新人教育初日に必ず言うこと
こんばんは。
1日に3回も投稿するなんて…私、
暇ですか?
暇かもしれません。
台風で色々予定潰れましたし。
さて、今回はお堅いソフトウェア品質の話から離れて、かれこれ新人教育歴7年目の私が、5年間使ってきたカンペ全文をここに残しておきたいと思います。うん、すごく浅い。そして年数も中途半端。
いいんです。
嘘はつきたくないし、たぶん来年は使いそうにないので。
では、ここからは見出し以外、そのまま新人の前で話している内容そのものです。
-第一章- 「謎」で意識を引く
これからいくつか質問します。
いいですか?
質問内容は、1つ1つは他愛もない、何の関連もなさそうなものですけど、話が進むにつれてそれらは最後に1つの本質に帰結します。どれ1つとっても重要なことなので、あまり軽く考えないでくださいね。
ちなみに、ボクは一般的な教育やセミナーのように一方的に知識や技術を教えて終わり、と言う進め方はしません。かと言って、「アレをやれ!」「コレをやれ!」「じゃないとうちの会社ではやっていけないぞ!」と言った押し付ける教育もしません。
じゃ、最初の質問です。
ではボクはこれから、どんなコンセプトで教育を進めようと考えている…と思います?
(3人くらいに聞いてみる)
はい、じゃあ答えを言う前に、もう1つ質問です。
国内数百万~数千万といるビジネスマンのうち、1度も失敗せずに仕事を進められる人が、過去にいたと思う人ー?
(挙手の数を確認する)
まぁそうですね、もし1度も失敗しないで一生を終えられると思ってる人がいたら、ちょっと病院行ってきた方がいいですね。
ちなみに統計学上では、世の中の偉人と呼ばれる人たち、あるいは成功者と呼ばれる人たち、仮に世の中で名を残していない人たちであっても優れた人たちの大半に当てはまる条件は
『誰よりも失敗を積み重ねてきた』
ってことなんですねー。嘘だと思うなら、後でググってみるといいですよ。そうですねー…有名な格言に
成功者は、誰よりもたくさん失敗をしている
と言うものがあります。
成功者と失敗者の違いは、成功するまで様々な失敗を繰り返し、同じ失敗を繰り返さないためにはどうすればよいかを考え、チャレンジし続けられるかどうかにあります。
また、成功者になる権利を与えられるかどうかは、失敗を恐れて動きだそうとしないか、成功したいために、成功するまで動き続ける気があるか、どうかにかかっています。
-第二章- 「なるほど」を引き出す
とまぁ、ここまでの理屈はわかりますよね?
宝くじの原理と同じです。
買わなければ当たる権利すら得られない。
でも買っても必ず当たるとは限らない。
だから、当たるまで買い続ける者だけが、アタリをつかむことができる。
至極当たり前のことです。
当たるかどうかわからないから、勿体無いので買わない…と言う人は、一生当たりません。それでも宝くじと仕事では決定的に異なる点が1つだけあるんですねー。
ここから次のテーマです。
先ほど、宝くじと仕事では似ているけども、決定的に異なる点が1つあるとも言いました。それは「失敗」、宝くじで言うと「ハズレ」の本質と意味です。
て言うか、宝くじって完全にギャンブルですよね。
ハズレるということに対して、努力の入り込む余地がない。買う側にとっては完全に運に頼らなければならないのだから当然です。
しかし、仕事における失敗はどうでしょう?
失敗って運で起きるものでしたっけ?
バイトでも、部活でも、恋愛でも、ゲームでも構いません。
過去、何かしら失敗したことがある人は、身近にイメージしてみてください。
そこには運が必ず介在してましたか?
運が左右したこともあったかもしれないけど、そのすべてが運によって左右されていましたか?
念のために言っておくと、運と言うのは外的要因によって、自分自身の努力ではどうしようもなく状況を左右するものを言います。
たとえば、サッカーでシュートしてみたら運悪く、ボールがゴールバーにあたって決まらなかった…と言うのは実際には「運」じゃないです。それは、そう言う力量しかなかったから、そこにシュートを放ったからこそそうなっただけで自分以外の要因でそうなったわけではありません。突風が吹いた…と言うのであればそれは運なのかもしれませんが。
その点を踏まえてイメージしてみてください。
(30秒ほど待って3人くらい指名して聞いてみる)
まぁたいていの場合、運ってそんなに関与することないですよね。仮に自分以外に要因があったとしても、それって大概の場合が他の人の意志が働いた結果ですよね。
つまり、何が言いたいかと言うと、ギャンブルの「ハズレ」と仕事の「失敗」には、『人の意志』というものが深く関与していて、少なくとも後者はその意志さえコントロールできれば、発生させないこともできる…と言うことにあります。
もっとわかりやすく言うと、「ハズレ」はどんなに努力しても「必ずアタリを手に入れる」ことはできないけども、「失敗」と言うのは、その失敗した経験から、失敗しないやり方を理解してしまえば運に左右されない限り、「必ず成功する」ことも可能になりうる、と言うことです。
そもそも、「失敗は成功のもと」と言う言葉は、励ますためのものでも、放っておけば勝手に成功に導かれるものでもありません。そのため、この「失敗は成功のもと」と言うのは必ずしも正しいわけではないんです。
なぜ、そうじゃないか?
失敗から、何も学ぼうとしなければ、いくら"もと"…つまり漢字で書くと"素"、素材の"素"!だけでは意味がないからです。料理と同じですね。素材のまま食べないでしょ?加工・調理しますよね?
成功の素にするためには、加工・調理が必要なんです。
「加工・調理」しなくたって素材であることには変わりねーじゃん、って思いました?そんな性格悪そうなこと考えた人いますか?
それはねー、ある意味では正解なんだけど、一方通行なんですねー。
たしかに調理しなくても、素材であることにはかわりないけど、それは調理することが前提の場合だけですねー。
仮にジャガイモやニンジンで考えてみましょう。
最終的に出荷されて、スーパーで売られ、調理されて、食卓に並ぶそれらは確かに"食材"と言います。しかし、形が悪いだけ、小さいだけで味も品質も変わらないそれらは"肥料"にもなったりします。
どうです?
失敗が必ずしも成功の「もと」であるかどうかは、最終的にその失敗をどうするか次第で変わってくると思いませんか??
失敗は必ず成功のもとにできる方法があります。しかし、本人にその気が無ければ、ただの時間の無駄遣いと何も変わりません。結果、また同じ失敗を繰り返すのでは、まったく「成功のもと」になっていないと言うことになります。
では、最初の質問の回答に戻りましょう。
1つ目の質問覚えてる人―?
(挙手確認してみる)
まぁ覚えてたからナニってわけでもないですけどね。
でもだから言ったじゃないですか。それぞれの質問はつながってるよって。
はい、1つ目の質問は何でしたっけ?
(挙手した人に適当に聞いてみる)
そうですねー。
ボクの教育のコンセプトは「どんな方針で教育を進めようと考えているか?」でしたねー。つまり、押し付けるのでもなく、ただ知識を植えつけるのでもなく
『失敗すると、どんな痛い目に遭うか?』と
『失敗しないためには、どんな知識や技術を身につけておくとよいか?』
と言う2点を重点的に行うことです。これが答えです。
-第三章- 研修に対する期待と認識を改める
大手企業でも中小企業でも大抵同じですが、だいたい新人研修は一般的に2ヶ月、多くて3ヶ月です。中小企業では、新人研修自体、実施しない会社も少なくありません。なにせそこまで余剰のお金がないので。
うちの場合も基本は2ヶ月で、不足していると判断した場合は、講師の裁量で最長3ヶ月まで延伸できます。
ですが、そもそも新人教育とは言え、2ヶ月や3ヶ月で一人前の社会人が作れるわけじゃないんです。そんな夢みたいな企業があったらボクも見てみたい。
一応、自分、最初は大手ベンダーに入社し、30歳で100人未満の企業を経験してみて、そのあと10人未満のほぼベンチャー企業も経験して、最後に今の会社に来ました。
その間、それぞれの会社で新人の面倒も見てきたし、システム導入にあわせて顧客の社員を教育することもあったし、色んな規模の企業見てきたけど、どこでも1~3年生くらいってものすごく力量や成長の差が激しい。
そのうち、数人は鬱かどうかはともかく、ものすごく凹んでる様を見ます。
土気色した顔の子とか見ました。ゲームで1~2日徹夜したってもっさりツヤツヤしてたような奴らが、半日で土気色です。
大きな失敗をしたんでしょうね。
あるいは上司に怒られたんでしょうか。
あ、ちなみにボクも入社3年目…だから25歳?の頃に、当時の課長に心配されるくらい青ざめてたらしく、自殺でもするんじゃないかって周囲から言われるくらいの失敗したことあります。
まぁ自分の場合は小さな失敗を数多くやりすぎて当時のリーダに大目玉くらっただけなんですけど。自分ではそんなに顔色に出てたとは気づいてませんでした。実際、そんな自殺したくなるほど凹んだことないですし。しても誰も得しないし。アレは一週…や、二週間はかかったかなー。
先に言ったように、成功者ってのは数多くの失敗を積み重ねてたどり着きます。もう少し具体的に言いましょうか。
たとえば、「目玉焼きを作る」と言う課題があったとしましょう。
この場で料理できる人にとっては、最高の味かどうかわかりませんけど、そうそう失敗する要素が見当たりませんよね。でも世の中には失敗する人がいます。サニーサイドアップかターンオーバーかなんて関係なく失敗はするもんです。
じゃあ…仮にですよ?
ありとあらゆる可能性を考えた時に、目玉焼きの失敗する要因をすべて洗い出したら、100通りの失敗ケースと3通りの成功ケースが抽出できたと仮定しましょう。もうこの103通り以外に他のルートがないんです。(ここではあくまで仮説ですが、これが真実だったとします。)
じゃあ、その仮説下において、次の3人の成功者がいたとして、絶対に失敗しない…常に成功しかしない成功者はどれでしょうか?(ホワイトボードに書きだす)
①最初の1回目で成功した人
②複数回の失敗を経て、n回目で成功した人
③100通りの失敗を経験して、101回目に成功した人
はい、どれでしょう?
(①②③それぞれ挙手確認してみる)
そうですねー、③ですねー。
①や②はたまたまそのルートを選んだから成功しただけで、同じ成功ルートを選べる状況下では常に成功するのかもしれませんが、その選択肢が閉ざされた時点で、成功する確度は格段に低下しますねー。
とは言え、そもそも考えてみましょう。
じゃあ、できるだけたくさんの失敗を経験したい人ー?
(挙手確認する)
まぁ、そうですね。
誰も失敗なんてしたくないですよね。カッコイイ、カッコワルイとか以前に怒られたくないし、無様なところ見られたくないし。
実際、「失敗」ってのはレベルにもよりますが、上司に怒られるかもしれないし、顧客に土下座させられるかもしれないし、評価に関わればボーナス下がるかもしれないし、なけなしのプライドが傷つくかもしれないわけです。
でもねー…するんですよ、失敗。
人間が「完全」で「完璧」だったら失敗なんてしないのかもしれませんけど、基本的には絶対するんです。これは大前提で、不可避です。
しかし、失敗ってのはする/しないではなく、失敗した時の被害の大きさとその後の対応が問題です。誤字・脱字程度のミスと、被害総額1億円のトラブル、どっちも失敗ですけど…全然違いますよね?
みんなが経験したくないのは100%後者の方でしょう。デスヨネ?
後で詳しく説明…したりしなかったりするかもしれないので、ここであらかじめ教えておくと、失敗の大小ってのは時系列の連続性があります。…ので、よく虫歯や病気にたとえられます。
虫歯でもいいし、ガンでもいいでしょう。
そう言った病気って初期に治療すればお金もそんなかからないし、なにより成功確率が高いし、治療に要する時間もそれほどじゃないですよね。じゃあ、それを放置して2年経ったらどうでしょう?
虫歯なら、歯を抜かなきゃいけなくなってるかもしれないし、ガンならもう手遅れになってるかもしれませんね。
『失敗』ってのはこれと同じなんです。
できるだけ些細な失敗のうちに、できるだけ多くの失敗経験を積み、その些細な失敗をそもそも再発させないようにする。もちろん、失敗の予測がたてば、予防することだって可能です。
この点も虫歯や他の病気と同じですねー。
他人の失敗を見て学ぶと言うのはこれに似ているのかもしれません。
ITの世界に具体的にどれだけの失敗ルートが隠れているのかわかりませんけど、仮にそのすべてを経験し、二度と同じ道を選択しないようにすれば、後は成功ルートしかないわけです。どんなに失敗したくても、もうすべての失敗ルートはふさがってしまっているわけですから、絶対成功するしかなくなってしまうわけです。
失敗したいのに、失敗できない!
いや、したくないですけどね。
それくらいのものになるということです。
とは言えーー。
1人では一生かけてもすべての失敗ルートを経験することはできません。
そこで登場するのが、こうした教育であったり、他人の実績やノウハウを吸収する、と言うことにあります。世の中にでている書籍やセミナーなんかも、いつかのどこかのだれかの成功事例や失敗事例から培ったものですからね(そして一番胡散臭いのは、現実や現場に基づいていない、理屈や理論だけで実績のない根拠)。
つまり、これから行われる教育は、この業界でちゃんと仕事できるようになるための…と言う体裁になっていますが、ぶっちゃけこの短期間で教えられるのは、具体的なノウハウ…も当然教えますが、それより重要視しているのは、この先何十年とビジネスマンなり社会人であり続けるために、失敗も成功も全て血肉に変えて、さらにより大きな成功をつかむためにはどんなことを意識して学んでいかなければならないのか?と言う、一種の概念的なベストプラクティスを提供する場だと思ってください。
まぁ、今となっては入社する新人も多くなってきて、ボクが担当するのは、最初の2日しか講義できないんですけどね。
その後は拠点や部門ごとの技術要素に分かれての教育になります。
ホントは一ヶ所でまとめてやれれば、皆さんの精神的負担を考えてもそれが一番なんでしょうけど、ビジネス的な観点から言うと、配属後の雰囲気に対する慣れや先輩との距離感などをできるだけリアルに感じられて、すぐに馴染めるようにもなるので、先々を考えれば教育自体を分けて行うというのも、一応理に適っているわけです。一長一短ですかね。
さぁ!では始めましょうか!!
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