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ラーメン-2 日本のラーメンがものすごい進化を遂げている件(前編)

私たちは日々、当たり前のようにラーメンを食べていますが、そのラーメンがここ20~30年で大きく進化していることを、どれだけの人が認識しているでしょうか。近年の日本のラーメンの何がどのように変わったのか、2回に分けて話してみたいと思います。

世界をとりこにしているラーメン

 近年のラーメンブームはついに海外にもおよび、ラーメンが外国人の好きな日本食の第一位になっているのですから驚きです。
 ラーメンのルーツは中華料理ですが、明治以降どんどん日本化して行き、今や中国人ですらラーメンを日本の料理と認識している状況なのです。
 
 ラーメンといえば以前は醤油か味噌が定番でした。それが昭和の末ころから九州系のとんこつラーメンがブームになり、平成になってからは濃厚スープのつけ麺が登場し、横浜発祥の家系ラーメン、そして二郎系ラーメンが全国的な市民権を得るなど、ラーメンの世界は昭和の時代とはまるで違う風景になりました。
 
 そもそも昔は、今のようなラーメン専門の店は少なかったでしょう。かつては町のそば屋や町中華などの、いわゆる食堂でラーメンを食べるのが普通だったはずです。それらは町におけるファミレス的存在として多くのメニューを取りそろえており、ラーメンはその中のひとつでした。
 
 当時、家族で外食することは特別なハレの行為でした。昭和世代の人が子供のころに食べたラーメンの味が忘れられないという話には、昭和への郷愁を感じます。私もそのひとりですが。
 
 その後ラーメン人気に拍車がかかり、専門店が増えていったのは平成になって以降のことだと思います。
 そして飽食の時代とも相まって、他店との競争と差別化を背景に、ラーメンがどんどん進化していったのでした。

ラーメンのスープがどれほどおいしくなったか

 ラーメンの進化で最も注目すべきは、そのベースとなるスープの部分です。
 スープの材料といえば、動物系では肉を切り出した残りの安価なガラが基本です。昔は扱いもよくないので、臭みは当たり前のようにあり、大量に長時間炊く九州の豚骨スープでは「臭い」というイメージがあったものです。
 私は東北なので以前の豚骨ラーメンは知りませんが、少なくとも今のチェーン店で臭いと思ったことはありません。これは食肉業や流通、そしてラーメン業界を取り巻く環境が大きく変わったおかげと思っています。
 昔のスープでは、野菜は料理に使わないくずの部分がほとんどで、乾物の魚介もそれほど量を使っていなかったはずです。
 
 このように今から30年以上前となる昭和のラーメンは、今より少ない材料でスープを取り、化学調味料でうま味を足していたのが実情でしょう。多くのメニューを出していた当時の食堂では、ラーメンにそれほど力を入れるものでもなかったのです。
 それでも確かに「おいしい」と感じていたし、みんな喜んで食べていました。それが昭和の一般であり、思い出の中のラーメンの風景なのです。

 より高みを目指している現代のラーメン

 ラーメンスープの進化の例として象徴的なのは、1996年(平成8年)に中野に開業した「青葉」の「Wスープ」でしょう。
 それまではひとつの寸胴にすべての材料を入れてスープを取るのが一般的でした。しかし素材によってだしを取る最適な温度や時間が異なるため、その調整が難しかったのですが、寸胴を分けることにより、より繊細かつ適格なだしの抽出が可能になり、青葉発祥のWスープはその後のラーメンに多大な影響を与えました。
 
 現在のラーメンは、スープのうまみを抽出する技術が発達しただけではなく、材料をたっぷり使い、高級な食材でも惜しみなく使うようになっているのも大きな特徴です。
 
 今のラーメン屋さんの大きな悩みは、昔よりはるかに原価がかかっていることだと思います。そこに材料の値上げラッシュも来ています。
 ラーメン業界には「千円の壁」という言葉があります。ラーメンが安く食べられる存在だったため、今でもデフォルトメニューで千円を超えるとなると、どうしても「高い」という印象を持ってしまいます。
 しかし、多くの材料と手間ひま、そしてその結果として、格段においしくなっている進化系ラーメンでは、値段の差別化があってしかるべきだと思うのです。
(後編に続く)

(#004 2023.07)


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