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自然農の新しい試み

今日もまた何時もと変わらぬ朝がやって来る。

これから月末までは少々お籠り期間である、
何せ雨が多いしお金の浪費は極力避けたい。

朝からご飯の催促の激しい猫。

昨晩は大家のミセススフィアのもとへは行かなかったようで、
ベッドに眠る僕の足元へ丸まっていた。

「にゃおおん!」

「はいはい。」

古びた箪笥の上へ飛び乗ると、定位置に着いて行儀よく食べ始める。

猫のメメはこの箪笥の上を殊気に入っていた。

明らかに雨上がりの碧空。

ウッドデッキは水分を含み暗く沈んで見える。

朝露に煌めく葉、遠くから響いて来る教会の鐘の音。

上方へ視線を移すと、丘の上を伸びる道にサイクリストの姿が見える。

早朝の薄靄の中を、風を切って走るのはきっと心地良いだろうと、
僕は少々羨ましくなる。

常日頃から思う、僕はロードバイクが欲しい。

出来れば軽くて電動アシスト付きのやつ。

車より小回りが利いて、より一層風を感じる事が出来る。

それにメンテナンス費用も安い。

先刻より僕はしばしばお金の事を考えている。

平生は少しも気にしないが、
税金を納めに行く折など不図気に掛かってしまう。

今は生きる為に不自由しない程度には保持しているが
(実は生活の為に多少の仕事を請け負っているのだ)、
何かの拍子に仕事が無くなる、或いは出来なくなれば、
どの様に暮らして行けるのだろうか。

ただ生きているだけでも差し引かれる税金。

『国』と言う枠組みから外れて住む家を持たず、
山から山へと
食べられるものを収集して生きて行くだけの知恵と勇気があれば、
きっと何の不安も無いのだろうと、
僕はしみじみ考えた。

しかし、それは余り現実離れしているように思われる。

それより、己にしか出来ない何か特異のものを見つけ磨き上げ、
それを売って歩く方が遥かに体に良いだろう。

などと取り留めも無く考えに耽っていると、
タイミング良く扉が開く。

「お早う!まーた籠って、たまには何処か行って来たら?」

大家のミセススフィアは今日も、問答無用で僕の寝室へ押し入る。

「不法侵入ですよ。」

「なーに言ってんの、ここは私の山小屋だよ!」

そう言って豪快に笑うと、棚と言う棚の埃を落としにかかる。

「僕、もっと真面目に畑をやって、収穫したものを売りに歩こうかな。」

「そりゃあ良い!町へ下りたら幾らでも買い手が居るだろうから。」

彼女の言葉に少し励まされる。

何か新しい事を始める時の他人の後押しほど、心強いものは無い。

「それにはもう少し土地が要るかあ・・・。」

「ほーれメメ、綺麗になったよ!
全くあんたのご主人は掃除無精で困ったもんだねえ。」

彼女は最早聞いていない。

僕の新しい試みはまだまだ時間が掛かりそうだ。

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