ため息の生まれる速度で
淡い水色に踊っている
もう少しだけ大人になったら
新しい時計を買いに行こう


火曜日のひとりごと
いつも通りの散歩道で
昨日は気がつかなかった花を見る
やわらかくしなやかなはなびらに
こそり、託した伝言
天気予報を聞き忘れていたから
今日もまた雨に降られる


水曜日の迷子
読み方がわからない絵本が
宝物の場所をうそぶく
黒猫はつまらなそうにあくびして
途方なく座る足元をすり抜けた
虹のふもとに行くためには
指切りをやり直さねばならない


木曜日の秘密
いつもよりずいぶんと眠くて
あと少しで溶けてしまいそうだ
きっと大切なものを失くしている
見回しても謎は解けないけれど
手かがりくらいは見つけたい
今夜もきっとあの場所で


金曜日の嘘つき
体内で魚が跳びはねているらしく
しゃっくりが止まらない
いつまでも眠れないでいて
目が赤くなっていくばかりだ
それでいて気がつけば尾ひれがゆらり
ああ、みんな夢だったよ


土曜日の流星群
まばたきも追いつかないほどに
踊り続ける少女のかかと
真白のワンピースのふわり
ぱちぱちと楽しそうにはじける
砂糖菓子をばらまきながら
願いごとを数えていた


日曜日の夢うつつ
ビニール傘は星座図に似て
花占いでは答えが決まらない
黒猫がふわんと尾を振れば
甘く砂糖菓子が香る
雨音の下でワンピースが翻って
いつしか時計の針は止まっていた


ここまでお読みくださり、ありがとうございました