「今、向こうで林檎が落ちたよ」


子守唄が聞きたい
世界から仲間はずれにされたような
孤独な瞳をして呟いた
右手に握ったナイフと
左足に引きずった鎖
悪い夢のその先に眠ったら
どこにたどりつくのだろうか


透明に整った水面に
はらりと浮かべたのは
君が好んでいたはずの花
いつまでも波紋が消えなくて
やるせなく笑ってしまう
だから、ずるいの、と言ったのだ
ひとつ、約束を諦めれば、花は沈むよ


少女が失ったものに嘆く
それと同じ温度で
少年は手にしたものに笑う
どうして星が降らないのかと
旅の詩人は羽根ペンを振るう
「今、向こうで林檎が落ちたよ」
誰が為に彼は歌うのか


ここまでお読みくださり、ありがとうございました