ルーヴル美術館展 ジャン=オノレ・フラゴナール《かんぬき》からの妄想
ルーヴル美術館展 愛を描く。初日に観覧してきた。すばらしい絵ばかりだったが、感想(妄想)を書きやすい《かんぬき》をご紹介。
以下、公式サイトの紹介文を転載。
かんぬき、壺、薔薇、乱れたベッド、リンゴなどに暗喩がほどこされているらしいが、それはひとまず横に置いて。
まず何の予備知識もなくこの絵を見た場合、ある違和感をおぼえるのは私だけだろうか。女性の髪も服もそれほど乱れていないのに、男性は殆ど下着姿でしかも素足。あまりに簡素なものだから、最初はこの男の身分を疑った。平民のアンドレですら、オスカルの前でこんなだらしない格好をしなかったぞ。
さらに、彼の上着や靴が近くに見あたらない。手前の黒い布がそれかとも思ったが、それでも辻褄が合わないのだ。かんぬきをかける→服を脱ぐ→抱擁…ならともかく、どうすると、こういうシチュエーションになるのだろう。
ここから妄想。
男性は、ある上流家庭の若い後妻と愛人関係にあった。ある日ふたりが愛の睦言を始めようとした瞬間、後妻の夫が帰宅。慌てて部屋から男を追い立てる後妻(服と靴は後妻により、ベッドの下に隠された)。
下着姿で屋敷内をうろうろしているところ、この家の娘(先妻の子)と遭遇。騒がれてはまずいと近くの部屋に彼女を連れ込み…。
ヨーロッパでは珍しくもない艶笑譚になった。日本でもあったような…と記憶をたどったところ『源氏物語』の光源氏・空蝉・軒端の荻の関係性そのものだと気づく。私の妄想力はこの程度。
そう、つまりこの絵は、空蝉を逃した光源氏が、軒端の荻を抱きしめている図なのだ。そう考えるとこの服装も得心がいく。
女性の顔に浮かんだ嫌悪と期待と諦観も、なんとなく腑に落ちる。多分、この女性は男を憎からず想っていたような気がする。
絵画は、モチーフなどを勉強して解読するのも楽しいが、自分の妄想力で補完するのも面白いものだ。
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