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たった一度の人生・・・太く、短く、しっかり見つめて。 エッセイ、日記、小説。創作。 魂…

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たった一度の人生・・・太く、短く、しっかり見つめて。 エッセイ、日記、小説。創作。 魂を燃やして。

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  • 【小説】自然と農

    森の中に暮らす家庭菜園初心者の主人公が、雄大な自然と、時々愉快な仲間たちと送る、ちょっぴりお洒落で心温まる日々の記録。

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自然になる

風に揺れる草花。 甘い香りのジャスミンと、 陽光に揺らぐ影。 ガラス越しに臨むいつもの風景。 グラスに注がれた麦茶の水面が揺らいで、 全てのものは動揺しているのだと、 再認識する。 終始一定のものなど無い。 全て心地良く揺れている、 みな大海の上。 波に揺られているだけ、 決められるのは方向性のみ。 波を搔き分け全力で泳げば、 疲れるのは必至。 肩の力を抜いてプカプカ漂えたら、 どれだけ楽な事か。 物事は思い通りに進まない。 その流れを変えようと必死になっ

    • PIZZA屋の夢☆

      みんなが友達の町に住んだらきっと、 働くのが楽しいしとても快適なんだろうと思う。 そう言う町を自ら作ろう、 全ては自身の出方次第。 そう言う町が出来上がったら僕はまず、 ピザ屋になろうと思う。 否、ピッツァ屋だ。 その為の修行は今から怠らず、 トマトの酵母を作ったら、 酵母の育つ毎ピッツァを焼こう。 チーズとペパロニも忘れずに。 小さな庭ではナスやオニオンを育てよう。 真夏に赤く熟れたトマトソースと、 アメジストのようなナスに、 クリームのようにトロトロのチーズを垂らしたら、

      • 嫌いな場所【切実】

        動物は未来を憂えたりするのだろうか。 夜の国道は月に照らされ、 ぼんやりと靄の掛かったよう。 蠢く何かしらの存在、こちらから見えない。 けれど、確実にそこへ存在する。 私は見られている、重く沈む闇を通して。 どうして、不安を駆り立てられるのだろう。 行けば必ず、精神の不安定になる時空間がある。 まるで悪夢を見ているかのように。 世界が歪んでいる。 鎮静剤を飲み過ぎた翌朝のよう。 ぬめりを帯びる暗闇掻き分けて、 どうにか踊り出ても、 心臓に絡みついた黒いもの

        • 良い兆し

          太陽が山の奥へ沈み始めると、 急に風が強まって、 幾分暑さが和らぐ。 風の吹き荒ぶバックガーデンで、 懸命に足を踏みしめて、 荒れ放題のスイカ畑とサツマイモ畑を手入れする。 ここ数日の降雨で草勢凄まじく、 鎌を振る僕の右腕を砕いた。 しかし、 スイカ畑に時折顔を覗かせる小さなスイカの実が、 僕の心を勇気づけた。 風はいよいよ強く丘を吹き下ろすが、 しかし、 涼しいのは何よりである。 平生よりブンブンと周囲を飛び回る蚊も、 今日は少なくて良い。 然も、 今日は特別心

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        自然になる

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        • 【小説】自然と農
          35本

        記事

          帰りたくても帰れない

          深い眠りから醒めない。 まだ夜は明けない。 明日は来ない。 一人静かにユーカリの香る中で、 知らない人の未来を夢見る。 オレンジに煌めく街燈の、 その光の揺らぎが、 夜の深まりを教える。 早々に帰らなければ、 この町に独り取り残されてしまう。 けれど、 まだ帰りたくない。 する事も無いのに何も無い今を、 如何にか引き延ばそうとしている。 遠く灰色に霞む山々の端に、 家々の明かりが瞬く。 山小屋にまだ明かりは灯らず、 黒く濁った風景の片隅にぼんやりと描かれる、

          帰りたくても帰れない

          生命の網

          最近はまた、 ガラガラ声の母猫が山小屋を周回するようになった。 夜も深まり人々の寝床へ潜り込む時刻、 猫のメメが足元で丸くなると、 何処からともなく「ギャアギャア」鳴く声が聞こえて来る。 最初は狐かと思った。 狐はギャアギャア鳴く、 その声にそっくりで。 けれど、 ある晩不図ウッドデッキへ通じる道を眺めていると、 月明りの下に現れたのは、 茶色の大きな猫。 良く見ると、 その後ろへ小さな子猫を従えている。 二匹は臆する事無くウッドデッキへ上がり込むと、 テーブルの

          混沌たる日々

          ぬか漬けは、我が家のサラダのようなもの。 発酵している分、生野菜より栄養価が高い、そして、ご飯に良く合う。 まだ漬かり切らないナスを齧りながら、僕は不図昨日の事を想起する。 美しい金髪にあどけなさの残る笑顔。 食や農と言った事へ大いに関心がある様子で、 僕の話を真摯な面持ちで傾聴してくれた。 町の雑貨屋で店員として働き、 忙しいけれど楽しい日々だと、 笑顔で語った。 その彼を仮にアーロンとしよう。 アーロンのアパートメントは町の外れに位置している。 美しい高級

          混沌たる日々

          新しいステージ

          「こんにちは、いらっしゃいませ。」 雨のしとしと降り続ける町の一角、 低層の雑居ビル一階の軒下で、 僕は大量に届けられた荷物の運搬を手伝っていた。 中身は殆ど全て花。 生花もあれば高価なプリザーブドフラワー、 ドライフラワーも混じっている。 友人のフロリストは、 この町の目抜き通りに面したビルへ構えられていた。 くすんだ朱色のレンガ造り。 三階建てで、 一階部分が店舗、 二階は倉庫で三階が居室になっている。 何時建てられたものか分からないが、 低い天井の店内は、

          新しいステージ

          明日への模索

          良い仕事は幾らでもある、重要なのは誰と働くかだ。 働きやすい環境は良好な人間関係の上に成り立つ。 良い人々に囲まれると、仕事の負担も幾らか軽減される。 仕事と言うものは何時でも厄介なものだ。 余り暑いので、時間を区切って小出しに外仕事をする事にした。 僕の畑は少しずつ秋めいている。 夏野菜の勢いは衰え始め、 そろそろ、 秋以降に採れる野菜苗の植え付け時期に差し掛かっている。 ブロッコリー、白菜、キャベツ、ジャガイモ、 大根、カブ、ほうれん草、スナップエンドウ・・

          明日への模索

          自然の境地【入口】

          今日は畑仕事をすべきだった。 明日から暫く雨模様の予報。 きゅうりと葉物の跡地は草刈りが追い付いていない。 綺麗に整地して秋採りきゅうりとブロッコリーを植える予定だった。 しかし、それに体が付いていかない日もある。 午前中までは良かった。 しっかり朝食を食べ、町の図書館へぶらりと立ち寄る。 面白いものは無いかと物色していると、久方ぶりに友人を見た。 フラワーアーティストをしている彼女である。 暫く会っていなかったが、彼女は随分と活き活きしていた。 僕の手に

          自然の境地【入口】

          変わりゆくものと変わらないもの

          僕の怠惰がまた暴れ出している。 山小屋を何気なく前方より眺めると、 その草勢の激しさに驚く。 何処もかしこも草だらけ。 まるで緑にペイントしたよう。 最早この見た目で貫こうかと心の折れかけるが、 流石に大家が黙っていないので、 泣く泣く草刈りを開始する。 無論、電動草払機は使えない。 非常に狭いエリアである上に、 ゴツゴツとした岩が覗いているのだ。 バックガーデンが広々としているのとは真逆である。 垂直面へへばり付くように生える草も刈るとなると、 矢張り手鎌で

          変わりゆくものと変わらないもの

          山小屋の岐路

          闇に沈み始める畑。 夜の帳の下りる頃。 秋の虫が鳴き、暑さは緩む。 悪くなる視界に、葉なのかピーマンなのか。 判別の付かなくなると、今日の畑仕事は終わりを迎える。 今年のピーマンは何故か実が小さい、その葉と見誤ってしまうほど。 そう言う種類なのか、気候の影響なのか。 そう言えば、トマトの実も幾分小さい。 ミニトマトに至っては殆どならない上に、 結実してもサクランボの種程度の大きさ。 仕方なく買いに出た食料品店で、 ミニトマトは高価に設定されている。 矢張り

          山小屋の岐路

          山小屋の本音

          華やかなカップ&ソーサ―で華やかなティーパーティーがしたい。 彩に華やかなカップケーキを添えて。 美しいものを集めた場所には良い気が流れる、 僕の中の不浄を洗い流してくれるような。 今年は庭にブルーベリーを植えたが、それが思いの外実を付けた。 多少冷凍し保存しておいたが、その使い道を丁度今見出した。 町の家具屋から届いた一枚の葉書。 優雅なアフタヌーンティーのテーブル。 しかし、僕の家に高貴な皿など無い。 せいぜいウッディな愛らしい雰囲気のもので、質素な山小屋

          山小屋の本音

          父のクラッシックギター

          緊張の面持ちで相対するのは、 この町唯一のクラッシックギター講師、 ミスターレインの流麗なアルペジオだった。 絵付師ベインズの陶芸窯での事で、 僕は小屋から運んで来たクラッシックギターを汗ばむ両手で握り締めた。 「まあ、このように練習して行くと何れ出来るようになります。」 ミスターレインは上機嫌で頷くが、 僕はそれ以前から既に拍手を始めていた。 「素晴らしい!」 数日前、僕はつと思い立ち、 ずっと以前父から譲り受けたクラッシックギターを、 押し入れの隅より引っ張り出

          父のクラッシックギター

          特別じゃない日

          お籠り生活一日目。 猫の声に起こされる。 相変わらず優秀な目覚まし時計だ。 今日も朝から霧雨が降る。 空は明るいので気が変になりそう。 狐の嫁入りどころの話じゃない。 キッチンへ立つと、朝食用のパンが底をついていると気づく。 平生は町へ買いに下りるのだが、 今日は不図思い立って手捏ねで山型パンを作ってみる。 本当はホームベーカリーなどあれば便利だが、 捏ねている時のパン生地の柔らかい感触が堪らないので、 自ら購入しようとは思わない。 誰かが買ってくれると言う

          特別じゃない日

          自然農の新しい試み

          今日もまた何時もと変わらぬ朝がやって来る。 これから月末までは少々お籠り期間である、 何せ雨が多いしお金の浪費は極力避けたい。 朝からご飯の催促の激しい猫。 昨晩は大家のミセススフィアのもとへは行かなかったようで、 ベッドに眠る僕の足元へ丸まっていた。 「にゃおおん!」 「はいはい。」 古びた箪笥の上へ飛び乗ると、定位置に着いて行儀よく食べ始める。 猫のメメはこの箪笥の上を殊気に入っていた。 明らかに雨上がりの碧空。 ウッドデッキは水分を含み暗く沈んで見える

          自然農の新しい試み