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仕事でプライベートを晒す加減

うちに帰ったら仕事の話はしない。休みの日は仕事の電話に出ない。プライベートの過ごし方は人それぞれ勝手だ。

それでは【プライベートに仕事を持ち込まない】人の、
【仕事にプライベートを持ち込む】についてはどうか。

プランナーの結婚式?

ウェディング相談に来た方が帰り際にこう言った。「プランナーさんは結婚してるんですか?結婚式はどんな感じにしたんですか?」

はて?この質問の意図は??
私は歩きながら正直に答えた。「式場に勤めていましたので殆ど全部おまかせしました。もう凄い昔のことなのでご参考にはならないかと…(笑)」今と昔の結婚式の違いを説明しなければ、この人はプランナーなのに自分の結婚式に何の熱量もないのかと思うであろう。

実際は、今のように細かくこだわりはしないものの勤務先式場の許容範囲内で多少は希望を伝えて実行した。今となっては何の参考にもならないと思うがちょっと面白いので詳細は次の機会にぜひ書こうと思う。

ところで私は結婚して10年位たってからプランナーになったのだが、キラキラ非日常の夢を売るプランナーが所帯じみていたら台無しなのではないかと思い、プライベート感を消していた。

式場やレストランも日常感の徹底的な排除というのが通例だった。目につく所にゴミ箱も時計も電話も置かない。

なので本当は子どもが二人いて早く帰って夕ご飯を食べさせないとなんだけど、口にも態度にも指先にも一切出さなかった。

会場見学相談に来てプランナーの素性とか聞きたいか?私はその質問の答えを準備していなかった。非日常の答えを用意したほうが良いのだろうか。。

そこで卒花さん達に聞いてみることにした。「私はそんなこんなで結婚指輪もしていませんが、プランナーが主婦してるとか子どもがいるとか聞いたらどう思いますか?興ざめですか?」

答えは総じて「むしろ指輪しててほしい」だった。結婚してるならしてるでいいし、子どもがいるならいるで話のネタにしてもよいとのことだった。

ちなみにウェディング業界で働く人でも未婚を貫く人やシングルマザーも多い。実際に経験してみるのは良いことだが、仕事の参考にしている人はいない。

持ち込むかどうかは別の話。

ちょっとした話のネタ程度ならいいが「仕事にプライベートを持ち込む」というのは、
◉この日は運動会で休みますので相談予約は承りません
◉子どもが熱を出したので打合せ日時の変更をお願いします
◉ママプランナーが授かり婚をサポートします
というようにいちいち述べるか否かということだ。

最近は家族ファーストが称えられる傾向から、敢えて言った方が親近感があって良いのではないかと無秩序に晒すうちに、その加減を間違える。

うがった見方をすれば、好感度アップを狙って「あえての晒しです」感が透けて見えることもある。

そのようなスタンスの個人経営のお店などは辟易だ。インスタの画像にでかでかと「四十九日法要のため休業」と書いてあった日には、いやそういわれたら「分かりました」と言う他ないが私には関係のない情報だ。臨時休業の4文字で事足りるのに何のために晒すのだ。商売の好感度のダシに使われている家族は果たして家族ファーストなのだろうか。

BtoB(スタッフ間)でもこの傾向がある。
私もできるだけ子育て応援はしたいので、アポの時点で「この日は子どもの誕生日だから5時には帰りたいんです」とこっそり言ってもらえたら動かせる予定は動かすし、スタッフミーティングなどは別に子ども連れてきてもいいよと言う。3時からでも5時からでもいい会議は犬の散歩時間が優先だ。犬って規則正しい生活代表だからね。

だけどNGだってある。準備万端整えていざ本番という時に「奥さんが仕事で子どもの面倒見なきゃいけない」とか言われても無理だし、留袖着付するのに孫をおぶってきた時には「違う、そうじゃない」と言わざるを得なかった。


晒すのではなく身に着ける。

30年前の結婚式場ではおじさんプランナー全盛期だった。お父様から「きみは結婚してるのか。結婚もしていないやつに務まるわけがない」などと若い未婚のプランナーは一蹴されたものだ。なんの資格も要らないプランナーを測るものさしは、仕事上の経験に加え人生経験も豊富な方がよいとの見方だ。これは主にノウハウではなくマインドの事を指すのだと思う。

誰でもいろんな経験を積めば人生のフェーズが上がり、それが顔や言葉や態度、その人が持つ雰囲気になる。新郎新婦の話に共感し「その気持ちわかります!」と言っても、本当のところ経験していないことは分からない。

実際に自分が新郎新婦になってみる。ドレスや打掛を着てみる。友達の結婚式に参列してみる。子どもを産んでみる。育てながら仕事をしてみる。離婚してみる。再婚してみる。新郎新婦の親として結婚式に出てみる。チャンスがあったらね。

その時どう思うか、なにを感じるか。ウェディングの仕事をするうえで必須ではないが、経験に勝るものはない。身につけたものがにじみ出るのは、晒すこととは違う。


今度、もし私がどんな結婚式をしたのか興味がある新婦さんが現れたらこう話そう。
「もう凄い昔のことなのでご参考にはならないかと思いますが、その時の気持ちなら憶えています。」

プランナーといってもただの人。プライベートに仕事を持ち込まないどころか、仕事の結婚式と自分の結婚式はまったく別物、チェックポイントが違うのである。





しらんけど。

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